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2023年5月の星空情報
5月の星空情報です。
日が暮れて暗くなると、北の空の高いところには北斗七星が昇っています。
柄杓(ひしゃく)から伸びるカーブをたどると、色違いの二つの一等星、うしかい座のアルクトゥルスとおとめ座のスピカが輝いています。
春の星空には、天の川銀河の外の天体がたくさん隠れています。イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)によって初めてブラックホールシャドウが撮影された巨大楕円(だえん)銀河M87も、おとめ座の領域にあります。
星座の中を動く月は、5月中旬に明け方の空で土星の近くを通ります。
下旬になると、宵の空で明るく輝く金星と細い月が接近し、目を引く光景になるでしょう。
5月の月の暦
6日:満月(注) 12日:下弦 20日:新月 28日:上弦
(注)6日の未明には半影月食が起こります。国立天文台暦計算室の「日食各地予報」をご参照ください。
ワンポイント・アドバイス
うしかい座のアルクトゥルスとおとめ座のスピカ、それにしし座のデネボラを加えた「春の大三角」は、春から初夏にかけての宵の空の目印です。私たちを取り巻く天の川に貫かれた夏や冬の大三角とは異なり、天の川から離れた方向に臨む春の大三角は、深宇宙に開いた“窓”。おとめ座銀河団やかみのけ座銀河団など、銀河の大集団をのぞき込むことができます。
参照:2021年4月の星空情報「春の星座の向こう側」
おとめ座銀河団の中心に存在する巨大な楕円銀河M87の中心には、太陽の65億倍もの質量を持つ超巨大ブラックホールが潜んでいます。2019年、世界各地の電波望遠鏡をつないで超高分解能観測を実現したイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)により、一般相対性理論で予想されていたブラックホール周囲の暗い“影(シャドウ)”の画像が発表され、話題となりました。さらに別の電波望遠鏡観測網によって、ブラックホールを囲んで回転するガスの降着円盤と、激しく噴き出すジェットの根元の様子が捉えられたことで、巨大ブラックホールが多量の物質を飲み込みながら膨大な重力エネルギーを解放するメカニズムの解明に弾みがつきそうです。見上げる星空は、最先端研究の現場でもあるのです。
関連リンク
文:内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)