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元気です!!毎日届く太陽からの便り—極大期を迎えた太陽—

皆さんが太陽を意識的に見るのはどんな時でしょうか。日食など特別な天文現象がない限り、おそらく注目度は1月1日がピークで、残りの364日はずっと低空飛行、意識されたとしてもジリジリと照り付ける真夏の日差し、昼が一気に短くなる秋の夕焼け、冬の紫外線対策など、太陽そのものというより太陽による日常生活への影響を気にすることの方が多いかもしれません。毎日変わらずにそこにあるため逆に意識されず、特別に感じない、身近すぎるが故に「天体」として注目されにくい太陽ですが、2024年は少し違いました。
オーロラに沸いた日本
2024年5月、太陽表面の爆発現象「太陽フレア」の中でも最も規模の大きい「Xクラス」のフレアが相次いで発生、それに伴って11日夜から12日の未明には日本列島各地で低緯度オーロラが観測される事態となりました。社会インフラへの影響も懸念されることから関心が高まり、太陽活動が高まっているという情報は広く知れ渡り、ニュースに取り上げられたり、科学特番が組まれたり、一時はSNSのトレンドワードに「太陽フレア」がランクインするなど、近年まれに見る盛り上がりを見せました。

太陽フレアの規模は、小さなものから順に、A、B、C、M、Xの5段階のクラスで表されます。クラスは、宇宙空間で測定されるX線強度によって決まり、1つ上がるとX線の強度は10倍大きくなります。最大規模にあたるXクラスの太陽フレアが、5月8日から15日の間に14回発生しました。2024年に発生したXクラスフレアは、執筆時の12月9日現在で50回、2023年が年間13回だったことを考えると、いかに短期間に集中して発生したのかが分かります。
この時、太陽表面の北と南の2か所に出現していた巨大な黒点群「NOAA 13663」(北)、「NOAA 13664」(南)(注) は、いずれも地球数十個分に匹敵するほどの大きさがあり、N極とS極が入り乱れる複雑な磁場構造を持っていました。こうした複雑な黒点群の上空(コロナ)でフレアが起こりやすいことが分かっています。太陽フレアによって吹き飛ばされた高エネルギーのプラズマが地球に衝突し、磁気圏をかき乱したことにより、日本でも普段見ることができないオーロラを観測することができたのです。
(注)NOAAは米国海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration)による太陽面の活動領域番号です。


身近で未知な太陽に迫る
太陽活動を理解するうえで磁場が大きなカギを握っていることは分かっていますが、太陽フレアがいつ、どこで、どれくらいの規模で起こるのか、磁場構造から完全に予測することは今のところできません。さらに、磁場観測によって解明が期待されているのが「コロナ加熱問題」です。太陽の各層の温度を調べると、太陽の中心核は1600万度、表面(光球)は6000度、外側の彩層が1万度、さらに外側の薄いコロナが100万度となっています。熱源よりも遠い場所が高温になるという直感とは違う現象が起きており、そのメカニズムはいまだ分かっていません。100年前から綿々と続く三鷹の太陽観測、2026年に20周年を迎えるまだまだ現役の「ひので衛星」に加え、2028年度には次期太陽観測衛星「SOLAR-C」を打ち上げる予定です。主に紫外線波長を観測できる望遠鏡で、今までにない詳細な観測を実現し、これらの謎に挑もうとしています。
毎日が特別な太陽
太陽活動には11年の周期があり、2025年が極大期のピークにあたるため、これから数年は黒点数やフレアの発生回数が多い状態が続くと思われます。初日の出は年に1回の特別なものですが、太陽自身は1分1秒と同じ姿をしておらず、全ての瞬間が特別といえます。国立天文台では太陽の様子をリアルタイムで公開していますので、ぜひ毎日の太陽の様子に注目いただければと思います。
リアルタイム画像(太陽科学観測プロジェクト 三鷹地上観測)