- 研究成果
銀河の「化石」が明らかにした大質量銀河の形成と進化
チューリッヒ工科大学の研究者を中心とした研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された多天体近赤外撮像分光装置 Multi-Object Infrared Camera and Spectrograph(モアックス、MOIRCS)を使い、ビッグバンから40億年後の宇宙に存在している、既に星形成活動を終えた銀河を観測しました。遠方銀河にある恒星の性質をひとつひとつ詳細に調べることは困難ですが、研究チームは、一度に多数の天体のスペクトルを取得できるMOIRCSの強みを活かして24個の銀河について効率的にデータを取得し、それらをすべて足しあわせることで200時間の観測時間に相当するスペクトルを合成しました。その結果、観測した銀河の年齢が10億年であり、また金属量が太陽に比べて1.7倍、アルファ元素(注)と呼ばれる星形成の継続期間の指標となる元素と鉄の比が太陽に比べて2倍程度であることが、この合成スペクトルの分析からわかりました。このような遠方銀河において、恒星のアルファ元素と鉄の比を求めたのは初めてのことです。これによって、銀河が星形成をおこなった期間が10億年より短かったことがわかりました。これらの結果から、大質量楕円銀河はビッグバンの40億年後の状態から、さらなる星形成活動が生じることなく、現在に至ったということが明らかになったのです。
注:アルファ元素とは、原子核の質量数が4の倍数の元素のことをいいますが、ここでは主にII型超新星爆発にともなって放出される酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、硫黄、カルシウム、チタンを指しています。

詳しくは銀河の「化石」が明らかにした大質量銀河の形成と進化(すばる望遠鏡)をご覧ください。
この研究成果は2015年8月1日発行のアメリカ天文学会の天体物理学誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載されました(Onodera et al. 2015 "The Ages, Metallicities, and Element Abundance Ratios of Massive Quenched Galaxies at z~1.6")。