国立天文台 メールニュース

No.254(2025年11月25日発行) 若い恒星のフレアが惑星環境に及ぼす影響は? ほか

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 国立天文台 メールニュース No.254 (2025年11月25日発行)
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国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などをメールでお届けする不定期発行のニュースです。今回をもちまして最後の配信となります。

◇もくじ-------------------
・研究成果:若い恒星のフレアが惑星環境に及ぼす影響は?
・話題:本間希樹教授が仁科記念賞を受賞
・お知らせ:『理科年表』創刊100周年を記念する講演会を開催
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▼研究成果
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■若い恒星のフレアが惑星環境に及ぼす影響は?

 質量が太陽と同程度で年齢が約1億年の若い恒星「りゅう座EK星」について、高温で速いガスの噴出と、低温でゆっくりとしたガスの噴出とが捉えられました。
 太陽の表面ではフレアと呼ばれる爆発現象が発生していますが、若い恒星ではより大規模な爆発現象が起こっていることが分かってきています。しかし、従来の観測では、一つの波長域での観測にとどまっていたために、より詳細なフレアの温度や速度構造については、解明されていませんでした。
 研究チームは、りゅう座EK星で発生した巨大フレアについて、ハッブル宇宙望遠鏡で紫外線域を、日本・韓国の地上望遠鏡で可視光線域を捉えることに成功し、異なる温度でガス噴出の運動を測定することができました。
 従来の可視光線観測で捉えられていた低温・低速のガス噴出に比べて、今回捉えられた高温・高速のガス噴出は、恒星を周回する惑星への影響がより大きくなります。今後さらなる観測を進めることで、若い恒星で発生する巨大フレアが、惑星の大気や生命誕生の環境にどのような影響を及ぼすのか、明らかにできることが期待されます。

▽若い惑星環境を揺るがす巨大フレアからの多温度のガス噴出―ハッブル宇宙望遠鏡と日韓地上望遠鏡で同時に検出
 https://www.nao.ac.jp/news/science/2025/20251028-okayama.html
▽太陽型星のスーパーフレアから噴出する巨大フィラメントを初検出―昔の、そして今の惑星環境や文明に与える脅威―
 https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20211210-okayama.html


▼話題
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■本間希樹教授が仁科記念賞を受賞

 国立天文台水沢VLBI観測所長の本間希樹(ほんままれき)教授が、2025年度(第71回)仁科記念賞を受賞しました。受賞対象となった研究業績は、「超長基線電波干渉計に基づく大質量ブラックホールシャドウ撮像への貢献」です。
 本間教授は、ブラックホールの「事象の地平線」観測において中心的な役割を果たしました。日本での観測研究グループを早期に立ち上げ、世界の研究者と連携してイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)プロジェクトをリードしました。また、アルマ望遠鏡をEHTに統合するための光伝送装置の開発を主導し、観測の成功に貢献しました。さらに、スパースモデリングを用いた新しいデータ解析手法を導入し、ブラックホールシャドウの画像化において日本チームを率いて大きな成果を上げました。
 仁科記念賞は、故仁科芳雄(にしなよしお)博士の功績を記念し、日本において物理学とその応用に関した優れた研究業績を挙げた研究者に授与されます。

▽本間希樹教授が仁科記念賞を受賞
 https://www.nao.ac.jp/news/topics/2025/20251105-award.html
▽仁科記念賞(仁科記念財団)
 https://www.nishina-mf.or.jp/jp


▼お知らせ
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■『理科年表』創刊100周年を記念する講演会を開催

 国立天文台編纂による自然科学全般を網羅したデータブック『理科年表』は、大正14年(1925年)に創刊され、今年で100周年を迎えました。毎年更新を繰り返し、新たな発見や過去の知見の訂正を刻み込んで成長してきた『理科年表』は、まさに科学のクロニクル(年代記)と言えます。
 本講演会では、『理科年表』の各分野が歩んだ道のりから、研究の最前線、今後の展望などを概観します。会場ロビーでは、『理科年表』の歴史を振り返る展示や、同じくアニバーサリーイヤーを迎える関連分野の展示なども、お楽しみいただけます。『理科年表』をご愛読の皆さんはもちろん、『理科年表』を知らないという皆さんも、ぜひ会場にお越しください。
 なお、本講演会はYouTube国立天文台チャンネルでのライブ配信を予定しています。当日のご来場が難しい方も、ライブ配信およびアーカイブにてお楽しみください。
 詳しくは、「理科年表オフィシャルサイト」をご覧ください。
 
○開催概要
・タイトル:『理科年表』創刊100周年記念講演会―科学のクロニクル 100年の歩み―
・日時:2025年12月14日(日)13:00-16:30(12:00開場)
・会場:一橋大学一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋 2-1-2 学術総合センター内)
・アクセス:https://www.hit-u.ac.jp/hall/accessjp.html
      最寄り駅 神保町(東京メトロ 半蔵門線、都営三田線・都営新宿線)、竹橋(東京メトロ 東西線)
・参加費:無料
・参加方法:事前にオンラインでのお申し込みが必要です(先着順、12月1日よりお申し込み開始)
・詳細:内容や、お申し込み方法の詳細については、「理科年表オフィシャルサイト」記念講演会のページ(https://official.rikanenpyo.jp/posts/9170)をご覧ください
・その他:YouTube国立天文台チャンネルでライブ配信を予定(視聴のお申し込みは不要、講演終了後にアーカイブの視聴も可能です)
・主催:理科年表編集委員会、丸善出版株式会社、自然科学研究機構 国立天文台

○内容(途中休憩あり)
 1.基調講演
 ・梶田隆章(東京大学 卓越教授/2015年ノーベル物理学賞受賞)
   科学の楽しさ~若い時の経験と理科年表~
 2.講演
 ・渡部潤一(自然科学研究機構 国立天文台 上席教授)
   理科年表に見る天文学100年の歩み
 ・野村竜一(気象庁長官)
   気象業務150周年の歩み
 ・倉本直樹(産業技術総合研究所 計量標準総合センター 首席研究員)
   130年ぶりに新しくなった「キログラム」:科学 の進歩がもたらす単位の進化
 ・纐纈一起(東京大学 名誉教授)
   地震学の発展と理科年表地学部
 ・沖 大幹(東京大学 総長特別参与/大学院工学系研究科 教授)
   理科年表の縦横無尽で水と気候変動研究

▽『理科年表』創刊100周年記念講演会(理科年表オフィシャルサイト)
 https://official.rikanenpyo.jp/posts/9170
▽『理科年表』創刊100周年記念 関連企画(理科年表オフィシャルサイト)
 https://official.rikanenpyo.jp/posts/9150


◇編集後記-----------------
 猛暑の夏が終わったかと思うと、短い秋が訪れて、そしてあっというまに落ち葉の季節がやってきました。三鷹キャンパスはすでに初冬の趣で、イチョウの黄葉が美しくなりました。
 国立天文台に広報の部門が独立してから、「国立天文台・天文ニュース」、「国立天文台 アストロ・トピックス」、「国立天文台 メールニュース」と、形を変えながらもおよそ30年続けてきたメールマガジンですが、今回の配信をもちまして最後とさせていただきます。これまでご愛読いただいた皆様、ありがとうございます。今後の情報発信は、ウェブサイト、SNSを中心に続けてまいりますので、引き続き国立天文台の活動にご注目ください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2025年11月25日
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