国立天文台 メールニュース

No.252(2025年3月6日発行)すばる望遠鏡の新たな「目」、超広視野多天体分光器PFSが始動 ほか

__________________________________________________________

 国立天文台 メールニュース No.252 (2025年3月6日発行)
__________________________________________________________

国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などをメールでお届けする不定期発行のニュースです。どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。

◇もくじ-------------------
・話題:すばる望遠鏡の新たな「目」、超広視野多天体分光器PFSが始動
・話題:ハワイ島マウナケア、2つめの星空ライブカメラがスタート!
・話題:地球衝突の可能性が指摘された小惑星、すばる望遠鏡が観測に成功
・お知らせ:三鷹キャンパス太陽塔望遠鏡の特別公開
-------------------------◇

▼話題
____________________________
■すばる望遠鏡の新たな「目」、超広視野多天体分光器PFSが始動

 すばる望遠鏡に新たに搭載された超広視野多天体分光器(Prime Focus Spectrograph、PFS)が、本格的に始動します。すばる望遠鏡の主焦点に約2400個もの「目」(光ファイバー)を配置し、多数の天体からの光を同時に捉えて分光観測を行う、たいへん野心的な装置です。
 PFSの開発は、日本をはじめ、アメリカ、フランス、ブラジル、台湾、ドイツ、中国の20以上の研究機関の協力で進められ、完成までに十数年の年月を費やしています。国立天文台は、装置開発や全体の総括とともに、装置の運用を行う機関として中心的な役割を担いました。
 すばる望遠鏡はこの新たな装置を用いて、宇宙に広がる数百万個の銀河の分光観測を進めて、宇宙の地図を作成します。そして、138億年の宇宙の歴史における銀河の形成過程、加速する宇宙膨張を操るダークエネルギーの性質を観測的に探っていきます。

▽すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器、いよいよ本格始動
 https://subarutelescope.org/jp/news/topics/2025/01/09/3498.html


■ハワイ島マウナケア、2つめの星空ライブカメラがスタート!

 すばる望遠鏡が設置されている米国ハワイ島のマウナケアは、世界有数の天体観測地として知られています。夜空には流れ星や天の川の絶景が広がりますが、夜間は立ち入りが制限され、研究者など限られた人しかこの光景を目にすることができませんでした。しかし、現在はすばる望遠鏡の山頂施設に、国立天文台と朝日新聞との協定に基づく「星空ライブカメラ」が設置され、24時間365日、マウナケアの空のようすがYouTubeでライブ配信されています。
 この星空ライブカメラは東の空を写してきましたが、このたび同じマウナケア山頂域にあるカナダ-フランス-ハワイ望遠鏡(CFHT)のエンジニアの方々の協力によって、西の空とすばる望遠鏡観測棟を写す2台目の星空ライブカメラの運用が実現しました(注)。星空はもちろんのこと、山頂域からのぞむ日の入りの時間帯の美しい光景もぜひお楽しみください。

注:CFHTはカナダ、フランス、ハワイ大学が共同で運用する望遠鏡です。朝日新聞宇宙部、CFHT、国立天文台ハワイ観測所は、このカメラの運用に関する3者協定を2024年に締結し、試験運用が開始されました。

▽マウナケアに2つ目の星空ライブカメラが始動!
 https://subarutelescope.org/jp/news/topics/2025/02/03/3502.html
▽星空ライブカメラ設置・運用の協定を朝日新聞社と締結
 https://www.nao.ac.jp/news/topics/2022/20220913-subaru.html
▽Asahi Astro LIVE 朝日新聞宇宙部
 https://www.youtube.com/@astroasahi


■地球衝突の可能性が指摘された小惑星、すばる望遠鏡が観測に成功

 2032年に地球に衝突する可能性が指摘されていた小惑星「2024 YR4」の撮影に成功しました。この観測から測定された小惑星の位置データは、この天体の衝突確率の計算精度を上げるために活用されました。
 2024年12月に発見されたこの小惑星は、直径40ないし90メートルの大きさと推定され、約4年の周期で長い楕円(だえん)軌道を描いて公転しています。この小惑星が2032年12月に地球に衝突する可能性がわずかながらあるとされたため、その軌道を正確に特定するための観測が世界中で行われました。すばる望遠鏡による観測もその一環です。
 小さく暗い小惑星の姿を捉えることは容易なことではありませんが、すばる望遠鏡に搭載した超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」は、ハワイ現地時の2025年2月20日(日本時間の2月21日)にみごとにその姿を捉えました。このときの小惑星の明るさは、近赤外線域(rバンド)で24.3等級でした。すばる望遠鏡の集光力とHSCの高い撮像性能があってこそ成し遂げられた観測でした。
 世界各地の天文台で行われた観測の結果から、この小惑星の2032年の地球への衝突確率は大幅に下がったとのことです。

▽すばる望遠鏡、地球衝突の可能性が指摘された小惑星2024 YR4の位置測定観測に成功
 https://subarutelescope.org/jp/news/topics/2025/02/24/3519.html


▼お知らせ
____________________________
■三鷹キャンパス太陽塔望遠鏡の特別公開

 国立天文台三鷹キャンパスにある太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)の特別公開を、来たる3月29日に行います。国の登録有形文化財である太陽塔望遠鏡は、普段は建物の外観のみ公開していますが、この日は解説員による案内のもと建物の内部を見学できる、たいへん貴重な機会となります。晴れていれば、太陽観測のようすの見学のほか、地下分光器室での太陽スペクトルの観察体験も予定しています。この機会にどうぞ三鷹キャンパスへお越しください。
 詳しくは、ウェブサイトの案内をご覧ください。

▽国立天文台 太陽塔望遠鏡特別公開 2025春
 https://prc.nao.ac.jp/museum/einstein/

▽太陽塔望遠鏡
 https://www.nao.ac.jp/about-naoj/organization/facilities/mitaka/visit-facilities/solar-tower-telescope.html


◇編集後記-----------------
すばる望遠鏡のファーストライトから25年となる2024年は、すばる望遠鏡の話題を積極的にPRする年になりました。2025年になってからも、PFSの本格始動、2つめのマウナケア星空ライブカメラの運用開始、とうれしいニュースが続いています。マウナケアからのぞむサンセットはほんとうに美しいので、ライブカメラで見られるのが楽しみです。
-------------------------◇

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
__________________________________________________________
発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2025年3月6日
__________________________________________________________




    

このページをシェアする