国立天文台 メールニュース
No.124(2014年1月20日発行)アルマ望遠鏡が見た惑星系形成の現場、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.124 (2014年1月20日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■アルマ望遠鏡が見た惑星系形成の現場 ■板垣さん、コップ座方向にある銀河に超新星を発見 ■板垣さん、りゅう座方向にある銀河とおおぐま座方向にある銀河に 超新星を発見 ----------------------------------------------------------- ■アルマ望遠鏡が見た惑星系形成の現場 大阪大学、茨城大学の研究者を中心とする研究チームは、アルマ望遠鏡を用 いて、おおかみ座方向にある HD 142527 という若い星とそれを取り巻く固体 微粒子 (ちり) の円盤を観測しました。そして、惑星形成の材料となるちりが 最も濃く集まった領域の密度を測定し、この場所で惑星が作られつつある可能 性が高いことを明らかにしました。しかも、この領域は、中心の星から遠く離 れており、太陽系に例えると太陽から海王星までの距離のおよそ5倍にも相当 することが分かりました。中心の星からこれほど離れた場所で惑星が形成され つつある証拠が見つかったのは、初めてのことです。 この HD 142527 については、すでに同研究チームがすばる望遠鏡を用いた 近赤外線から中間赤外線域での観測を行っており、その結果から、中心の星の すぐ近くにも円盤があり外側の円盤との間に隙間が存在することや、外側の円 盤が非対称な形をしていることが明らかにされていました。そして、これらの 特徴は、惑星の形成が原因で作られた構造だと考えられます。しかし、赤外線 は、大量のちりによって吸収・散乱されてしまうことから、ちりが濃い領域を 奥深くまで見通すことができず、詳しい観測が難しくなります。その点、ミリ 波やサブミリ波はちりに遮られにくく、ちりが濃い領域の内部まで見通すこと ができます。さらにアルマ望遠鏡を用いることで細かい構造を見分けることも 可能になりました。 アルマ望遠鏡による観測の結果、円盤のちりの濃い領域には新たな惑星の誕 生に十分な大量の物資が存在し、しかも、中心の星から遠く離れた場所で惑星 の形成が起こっている可能性が高いことが分かりました。これは、これまで太 陽系のように中心の星に近い場所で惑星が作られることを想定した惑星形成理 論を覆すもので、宇宙における惑星系形成の多様性を示していると言えます。 ▽アルマ望遠鏡が見つけた巨大惑星系形成の現場 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201401177290.html ▽すばる、新しい形の円盤を発見 ~多波長赤外線でみる惑星誕生現場の姿~ http://subarutelescope.org/Pressrelease/2006/06/27/j_index.html ■板垣さん、コップ座方向にある銀河に超新星を発見 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、2013年12月28日 (世 界時) の観測から、コップ座方向にある NGC 3693 銀河に17.4等の超新星を発 見しました。この発見は、国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星 は「2013hu」と命名されました。この天体の発見日時と位置は次のとおり。 ・発見日時 2013年12月28.858日 = 12月28日20時36分 (世界時) ・発見位置 赤経 11時 28分 7.86秒 赤緯 -13度 11分 33.6秒 (2000年分点) 板垣さんによる超新星の発見は、2013年で10個目、通算では90個の発見 (独 立発見を含む) となりました。 ▽参照 CBET No. 3776 : SUPERNOVA 2013hu IN NGC 3693 = PSN J11280786-1311336 (2014 Jan 11) ▽日本人が発見した超新星一覧 http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html ■板垣さん、りゅう座方向にある銀河とおおぐま座方向にある銀河に 超新星を発見 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、2014年1月11日 (世 界時) の観測から、りゅう座方向にある NGC 6667 銀河に16.8等の超新星を発 見しました。この発見は、国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星 は「2014F」と命名されました。この天体の発見日時と位置は次のとおり。 ・発見日時 2014年1月11.871日 = 1月11日20時54分 (世界時) ・発見位置 赤経 18時 30分 31.79秒 赤緯 +67度 59分 29.7秒 (2000年分点) さらに、板垣さんは、2014年1月14日 (世界時) の観測から、おおぐま座方 向にある NGC 3448 銀河に15.6等の超新星を発見しました。この発見は、国 際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2014G」と命名されまし た。この天体の発見日時と位置は次のとおり。 ・発見日時 2014年1月14.574日 = 1月14日13時47分 (世界時) ・発見位置 赤経 10時 54分 34.13秒 赤緯 +54度 17分 56.9秒 (2000年分点) 板垣さんによる超新星の発見は、2014年に入って「2014F」が1個目、 「2014G」が2個目の発見、通算では92個の超新星を発見 (独立発見を含む) しています。 なお、「2014G」は米国の Patrick Wiggins さんが独立発見しています。 ▽参照 CBET No. 3785 : SUPERNOVA 2014F IN NGC 6667 = PSN J18303179+6759297 (2014 Jan 17) CBET No. 3787 : SUPERNOVA 2014G IN NGC 3448 = PSN J10543413+5417569 (2014 Jan 18) ▽日本人が発見した超新星一覧 http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2014年1月20日 _____________________________________________________________________