国立天文台 メールニュース
No.130(2014年5月9日発行)大質量星もガス円盤から生まれる? ほか
_____________________________________________________________________
国立天文台 メールニュース No.130 (2014年5月9日発行)
_____________________________________________________________________
国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報
などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。
どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。
-----------------------------------------------------------
もくじ
■大質量星もガス円盤から生まれる?
■教育関係団体のための施設案内週間[野辺山]
■岩本さんがエドガー・ウィルソン賞を受賞
-----------------------------------------------------------
■大質量星もガス円盤から生まれる?
国立天文台水沢VLBI観測所の研究者から成る研究チームは、アルマ望遠鏡を
用いた観測により、生まれたばかりの大質量星であるオリオンKL (注) 中の
「電波源 I (アイ)」から検出される高エネルギー状態の水分子メーザーがこの
天体の周囲にあるガス円盤から放出されていることを明らかにしました。この
結果は、大質量星も中小質量星と同じように、重力によって集まったガスや塵
(ちり) の回転円盤の中で作られるという説を支持するものです。
研究チームは、これまでもこのオリオンKL 電波源 I について、VERA望遠鏡
を用いて距離を正確に求めたり、アルマ望遠鏡を用いて高エネルギー状態の水
分子メーザーを初めて検出したりと、多くの観測を重ねてきました。そして、
アルマ望遠鏡の高い感度と空間分解能を生かした今回の観測からは、高エネル
ギー状態の水分子メーザーがこの天体の周囲の高速で回転する円盤状のガスか
ら放出されていることが分かりました。また、過去にVERA望遠鏡によって求め
られた天体までの距離から、この回転円盤のサイズや質量についても高い精度
で見積もることができました。
大質量星は、中小質量星のようにガスや塵が集まって作られるのか、それと
も星同士が合体して作られるのか、その形成過程はいまだに明らかになってい
ませんでしたが、今回の研究結果は、生まれたばかりの大質量星の周りにはガ
スや塵が集まってできた円盤が存在し、その中で星が作られていくという説を
強く支持する結果となっています。
注:オリオン大星雲 (M42) の中心に位置する赤外線を強く放射する星雲。
「クライマン・ロー星雲」あるいは「KL星雲」とも呼ばれる。太陽系か
ら約1400光年という近距離にある代表的な大質量星の形成領域である。
▽大質量星もガス円盤から誕生?~大質量星を回る高温水蒸気のガス円盤を発見
http://www.miz.nao.ac.jp/vera/content/pr/pr20140304/c01
▽アルマ望遠鏡でオリオン星雲中に新しい水分子メーザーを発見
―生まれたばかりの星に迫る新しい手段の獲得
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201210236888.html
■教育関係団体のための施設案内週間[野辺山]
国立天文台野辺山は、教育関係団体を対象とした夏休み期間中の「施設案内
週間」を設けました。観測業務に支障のない範囲で施設案内を実施し、観測所
内の最先端の観測装置や最新の研究成果を、職員の案内の下に見学いただきま
す。今年度の実施期間は、7月28日から8月1日です。ご希望の方は、実施の1週
間前までにお申し込みください。
詳しくは、国立天文台野辺山のウェブサイトをご覧ください。
▽教育関係団体のための施設案内週間2014 (国立天文台野辺山)
http://www.nro.nao.ac.jp/visit/guideweek2014.html
■岩本さんがエドガー・ウィルソン賞を受賞
徳島県阿波市の岩本雅之 (いわもとまさゆき) さんが、2013年のエドガー・
ウィルソン賞 (The Edgar Wilson Award) を受賞することが決定しました。
同賞は、1998年に制定され、新彗 (すい) 星を発見したアマチュア天文家だ
けに贈られるものです。今回の受賞は、岩本さんによる2013年3月の「岩本彗
星 (C/2013 E2)」の発見が対象となりました。
日本人による過去のエドガー・ウィルソン賞の受賞歴は、次のとおりです。
2001年
宇都宮章吾 (うつのみやしょうご) さん
「宇都宮・ジョーンズ彗星 (C/2000 W1)」の発見
2002年
池谷薫 (いけやかおる) さん
「池谷・張彗星 (C/2002 C1)」の発見
村上茂樹 (むらかみしげき) さん
「スナイダー・村上彗星 (C/2002 E2)」の発見
宇都宮さん
「宇都宮彗星 (C/2002 F1)」の発見
2003年
工藤哲生 (くどうてつお) さん、藤川繁久 (ふじかわしげひさ) さん
「工藤・藤川彗星 (C/2002 X5)」の発見
2009年
板垣公一 (いたがきこういち) さん
「板垣彗星 (C/2009 E1)」の発見
2011年
池谷さん、村上さん
「池谷・村上彗星 (P/2010 V1)」の発見
▽参照
IAUC No. 9269 : THE EDGAR WILSON AWARDS 2013 (2014 Apr 30)
▽The Edgar Wilson Award Recipients
http://www.cbat.eps.harvard.edu/special/EdgarWilson1.html (英語)
▽2013 Comet Awards Announced
http://www.cfa.harvard.edu/news/2014-08 (英語)
▽国立天文台 メールニュース No.101 (2013年3月19日)
「岩本さんが新彗星を発見」
http://www.nao.ac.jp/mailnews/data/0101.html
_____________________________________________________________________
発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2014年5月9日
_____________________________________________________________________