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未来の宇宙人材に届け!「国立天文台で油井宇宙飛行士と学ぶ!―月・火星探査に向けて―」開催報告
2026年8月20日(木曜日)、国立天文台(NAOJ)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「国立天文台で油井宇宙飛行士と学ぶ! ―月・火星探査に向けて―」を開催しました。当イベントの企画と運営に携わったスタッフとしてその様子をご報告します。
今、人類の宇宙活動は、月へそして火星へとその領域を広げようとしています。今後打ち上げが予定されている、月極域探査機「LUPEX(ルペックス)」や火星衛星探査計画「MMX(エム・エム・エックス)」などの探査プロジェクトが進められているほか、現在運用中の国際宇宙ステーション(ISS)でも、月や火星探査につながるさまざまな実験が行われています。そこで、これからの宇宙探査を担う小中高校生に、天文・宇宙の最前線とこれからの月・惑星探査の意義を伝えるため、油井亀美也(ゆい・きみや)JAXA宇宙飛行士、JAXA/NAOJの月・火星探査のスペシャリストらを迎えて、本イベントを開催しました。
宇宙から見た空と地球
まず、2026年1月に第73・74次ISS長期滞在を終え帰還した油井亀美也JAXA宇宙飛行士に、宇宙で撮影した様々な画像を交えながら、ISSでの体験や実験の様子などを語っていただきました。進行役は、2026年3月に国立天文台を退職され、その後京都産業大学神山宇宙科学研究所長を務める渡部潤一国立天文台名誉教授です。そもそもこのイベントは、油井宇宙飛行士と渡部さんの親交がきっかけでした。実は、今回紹介された、ISSから撮影した「レモン彗星(すいせい)」の画像は、渡部教授がISS搭乗中の油井さんに提供した彗星の軌道データをもとに撮影されました。ほかにも、宇宙から国立天文台を撮影した画像、宇宙から見た流星やオーロラ、未来の宇宙探査につながる実験の様子など、渡部教授の軽妙な「ツッコミ」も相まって、会場はたいへん盛り上がりました。
月の水を探す!
次に、月極域探査機「LUPEX」について、JAXA 有人宇宙技術部門 月極域探査機プロジェクトチームの麻生大(あそう・だい)シニアアドバイザーにお話ししていただきました。LUPEXは車のように移動しながら観測する探査車(ローバー)です。インドと日本の共同プロジェクトであり、インドの宇宙機関ISROの月着陸機に搭載されて、2028年頃にH3ロケットによる打ち上げが予定されています。月には南極域などに水が存在していることが、今までの観測や研究で知られています。LUPEXは、将来の継続的な月での有人宇宙活動において、資源として使うことができる量の水が存在しているのかを確かめるため、月の南極域の土に水がどの程度含まれているかを精密に調べます。麻生さんはJAXAの調布航空宇宙センターや宇宙科学研究所でのLUPEXの開発試験の様子なども見せながら、LUPEXによる月探査への期待を生き生きとお話しくださり、会場の参加者も目を輝かせて聞き入っていました。
火星のおすすめ物件?!
国立天文台RISE月惑星探査プロジェクト長の竝木則行(なみき・のりゆき)教授は、火星衛星探査計画「MMX」について解説しました。同プロジェクトは、2007年の月周回衛星「かぐや」、小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」などにおいても、JAXAと協力し、レーザ高度計による科学観測を行いました。火星衛星探査計画「MMX」においても、レーザ高度計チームに参加、国際的な測地学科学戦略チームも牽引(けんいん)し、火星の衛星の起源と進化の解明に挑んでいます。竝木さんは、火星の衛星フォボスからのサンプルリターンをめざすMMXによってどのような科学成果が期待されるかを解説しました。最後に、火星の代表的な地形のオリンポス山やマリネリス峡谷などを不動産会社の物件紹介にみたててユーモアたっぷりに紹介。いつか火星に人類が住む日が来るのかもしれないと想像が膨らみました。
皆さんが、きっと切り開く未来
最後に、「これから10年で宇宙探査はどう変わるのか」「人類は月に定住するのか」「火星へ人類は行くのか」の3つのテーマで、トークセッションを行いました。渡部さんがファシリテータとなり、登壇者全員が月・火星探査の未来について語りました。これからの10年で、多くの人が月に行ったり住んだり、あるいは月での有人宇宙活動に関する産業に携わるための道筋ができるかもしれない。火星は月よりも遠く到達するのに困難な点もあるが、むしろ月よりも探査しやすい条件もある。技術革新によって、多くの人が火星に行くという体験ができるかもしれない――等、それぞれの立場でユニークな意見が飛び交いました。宇宙飛行士のような特別な存在ではない人々が、宇宙に進出する未来がもうすぐそこまで来ており、きっと、来場者の皆さんのような若い世代が活躍してくれるだろうという期待も語られました。
小中高校生から鋭い質問が続出!
最後に、会場の小中高校生からの質問に登壇者全員で答えました。どれも、大人もうならせるような鋭い質問ばかり!約40分間の質問コーナーは、この日、最も会場が沸いた時間となりました。
質問コーナーの最後では、渡部さんが、会場からとてもレベルの高い質問が多かったことに触れ、「ぜひ、星や宇宙が好きだったら、そのまま好きなままでいて、勉強して、将来宇宙に関わっていただけると良いなと思う」とのコメントがありました。いつか、この中からきっと、天文・宇宙の分野で活躍する人材が出るに違いない!そう私たちも信じています。
アーカイブ映像をぜひご覧ください。
本イベントは、定員が百数十名と少なかったため、倍率が約3倍という難関をくぐり抜けた方のみが会場で参加いただくことができました。残念ながら会場での参加がかなわなかった方もご覧いただけるように、当日はNAOJ YouTubeチャンネルにてライブ配信を行いました。現在もアーカイブ映像をご覧いただくことができます。会場で参加された方、繰り返しご覧になりたい方もぜひご覧ください。
当イベントは、当初は油井宇宙飛行士がISS搭乗中に、軌道上と地上との交信イベントとして企画したものでしたが、不測の事態により油井宇宙飛行士の帰還が早まったために中止となりました。その後、JAXA/NAOJ双方のスタッフの熱い思いによって企画を練り直し、さらにバージョンアップしたイベントとして開催が実現できました。来場者の皆様、そして登壇者はもとより、運営に携わったすべての皆さんに御礼申し上げます。
最後に、来場者アンケートに記された印象的な一節をご紹介します。
「ご自身の研究をご自身がわくわくされている。そのことがお話しをされる姿でよく分かり、私もわくわくしました」 そんな「わくわく」を届けられる体験を、今後もお届けしていきたいと願っています。