国立天文台 メールニュース
No.205(2019年5月17日発行)星の重元素が語る天の川銀河の合体史 他
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.205 (2019年5月17日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象などを、メールで お届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- ■星の重元素が語る天の川銀河の合体史 ■国際天文学連合100年を記念するシンポジウムを開催 ----------------------------------------------------------- ■星の重元素が語る天の川銀河の合体史 特異な元素組成を持つ恒星が、すばる望遠鏡による観測で発見されました。 その組成の特徴から、恒星は天の川銀河で生まれたのではなく、天の川銀河の 周囲に多く存在する矮小 (わいしょう) 銀河と呼ばれる小さな銀河の一つで生 まれたもので、後にその矮小銀河が天の川銀河と合体した結果、天の川銀河の 一員となったと考えられます。今回の観測結果は、天の川銀河のような大きな 銀河が、小さな銀河との衝突・合体を繰り返して成長してきたという銀河形成 のシナリオを裏付けるものです。 国立天文台、中国国家天文台などの研究者から成る研究チームは、中国の分 光探査望遠鏡を用いた観測から選び出した恒星を、すばる望遠鏡に搭載した高 分散分光器で詳細に観測するという研究を2014年から続けています。 研究チームは、これまでにすばる望遠鏡で観測した400個を超える恒星の中 に、たいへん特異な元素組成の恒星を発見しました。この恒星に含まれる重元 素の組成比には、天の川銀河に存在する多くの恒星とは異なる特徴が見られる のです。このような特異な組成を持つ恒星が天の川銀河で見つかったのは、初 めてのことです。 一方で、同様の特徴を持つ恒星は、これまでに天の川銀河を取り巻く矮小銀 河でいくつか見つかっています。矮小銀河は、宇宙における銀河形成の過程で 比較的初期に作られたことが分かっています。また、矮小銀河では恒星の形成 が比較的ゆっくり進むことから、恒星に含まれる重元素の組成には天の川銀河 とは異なる特徴があることも知られています。 これらのことから、今回見つかった特異な元素組成の恒星は、矮小銀河の中 で誕生したものの、後にその母体である矮小銀河が天の川銀河と衝突・合体し、 その結果、天の川銀河の一員となったと考えることができるのです。 天の川銀河のような大きな銀河は、周囲にある小さな銀河との衝突・合体を 何度も繰り返して成長してきました。恒星の元素組成を調べることは、その恒 星が誕生し進化した環境の推定につながるとともに、天の川銀河の成長の歴史 を研究していく手掛かりにもなるのです。 ▽星の重元素が語る天の川銀河の合体史 https://subarutelescope.org/Pressrelease/2019/04/29/j_index.html ■国際天文学連合100年を記念するシンポジウムを開催 国際天文学連合 (IAU) は今年2019年で創立100年になります。IAU創立100周 年の今年は、世界各国の天文コミュニティの間で100年を記念する多彩な事業 が予定されています。1919年のIAU創立時の7カ国の一つである日本でも、IAU 100年を記念する事業がいくつか予定されていますが、その一つとして、来る 5月27日、28日に記念シンポジウムを開催します。 天文学に携わる研究者や教育者、天文学と人々をつなぐ活動に参加している 市民、その活動に関心を持つ市民、天文学や科学の教育普及活動を支える人々、 メディアの人々など、さまざまな方面からのご参加をお待ちしています。 開催概要 タイトル:天文学の100年:過去から未来へ ―国際天文学連合100年記念シンポジウム 日時:2019年5月27日 (月) 13:00-17:00 5月28日 (火) 10:00-17:00 会場:国立科学博物館 上野本館 日本館2階・講堂 (東京都台東区上野公園7-20) http://www.kahaku.go.jp/userguide/access/index.html 主催:日本学術会議 物理学委員会 天文学・宇宙物理学分科会/IAU分科会 共催:日本天文学会、自然科学研究機構 国立天文台、 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 後援:日本天文協議会 参加費:無料 定員:100名 (事前申し込み不要、当日先着順) 内容: 第1日目 (第一部) :5月27日 (月) 1. はじめに 13:00-13:20 2. 日本の天文学の発展:これまでの100年とこれから 13:20-15:00 3. 市民の天文学 15:20-16:20 4. 社会とつながる天文学 16:20-16:50 第2日目 (第二部) :5月28日 (火) 1. 分野を超えて広がる学問 10:00-10:30 2. 科学で夢を育てる 10:30-11:30 3. 天文学と地域社会とのつながり 13:10-14:10 4. 学術コミュニティと大型望遠鏡・共同利用、国際連携 14:10-14:40 5. 新時代の国際共同を見通す 14:40-15:25 6. 日本の長期的な学術政策と天文学の未来のために: 全体討論 15:50-16:50 7.まとめ 16:50-17:00 講演内容等の詳細はウェブサイトをご覧ください。 ▽天文学の100年:過去から未来へ ―国際天文学連合100年記念シンポジウム http://www.astronomy2009.jp/fswiki/wiki.cgi/astroconf/IAU100symp _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2019年5月17日 _____________________________________________________________________