自然科学研究機構 国立天文台

太陽系外惑星が作る「腕」の検出に成功

研究成果

総合研究大学院大学の研究者を中心とする研究チームは、さそり座J1604星と呼ばれる若い星の周囲にある原始惑星系円盤をすばる望遠鏡を使って観測し、惑星が円盤に作る「穴」とその内部に伸びる「腕」構造を、直接撮像することに成功しました。

惑星は、若い星を取りまく円盤状のガスと塵のかたまりから生まれます。この円盤は「原始惑星系円盤」と呼ばれ、太陽のような恒星が生まれ成長するのと同時に自然に作られる構造です。円盤内で塵が集積して微惑星が形成され、微惑星どうしが合体衝突することによって惑星が誕生すると考えられています。このとき、惑星の材料である塵は円盤の外側にはまだ豊富に残るものの、内側では消失しつつあり、それが円盤内の穴として観測されます。つまり、この穴を観測することは、惑星誕生の謎を解き明かす鍵になると言えます。しかし、すぐ近くに明るい中心星があるために、円盤内側に存在する穴を観測で直接とらえるのは大変困難です。このため、穴内部に惑星形成の兆候を示すような構造を持つ天体は、これまでほとんど見つかっていませんでした。

今回、研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された惑星探査用赤外線カメラHiCIAO(ハイチャオ)及び大気揺らぎの影響を補正する補償光学装置を用いて観測を行い、原始惑星系円盤内に存在する穴と、穴をまたぐ腕を鮮明に写し出し、さらにその腕が曲がっていることを突き止めました。世界最高精度の解像度をもつすばる望遠鏡による、画期的な成果です。

さそり座J1604星(距離470光年)を取り巻く原始惑星系円盤の赤外線画像(波長1.6マイクロメートル)。中心星付近は星からの強い光の影響が大きいため、黒く塗りつぶしてあります。1天文単位は太陽と地球の距離に相当します。(1)原始惑星系円盤、(2)円盤上の穴(ピンク破線の領域)、(3)円盤内縁から穴をまたいで内部に伸びる腕、そして(4)円盤上の非対称構造(くぼみ)が示されています

原始惑星系円盤と惑星との相互作用についての理論的研究によると、円盤中に惑星が存在した場合、惑星からの重力により、弧状に曲がった構造が惑星周囲に作られることが知られています。また、惑星は円盤内部に非対称な構造も作ります。今回J1604星で見つかった腕構造の形状や曲がる角度や映し出されたくぼみが理論研究の予想とよく似ていることから、円盤内部には隠された惑星が存在するのではないかと考えられます。

J1604星は、円盤が地球に対してほぼ正面で、円盤内部の構造を観測しやすい向きとなっています。このため原始惑星系円盤の構造をモデル化するのに理想的な天体です。今後も引き続き観測を続けていくことにより、惑星誕生の謎が解かれていくことが期待されます。

詳しくは、太陽系外惑星が作る「腕」の検出に成功(すばる望遠鏡) をご覧ください。

掲載論文

この論文は、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レター』に掲載されました。
"Subaru Imaging of Asymmetric Features in a Transitional Disk in Upper Scorpius" Mayama, S. et al. 2012 Astrophysical Journal Letter 760号, L26ページ

関連リンク