自然科学研究機構 国立天文台

No.204(2019年4月24日発行)地球サイズの電波望遠鏡で楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る 他

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   国立天文台 メールニュース No.204  (2019年4月24日発行)
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■地球サイズの電波望遠鏡で楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る
■吉田ハワイ観測所長らが文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞
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■地球サイズの電波望遠鏡で楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る

 「イベント・ホライズン・テレスコープ (Event Horizon Telescope、以下
EHT)」は、世界中の複数の電波望遠鏡を組み合わせる大規模な観測手法で、
ブラックホールシャドウの撮影を目指す国際プロジェクトです。世界中の13の
パートナー機関と200名を超える研究者が参加しています。
 EHTコラボレーションは、2019年4月10日、世界6カ所で同時に行われた記者
会見でブラックホールシャドウの画像を公開し、楕円銀河M87の巨大ブラック
ホールの存在を直接証明することに成功したと発表しました。

 ブラックホールは、膨大な質量を持ちながらそのサイズはとても小さく、宇
宙の中でも特異な天体です。ブラックホールの近くを通過する光は、その重力
に捕らえられて進路がゆがめられ、結果、周囲を周回しながらやがてブラック
ホールに吸い込まれてしまいます。しかし、ブラックホールからある距離より
遠い場所を通過する光は、ブラックホールの重力により進行方向が曲げられる
ことで、本来地球に届くはずのない光も地球から観測されるようになります。
このようにブラックホール周囲で曲げられた光は、地球からは明るいリング状
に観測され、ブラックホールはその中心に暗い“影”として投影されます。こ
れがブラックホールシャドウです。
 このブラックホールシャドウを観測で捉えられると、これまで間接的にしか
捉えられていなかったブラックホールの存在を、直接的に証明できることにな
ります。

 EHTは、超長基線電波干渉法 (Very Long Baseline Interferometry、VLBI) 
という観測手法を用いて、地球サイズの規模の電波望遠鏡を構成することでブ
ラックホールの観測を行います。今回の観測は、2017年4月に、世界の8つの電
波望遠鏡をつなぎ合わせて行いました。その結果、人間の視力で300万に相当
する約20マイクロ秒角の解像度を達成しました。
 今回観測したM87は、おとめ座の方向、地球から約5500万光年の距離にある
巨大な楕円銀河で、その中心には巨大ブラックホールが存在すると考えられて
います。このM87の中心に円いリング構造を検出することに成功しました。観
測された明るく光るリングの正体は、ブラックホールによって激しく加熱され
た超高温プラズマガスからの放射であり、このような超高温プラズマの存在
は、ブラックホール近傍でしか考えられないことから、リングの中心にある暗
い“影”がブラックホールシャドウであることを裏付けています。
 ブラックホールシャドウを捉えた今回の成果は、ブラックホールの存在を直
接確かめた人類史上初の快挙となります。

 この研究成果は、6本の論文としてまとめられ、米国の天体物理学専門誌
『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』特別号に2019年4月10日付で
掲載されました。

 ▽史上初、ブラックホールの撮影に成功 ―地球サイズの電波望遠鏡で、
  楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る
  https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html

 ▽Event Horizon Telescope Japan
  https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/


■吉田ハワイ観測所長らが文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞

 国立天文台のすばる望遠鏡を用いた観測研究などで業績をあげた研究チーム
の研究者が、平成31年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞 (研
究部門) を受賞しました。受賞者は、国立天文台ハワイ観測所長の吉田道利 
(よしだみちとし) 教授、東北大学の田中雅臣 (たなかまさおみ) 准教授、米国
スタンフォード大学の内海洋輔 (うつみようすけ) 物理科学研究員の3名です。
 受賞対象となった業績は「中性子星合体重力波現象の光赤外線対応天体の
研究」です。

 2017年8月17日、米国、欧州の重力波望遠鏡が、重力波源「GW170817」から
の信号を観測しました。吉田教授らを始めとする日本の研究チームは、その重
力波源の追跡観測を、いち早くすばる望遠鏡などを用いて行い、その結果、重
力波源の対応天体を光学赤外線望遠鏡で捉えることに成功しました。重力波源
の電磁波観測の初めての例となったのです。さらに、中性子星同士の合体に伴
い、鉄よりも重い元素が合成される際に生じる電磁波放射現象の理論予測と、
観測で得られた天体の明るさの変化の特徴がよく一致することも明らかになり
ました。これらの研究は、宇宙における重元素の起源の解明につながる重要な
成果となりました。

 このたびの受賞に際し、研究グループを代表する吉田教授は、「重力波と電
磁波の協調観測によるマルチメッセンジャー天文学の創生に寄与することがで
きて、たいへんうれしく思います。今回の成果は、すばる望遠鏡と、日本の大
学の望遠鏡群との緊密な連携なくしては成しえませんでした。研究チームのメ
ンバーに感謝いたします。今後も、大学共同利用機関と大学とのコラボレー
ションを進め、より大きな成果へとつなげていきたいと思います」と述べてい
ます。

 表彰式は、2019年4月17日に文部科学省 (東京都千代田区) にて執り行われ
ました。

 ▽平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等の決定について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/04/1415044.htm

 ▽吉田ハワイ観測所長らが文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞
  https://www.nao.ac.jp/news/topics/2019/20190418-award.html

 ▽重力波天体が放つ光を初観測
  ―日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場―
  https://subarutelescope.org/Pressrelease/2017/10/16/j_index.html


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2019年4月24日
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