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2025年2月の星空情報

著者近影内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)

2025年2月の星空情報です。

暦の上で春の始まりを告げる「立春」。今年は2月3日です。その前日の「節分」は2日になります。

日の入り後の西の空で輝く金星。今月「最大光度」を迎え、明るさはマイナス4.9等級に達します。太陽・地球との位置関係で見かけの大きさや満ち欠けの様子が変わり、今は大きく欠けた姿で見えています。

空の高いところにも二つの惑星が目立ちます。木星はマイナス2等級。赤色が特徴の火星はマイナス1等級ほどです。10日の明け方には、北海道の大部分や、中国地方・九州などの一部で、沈みゆく火星が月に隠される様子が観察できます。

夜空で一番明るい恒星、おおいぬ座のシリウスが南中する頃、地平線近くには二番目に明るい星も現れます。よく晴れた夜には、りゅうこつ座のカノープスを探してみましょう。

2月の月の暦

5日:上弦 12日:満月 21日:下弦 28日:新月

ワンポイント・アドバイス(カノープス)

北半球の冬に見える夜空には、多くの明るい恒星があります。太陽を除く恒星としては最も明るいおおいぬ座のシリウス、オリオン座を際立たせるベテルギウスとリゲルなど、全天で21個ある1等星以上の恒星のうち7つが、比較的集まった領域に見えています。さらに、緯度の低い地域では、南の空にもう一つの1等星が見つけられるかもしれません。神話に登場する巨船の船体をかたどるりゅうこつ座に輝くカノープスです。

赤緯(天球上の緯度)約マイナス52度にあるカノープスは、地球を凹凸のない回転楕円(だえん)体とすると、計算上は北緯38度付近(福島県北端付近)で地平線に隠れて見られなくなってしまいます。標高の高い場所からはわずかに地平線が下がって見られるため、この星が見られる北の極限にチャレンジしている人もいるそうです。

カノープスは、実はマイナス0.62等というシリウスに次ぐ明るさを誇る星で、南の地方に行けば高度が上がり煌々(こうこう)とした輝きを放っています。しかし、地平線スレスレのごく低空(東京では南中高度がわずか1.6度)までしか昇らない地域では、地上付近の大気の透明度や、地上の障害物、あるいは照明の影響を大きく受けるため、観察には相当の好条件が必要です。大気によって減光された赤く暗い光を見つけられる機会は少ないため、幸運と長寿を司(つかさど)る「南極老人星」とみなす伝承もあります。

カノープスの南中は、秋から冬にかけては未明から深夜へと推移し、早春には観察しやすい宵の時間帯になります。冬のように透明度の高い夜、地平線付近まで見晴らせる小高い場所で、探してみてはいかがでしょう。

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