国立天文台 メールニュース
No.232(2021年11月17日発行)「ほぼ皆既月食」の部分月食(11月19日) など
__________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.232 (2021年11月17日発行) __________________________________________________________ 国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ◇もくじ------------------- ・研究成果:リング状の隙間は生まれた惑星の足跡 ・話題 :宮崎聡教授が仁科記念賞を受賞 ・天文現象:「ほぼ皆既月食」の部分月食(11月19日) -------------------------◇ ▼研究成果 ____________________________ ■リング状の隙間は生まれた惑星の足跡 ガスや塵(ちり)から作られている「原始惑星系円盤」は、惑星が生まれる現場として知られています。アルマ望遠鏡ではその高い解像度を生かして、これまでにたくさんの原始惑星系円盤を観測していますが、その多くにリング状の隙間が見つかっています。このようなリング状の隙間はどのようにして作られるのでしょうか。 その要因として、原始惑星系円盤の中で惑星が生まれ、その惑星が周囲のガスと重力を及ぼし合うことによって、惑星の通り道(公転軌道)に沿う隙間ができることが考えられます。これは数値シミュレーションによっても確かめられています。 ところが、ある条件下では、原始惑星系円盤の中で生まれた惑星は、円盤の中心にある星に向かって移動する場合があること、また移動した先でも同様の隙間を新たに作ることが、シミュレーションによって明らかになりました。このように円盤内を惑星が移動する場合には、移動の「始点」と「終点」の両方でリング状の隙間が作られることになるのです。 今回のシミュレーションから、原始惑星系円盤に見られるリング状の隙間は、そこで惑星が誕生した痕跡だけでなく、惑星が移動した足跡をも表している可能性が明らかになりました。この研究結果は、原始惑星系円盤での惑星形成の新しいシナリオを提唱することにつながるでしょう。 この研究のシミュレーションには、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」が用いられています。 ▽原始惑星系円盤のリング構造が惑星形成の歴史を残している可能性を示唆 https://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20211113 ▽アルマ望遠鏡がシャープにとらえた惑星誕生20の現場 https://alma-telescope.jp/news/dsharp-201812 ▼話題 ____________________________ ■宮崎聡教授が仁科記念賞を受賞 国立天文台 先端技術センターの宮崎 聡(みやざき さとし)教授が、2021年度仁科記念賞を受賞しました。 受賞対象となった研究業績は、「すばる望遠鏡広視野カメラの開発による観測的宇宙論の展開」です。宮崎教授は、すばる望遠鏡に搭載する超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を開発しました。そして、HSCを用いた大規模探査観測を行い、そのデータから、これまでにない広さと詳細さでダークマターの空間分布とその時間進化を描き出しました。その結果、宇宙の膨張がなぜ加速しているのかという謎を解き明かす上での、新たな知見をもたらす成果を挙げています。 HSCの技術開発とそれを用いた科学研究による観測的宇宙論への貢献が、今回の受賞理由となりました。 仁科記念賞は、故仁科芳雄(にしな よしお)博士の功績を記念し、日本において物理学とその応用に関した優れた研究業績を挙げた研究者に授与されます。 ▽宮崎聡教授が仁科記念賞を受賞 https://www.nao.ac.jp/news/topics/2021/20211110-award.html ▽かつてない広さと解像度のダークマター地図 https://www.nao.ac.jp/news/science/2018/20180227-hsc.html ▽仁科記念賞(仁科記念財団) https://www.nishina-mf.or.jp/project/kinen/ ▼天文現象 ____________________________ ■「ほぼ皆既月食」の部分月食(11月19日) 11月19日、満月が地球の影に隠される月食が起こります。今年5月26日には、月の全体が地球の影に隠される「皆既月食」がありましたが、今回は月の一部が隠される「部分月食」です。ただ実際は、月の大部分(直径の約98パーセント)が地球の影に入りこむため、「ほぼ皆既月食」と呼べるほどのたいへん「深い食」になります。 11月19日の月食は、日本全国で観察することができますが、北海道や東北地方北部を除く地域では、欠けた状態の月が昇ってくる「月出帯食(げつしゅつたいしょく)」となります。食の予報は次のとおりで、各地とも同じ時刻です。 部分食の始まり 16時18分 食の最大 18時3分 部分食の終わり 19時47分 月の出から間もない時間帯の現象のため月の高度はたいへん低く、「食の最大」の頃で、本州では20度未満、九州・沖縄地方では10度未満です。東の方角が開けた場所で観察するとよいでしょう。 今回の月食の見え方を、国立天文台ウェブサイト「ほしぞら情報」、YouTube国立天文台チャンネルで紹介しています。また、月食当日はYouTubeでのライブ配信も予定しています(注)。ぜひご覧ください。 注:ライブ配信は、天候やその他の状況により、予告なく中止・中断する可能性があります。あらかじめご了承ください。 ▽ほしぞら情報(2021年11月):11月19日は部分月食 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2021/11-topics03.html ▽ほぼ皆既の部分月食(YouTube国立天文台チャンネル) https://www.youtube.com/watch?v=mwrKHHRLxkk ▽国立天文台 暦計算室 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/ ◇編集後記----------------- 11月19日は「ほぼ皆既」の月食。5月26日の皆既月食は、ここ関東ではお天気に恵まれず、ハワイ島マウナケア山頂からのライブ配信で月食を楽しみました。今度こそ晴天の下で月食を楽しみたいものです。でも、遠く離れたハワイでの月食をリアルタイムで見られるとは、すごい時代になったものです。 -------------------------◇ 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 __________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2021年11月17日 __________________________________________________________