自然科学研究機構 国立天文台

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超新星ニュートリノが生み出す元素が隕石に残した痕跡

研究成果

超新星ニュートリノが生成する放射性元素で測る太陽系の時間(イメージ)
超新星ニュートリノが生成する放射性元素で測る太陽系の時間(イメージ)。ある種の超新星ニュートリノは、特定の放射性元素を選択的に生成することがわかった。この元素の痕跡を、太陽系ができたときの物質分布を保っている隕石のなかに見いだすことで、太陽系をつくる物質がいつ作られたかがわかると期待される。(クレジット:国立天文台) オリジナルサイズ(1.7MB)

大質量星が起こす超新星爆発では、ニュートリノが重要な役割を果たします。その役割のひとつが爆発時の元素合成ですが、6種類あるニュートリノのうち、反電子ニュートリノの寄与はこれまで明確ではありませんでした。今回、研究チームは理論モデルから、反電子ニュートリノがテクネチウム98を多く生成することを初めて導き出しました。この原子核は放射性元素で、隕石にテクネチウム98の痕跡を探すことで、太陽系形成に先立つ超新星爆発の年代測定が可能であると期待されます。

太陽の8倍以上の質量で生まれた恒星は、その生涯の最期に中心部が急激に収縮します。収縮した中心部からは大量のニュートリノが放出され、そのエネルギーを受け取って星の外層部が吹き飛ぶ超新星爆発を起こします。2002年に小柴昌俊さんがノーベル物理学賞を受賞したのは、この超新星ニュートリノを観測したことが大きな理由でした。

超新星ニュートリノの役割は他にもあります。中心部の近くで生じる急激な核反応に寄与し、他の過程では作りにくい原子核を生成するのです。6種類あるニュートリノのうち、5種類ではそのような原子核が特定されていましたが、反電子ニュートリノが関与する原子核は知られていませんでした。

量子科学技術研究開発機構の早川岳人さん、国立天文台の梶野敏貴さんらの研究チームは、超新星で起きる原子核反応をモデル計算し、テクネチウム98という原子核が反電子ニュートリノの寄与で多く生成されることを見いだしました。テクネチウム98は放射性元素で、420万年ほどの半減期でルテニウム98に崩壊します。太陽系ができたころの元素は、ある種の隕石に閉じ込められているので、このような隕石を調べてルテニウム98の量を測ると、太陽系が誕生するときに元素を供給した超新星が、太陽系形成よりもどれくらい前に爆発したかを知ることができます。今回の研究により、超新星爆発が太陽系形成の直前に起きた場合は、隕石に残されるルテニウム98の量は測定可能なほど多くなることも示されました。

早川さんは本研究成果に関して、「今回の結果で、超新星ニュートリノの正確なエネルギー分布を知る手がかりが得られました。ハイパーカミオカンデなどの将来のニュートリノ観測器によって超新星ニュートリノが測定されたら、超新星のさらなる解明に今回の研究が役立つでしょう」と語っています。

この結果は、9月4日に米国の物理学専門誌『フィジカル・レビュー・レターズ』のオンライン版に掲載されました。(Hayakawa at al. “Short-Lived Radioisotope 98Tc Synthesized by the Supernova Neutrino Process”

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