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すばる望遠鏡主焦点カメラ、国立科学博物館で第二の人生

国立科学博物館上野本館の常設展示に加わったすばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)の実機
国立科学博物館上野本館の常設展示に加わったすばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)の実機。(クレジット:国立天文台)

ハワイ島マウナケアにあるすばる望遠鏡は、8.2メートルの大口径と広い視野が特徴の光学赤外線望遠鏡です。その広視野観測を支えてきたのがすばる望遠鏡主焦点カメラ「Suprime-Cam(シュプリームカム)」です。2017年に現役を退いたこのカメラは、いま国立科学博物館上野本館の展示室で第二の人生を送っています。

通常、口径が8メートルを超えるような大口径望遠鏡は、天体の微弱な光を捉えることに威力を発揮しますが、天空の広範囲の観測は不得手です。すばる望遠鏡が得意とする広視野観測は、CCD(天体の光を捉えるための半導体素子)を何枚も並べたモザイクCCDカメラを使用すること、そしてそのカメラを望遠鏡の主焦点に取り付けることで実現しました。10個のCCDを使用し、8000万画素にも及ぶ巨大カメラの愛称は「Suprime-Cam」。英語の「主焦点(prime focus)」と、「最高の/究極の(supreme)」という言葉を組み合わせたものです。この言わば「究極の主焦点カメラ」が本格的な観測を開始した2000年、モザイクCCDの開発も、巨大な冷却用真空容器に格納されたカメラを主焦点に取り付けることも、当時としては最高の技術の結晶でした。そしてすばる望遠鏡は、大口径望遠鏡による主焦点観測の先駆となったのです。

すばる主焦点カメラは、2000年12月開始の第一期共同利用観測から2017年5月まで、すばる望遠鏡初期の主要観測装置として活躍し、その広視野・高精細の観測を支えてきました。とくに遠方銀河の捜索観測で、数々の発見をもたらしています。現在はこれに代わり、「超究極の主焦点カメラ」とも言える、さらに広視野・高画素(8億7000万画素!)の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリームカム、略称:HSC)」が、引き続き多くの成果をあげています。

後進に道を譲ったすばる主焦点カメラ。この実機は、国立天文台から国立科学博物館に寄贈され、現在は国立科学博物館上野本館で第二の人生を送っています。すばる望遠鏡が世界に誇る発見を支えたカメラの姿を、地球館地下3階の常設展示「宇宙を見る眼」のコーナーで、ぜひご覧ください。

去る2023年4月15日には、すばる主焦点カメラの常設展示開始を記念する特別講演会を、「国立科学博物館 天文学普及講演会」として、上野本館で開催しました。講演者は、すばる望遠鏡とその観測装置の計画・策定に関わった家正則(いえ まさのり)国立天文台名誉教授、すばる主焦点カメラの構想・開発を先導した岡村定矩(おかむら さだのり)東京大学EMPエグゼクティブ・ディレクターの2名。すばる望遠鏡の計画段階から深く関わった研究者ならでは、四方山(よもやま)話も織り交ぜながらの、たいへん楽しく興味深い講演でした。この講演の録画をYouTube国立天文台チャンネルにて公開しています。展示と共にこちらもぜひご覧ください。

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文:小野智子(国立天文台 天文情報センター)

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