- 研究成果
小惑星カリクローを取り巻くさざ波の環 ― 実スケールシミュレーションが初めて描き出す小惑星の環の姿 ―
京都女子大学(論文発表時は筑波大学)の道越秀吾氏、国立天文台の小久保英一郎氏が、スーパーコンピュータ「アテルイ注」を用いて、遠い小惑星カリクローの周囲に存在する環の、実スケール大域シミュレーションに初めて成功しました。このような環全体を計算対象とし、粒子の自己重力を考慮した実スケールシミュレーションは、土星の環においても行われておらず、世界初の試みです。シミュレーションから、環の物質がカリクロー本体に比べて軽い物質からできていることがわかりました。さらに環には粒子の重力によってさざ波のような構造が生じ、環の寿命が従来推定されていたよりも非常に短くなる可能性があることがわかりました。これらの成果は、カリクローの環の起源や進化を解明する鍵となります。
本研究は米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』3月1日号に掲載されました(Shugo Michikoshi and Eiichiro Kokubo, ApJL, 837, L13, 2017. “Simulating the Smallest Ring World of Chariklo”)。
(注)「アテルイ」は、国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用する天文学専用のスーパーコンピュータ(Cray XC30)。理論演算性能は1.058ペタフロップス。岩手県奥州市の国立天文台水沢キャンパスに設置されています。本文へ戻る