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開催報告:ひので衛星10周年記念講演会「太陽観測から宇宙と地球を探る」

2016年9月10日(土曜日)に名古屋大学の坂田・平田ホールで「ひので衛星10周年記念講演会」を開催しました。打ち上げてから10年たったひので衛星が、何の目的で開発され、これまでの観測で何が分かってきたのか、そしてまだ分かっていないことは何なのかを、一般の方々に知っていただくための講演会です。当日は、真夏のような暑さの中、228名もの来場者でにぎわいました。YouTubeライブで講演会のインターネット配信も行いました。
講演会は、司会・進行も務めた国立天文台ひので科学プロジェクト長の渡邊鉄哉教授の挨拶で始まり、4人の太陽研究者が講演しました。最初の講演者は、国立天文台SOLAR-C準備室の原弘久准教授でした。太陽活動を理解するためには磁場が鍵であることと、「ひので」誕生の経緯、すなわち、太陽にはどういった謎があってその解明にはどんな観測装置が必要だったのかをお話ししました。
この講演を受けて、「ひので」で太陽の謎がどこまで分かったのかを紹介したのが、JAXA宇宙科学研究所の清水敏文准教授と、名古屋大学宇宙地球環境研究所の草野完也教授です。清水准教授は、6000度の太陽表面の上空に100万度のコロナが存在する謎について、2つの有力な仮説をそれぞれ支持する観測結果が「ひので」により得られたことを話しました。草野教授は、太陽面で起こる爆発現象である太陽フレアが地球に及ぼす影響と、太陽フレアを起こすきっかけとなる磁場構造を見つけるという、フレア予測につながる研究成果を紹介しました。
最後に京都大学理学研究科附属天文台/国立天文台SOLAR-C準備室長の一本潔教授からは、「ひので」よりもさらに高分解能の観測と、光球とコロナをつなぐ彩層の磁場計測を目指す次期太陽観測衛星SOLAR-Cの計画が紹介されました。
最先端の研究内容に踏み込んだ難しい内容であったにもかかわらず、来場者は講演に熱心に聞き入り、質疑応答も活発に行われました。講演開始前、休憩時間、終了後には、来場者が講演者に質問したり、ロビーに置かれていた「ひので」模型を見ながらスタッフと話をしたりする光景が見られました。アンケート結果からも、講演内容に対する来場者の関心の高さが伺えました。特に、私達の生活にも直結する、太陽フレアの研究の重要性や予測精度向上への期待が書かれたコメントが多数ありました。また、SOLAR-C衛星の実現により太陽の謎の更なる解明に期待を寄せるコメントも非常に多くいただきました。皆様の応援に支えられ、今後もSOLAR-C計画を推進してまいります。そして、太陽研究の今後の進展については、講演会等で広く伝えてほしいとの要望をたくさんいただきました。これからも、最先端の研究成果をかみ砕いて分かりやすくお伝えできるよう努力してまいります。
この講演会のようすは、YouTube NAOJchannelでご覧いただくことができます。