国立天文台 メールニュース
No.136(2014年9月25日発行)10月8日は皆既月食、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.136 (2014年9月25日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■天の川銀河の星の元素組成で探る宇宙初代の巨大質量星の痕跡 ■10月8日は皆既月食 ■板垣さん、きりん座方向にある銀河に超新星を発見 ----------------------------------------------------------- ■天の川銀河の星の元素組成で探る宇宙初代の巨大質量星の痕跡 ビッグバン後の宇宙に最初に誕生した星 (初代星) は、太陽質量の数十倍の 質量の大質量星が多いとされていますが、なかには太陽質量の100倍を超える 巨大質量星が存在したと考えられています。しかしながら、その観測的な証拠 はこれまで見つかっていません。 国立天文台ほかの研究者から成る研究チームは、すばる望遠鏡を用いた天の 川銀河内の星の調査から、これまでに知られていない特異な元素組成をもつ星 (SDSS J0018-0939) を発見しました。今回発見された星は、鉄以外の元素の 組成が極端に低いことから、第二世代の星、つまり初代星から放出された元素 と周囲の水素ガスから生まれた星であると考えられます。 初期世代の星の元素組成は、多くは、太陽質量の数十倍の大質量星が起こす 超新星爆発の元素合成モデルで説明されてきました。しかし、今回見つかった 星の元素組成はそれでは説明できません。これに対し、太陽質量の数百倍以上 の巨大質量星の超新星爆発では、この星の組成の傾向を説明することができま す。つまり、この星は巨大質量の初代星によってつくり出された元素組成が記 録されている可能性があるのです。 今後の観測研究で、巨大質量の初代星の存在が確定的になれば、初代星の一 部は巨大質量星として誕生するという最近の理論研究の結果を支持するものに なります。今後の研究で、初代星のなかに巨大質量星が存在したか、さらには どのくらいの割合で存在したかが、明らかになるかもしれません。 ▽天の川銀河の星の元素組成で探る宇宙初代の巨大質量星の痕跡 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2014/08/21/j_index.html ■10月8日は皆既月食 10月8日の夜、地球の影の中に月が完全に入り込む「皆既月食」が起こりま す。今回の月食は日本では地理的な条件がよく、石垣島以西の地域を除く日本 全国で部分食の始まりから終わりまでを観察することができます。このように 日本で条件よく皆既月食を観察できるのは、2011年12月10日以来のことです。 月食の経過は次のとおりです (日本全国で同じ時刻です)。 部分食の始め 18時14.5分 皆既食の始め 19時24.6分 食の最大 19時54.6分 皆既食の終わり 20時24.5分 部分食の終わり 21時34.7分 多くの方が観察しやすい宵の口に起こる皆既月食です。ぜひご覧になって みてください。 月食の経過や月の見える方向、観察方法、月食が起こる仕組みなどの詳しい 情報については、国立天文台ウェブサイトの解説ページをご覧ください。 また、国立天文台では、多くの皆さんにこの月食を観察していただくための 観察キャンペーン「皆既月食を観察しよう 2014」を、月食当日の夜に実施いた します。皆既食中の月の色を観察して、ウェブページからご報告ください。多 くの皆さんのご参加をお待ちしています。 ▽皆既月食 2014年10月8日 http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2014/lunar-eclipse.html ▽「皆既月食を観察しよう 2014」キャンペーン http://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20141008-lunareclipse/ ■板垣さん、きりん座方向にある銀河に超新星を発見 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、2014年9月11日 (世界 時) の観測から、きりん座方向にある UGC 2855 銀河に15.4等の超新星を発見 しました。この発見は国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は 「2014dg」と命名されました。この天体の発見日時と位置は次のとおり。 ・発見日時 2014年9月11.725日 = 9月11日17時24分 (世界時) ・発見位置 赤経 3時 48分 19.78秒 赤緯 +70度 7分 54.5秒 (2000年分点) 板垣さんによる超新星の発見は、今年に入ってから6個目、通算の発見数は 96個 (独立発見を含む) となりました。 ▽参照 CBET No. 3978 : SUPERNOVA 2014dg IN UGC 2855 = PSN J03481978+7007545 (2014 Sep 18) ▽日本人が発見した超新星一覧 http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2014年9月25日 _____________________________________________________________________