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2024年7月の星空情報

著者近影内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)

2024年7月の星空情報です。

夜明け前、東の空で火星の赤い色合いが目立ちます。低空には木星が現れ、昇るにつれて輝きを強めていきます。

月の初め、新月に向かう細い月が、二つの惑星の近くを通ります。約ひと月かけて月は地球の周りを公転し、月の終わりに再び月とこれらの惑星が会合します。

同じころ、南の空では、土星が南中しています。25日の早朝、青空の中で「土星食」がひっそりと起こります。

宵の頭上高くに「かんむり座」があります。このささやかな星座の領域で、見慣れない星が突然輝くかもしれません。約80年ごとに起こる「新星」の爆発が今年予測されています。

7月の月の暦

6日:新月 14日:上弦 21日:満月 28日:下弦

ワンポイント・アドバイス(かんむり座の新星)

夜空には明るさを変化させる星(変光星)が数多くあります。特に、短い期間に劇的に光度が増大する天体(激変星)は、今まで星が見られなかった場所に突如として星が現れるように見えるため、“新星”や“超新星”と呼ばれるようになりました。実際には、新しい星が生まれたのではなく、星が一生を終える時、あるいはその後に残った天体が起こす、激しい爆発現象です。

今年、肉眼で見える明るさになると予測されている新星があります。約80年周期でこれまでにも新星の発生 が確認されている「かんむり座T星」です。通常は10等級程度ですが、新星発生時には2〜3等級にまで急激に増光し、数日たつとまた暗くなっていきます。

新星は、恒星と白色矮星(わいせい)(恒星としての活動を終え、ガスを失って残った中心核)とがごく接近して回り合うペア(近接連星)で起こる爆発です。恒星から白色矮星の表面に流れ込むガスが臨界の質量まで降り積もったときに、核融合反応が発生して、一気に爆発、増光します。恒星からのガス流入が続く限り、臨界に達するたびに爆発が起こります。多くは1000年以上の長い周期で起こると考えられますが、中には数十年周期で爆発し、夜空で繰り返し観察されているもの(再帰新星)があり、かんむり座T星もその一つです。これまでに1866年、1946年に新星が発生しており、さらに古い爆発の記録もあるようです。

増光中は、空がある程度暗い場所では特別な道具が無くても見られる明るさと期待されます。星図を頼りに、かんむり座の領域に描かれていない星が無いか探してみてはいかがでしょうか。

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