• 研究成果

地球とは異なる光環境における光合成:系外惑星における生命探査の指標となる波長の新たな予測

赤色矮星のまわりの生命居住惑星と可視光に照らされる地球(想像図)
赤色矮星のまわりの生命居住惑星(左想像図)の地表には近赤外線が降り注ぎ、可視光に照らされる地球(右想像図)とは大きく様子が異なる。しかし水の中には近赤外線が届かず、地球とよく似た環境が広がっていると考えられる。 画像(2.6MB)

地球のように生命を宿すことが可能な惑星(ハビタブル惑星)の探査の対象として、近年、赤色矮星(せきしょくわいせい、M型星)と呼ばれる太陽質量の半分以下の低温度星が注目されています。太陽に近い恒星の多くは赤色矮星であり、近い将来そのような惑星に生命が存在する兆候(バイオマーカー)を観測することが期待されています。

太陽系外惑星の有力なバイオマーカーとして、陸上の植生が作るレッドエッジと呼ばれる反射スペクトルがあります。しかし、レッドエッジの位置(波長約0.7マイクロメートル)は植生が光合成に利用する光の波長によって決まるため、これまでは恒星が照射する光の波長によって異なると考えられてきました。例えば、赤色矮星まわりの惑星では可視光よりも波長の長い近赤外線が卓越するため、レッドエッジも長波長側の近赤外線に移動すると予想されていました。

自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの滝澤謙二特任准教授、日下部展彦博士、基礎生物学研究所の皆川純教授、東京大学の成田憲保助教、田村元秀教授からなる共同研究チームは、赤色矮星まわりの生命居住可能惑星の光環境を想定した場合、レッドエッジが現れる波長はどこになるのかを光合成機構の観点から理論的に検討しました。その結果、赤色矮星まわりであっても水中で発生・進化して最初に上陸する光合成生物は、赤外線が水で吸収されるため地球と同じように光合成に可視光を利用し、その結果、従来の予想とは異なり、地球の植生と同じ位置にレッドエッジが現れる可能性が高いことを初めて提唱しました。本研究は、将来の系外惑星における生命探査観測において鍵となるバイオマーカーと波長を示す重要な指針を与えるものと考えられます。

本研究の成果は、2017年8月8日に英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

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