自然科学研究機構 国立天文台

天の川銀河の巨大ブラックホール撮影に関する記者会見の報告

広報ブログ

写真1:天の川銀河中心の巨大ブラックホール「いて座A*」の画像発表の瞬間。
写真1:天の川銀河中心の巨大ブラックホール「いて座A*」の画像発表の瞬間。発表者はゲーテ大学フランクフルトの森山小太郎さん(2022年5月12日 午後10時7分 、紀尾井カンファレンスにて)。(クレジット:国立天文台)

2022年5月12日(火曜日)の日本時間夜、国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope、以下EHT)」の最新成果を発表する世界同時記者会見を行い、天の川銀河中心の巨大ブラックホールである「いて座A*(エースター)」の姿をはじめて捉えた画像を公表しました(写真1)。日本では紀尾井カンファレンス(東京都千代田区)を会場に、国立天文台など複数機関による共同記者会見を開催し、EHTメンバー3名が成果の概要や科学的意義、日本の貢献等について報告しました。本記者会見は、時差のために日本時間で夜10時からという異例の時間帯での開催になりましたが、会場はメディア関係者で満席となり、さらにはいて座A*の画像公表の直後に各種メディアで速報が出るなど、注目度の高い熱気に満ちた会見となりました。

巨大ブラックホールいて座A*

今回公開された画像では、明るいリングとその中心部の暗い部分から成る、ドーナツ状の構造が電波で捉えられています。ドーナツの穴に相当する中心の暗い部分がブラックホールの影であり、いわゆる「光さえ吸い込む暗黒の天体」が天の川銀河の中心に存在することを視覚的に示しています。また、明るいリングはブラックホールの周りを周回する光子によって作り出されたもので、その直径は、すでに知られているいて座A*の質量(2020年のノーベル物理学賞を受賞した研究等による)および一般相対性理論から期待される値と、良く一致しました。これらの結果から、いて座A*がブラックホールであることが確実になるとともに、太陽の数百万倍程度の質量の巨大ブラックホール近傍でも一般相対性理論が成り立っていることが改めて確認されました。

発表者は観測や解析で大きな貢献をしてきた若手研究者

今回の東京での記者会見には、EHTメンバー10名が参加し(写真2)、その中から若手研究者3名が発表を行いました。EHTでは(他のプロジェクトも同様と思いますが)若手研究者の活躍が非常に重要で、それ無しには今回の成果も得ることができませんでした。そのことから、会見では、ここ数年間EHTの観測や解析のために現場で大きな貢献をしてきた若手研究者たちに発表者を務めてもらいました。トップバッターはドイツ・ゲーテ大学フランクフルトの森山小太郎さん(博士研究員)で、最大のハイライトであるいて座A*の画像公表という大役を担いました(写真1)。その後、東京大学大学院の小藤由太郎さん(博士課程)が研究の意義について、さらに新潟大学の小山翔子さん(助教)が日本の貢献について報告し、最後に筆者が日本メンバーを代表して挨拶をしました。3人の若手は、研究者人生で初めて経験する大舞台に緊張したことと思いますが、事前に何度も練習したおかげもあって立派に役目を果たしました。実際、具体的成果やその科学的意義は、会場の記者の皆さんおよびライブ配信の視聴者にも、研究者の熱い思いとともにしっかり伝わったと思っております。

写真2:日本での記者会見メンバー全員による集合写真
写真2:日本での記者会見メンバー全員による集合写真(クレジット:国立天文台)

若手研究者を支援するクラウドファンディング、6月17日まで実施中

さて、今回の研究によって天の川銀河の中心の巨大ブラックホールの存在は確定的になりました。これは研究の終わりではなく、むしろ新たな研究が可能になる時代の始まりです。具体的には、今後静止画から動画へとさらに研究を進めることで、ブラックホール周囲のガスやジェットの動きを観測し、ブラックホールにまつわるさまざまな現象の理解を目指したいと考えています。そして、そのような今後の研究推進においても、若手の一層の活躍が重要です。しかし一方、若手研究者をとりまく状況は厳しい状態が続いており、博士取得後も不安定な身分が長く続いたり、また研究経費的にも余裕のない状況が続いたりします。そのような中、私たちとしても、若手のサポートのためにさまざまな取り組みをしているところです。その一環として、若手研究者を支援するクラウドファンディングを現在実施中です。この読者の皆様の中に興味をお持ちの方がいましたら応援していただければ幸いです。そして、皆様からのご支援を私たちの力に変え、さらなる成果を目指して今後とも頑張ってまいりたいと思います。

国立天文台 水沢VLBI観測所 進むブラックホール研究にご支援を。

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文:本間希樹(国立天文台 水沢VLBI観測所)