国立天文台 メールニュース

No.120(2013年12月2日発行) 近日点通過後のアイソン彗星、ほか

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    国立天文台 メールニュース No.120  (2013年12月2日発行)
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もくじ
■近日点通過後のアイソン彗星
■板垣さん、へび座方向に新星を発見
■板垣さん、うしかい座方向にある銀河に超新星を発見
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■近日点通過後のアイソン彗星

 アイソン彗 (すい) 星 (C/2012 S1 (ISON) ) は、11月29日早朝 (日本時間、
以下同じ) に太陽に最も接近 (近日点を通過) しました。
 アイソン彗星は、近日点通過前の11月27日頃には、太陽に近すぎるため地上
からの観測は難しくなりましたが、SOHO (注) 等の太陽観測衛星でその姿が捉
えられていました。
 近日点に近づくにつれてその光度を増し、一時はマイナス2等級の明るさに
なっていたアイソン彗星ですが、近日点通過後にはその姿が極めて淡くなって
しまいました。SOHOの画像を見ると、11月28日19時前後からアイソン彗星が
遮光板に隠れる直前の11月29日1時頃までの間に、彗星の核が暗くなったのが
わかります。このことから、この頃に核の崩壊が始まって大きめの破片に分裂
し、近日点でかなりとけて (昇華して) しまったと考えられます。
 近日点通過直後、遮光板から姿を現した彗星の尾の形状はV字型になってい
ました。このV字型の上縁は彗星の核が崩壊し始めた頃に放出された塵 (ちり) 
が並ぶ尾、下縁は彗星の軌道上に残された大きめの塵または崩壊の際の破片群
であると説明できます。その後、V字型の上縁の塵は、しだいに中央の集光部
から遠ざかるように拡散し、下縁も淡くなっています。もし、彗星核が活動を
続けている場合は、近日点通過後に放出された塵の尾が、V字の上縁よりもさ
らに上側に伸びるはずですが、そのような兆候はまったくありませんでした。
 したがって、近日点通過後は、彗星の核 (あるいは破片群) からの新たな塵
の供給はないと考えられ、当初予想されていたような長く明るい尾が見られる
ことはないと言えます。近日点通過後に見えていた尾も、12月5日頃には約200
平方度に拡散してしまうことから、その輝度は天の川の最も濃い部分の5分の1
以下と見積もられます。これは、天の川がはっきり見える暗い空でも、ようや
く視認できるかどうかの明るさで、日の出前の薄明の空では、地上からも航空
機からも肉眼での確認は期待できないと思われます。

 注:欧州宇宙機関 (ESA) と米国航空宇宙局 (NASA) が1995年に打ち上げた
  太陽・太陽圏観測衛星 (Solar and Heliospheric Observatory, SOHO)。
  SOHOに搭載された観測装置の一つである広視野分光コロナグラフ (Large 
  Angle and Spectrometric Coronagraph, LASCO) には、中央に太陽の光球
  の明るさを遮る遮光板が設けられていて、このLASCOを用いて、太陽に
  接近する彗星が過去に多数観測されている。

 ▽アイソン彗星:アイソン彗星の状況と今後の見通し (2013年11月30日)
  http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2013/ison.html

 ▽太陽・太陽圏観測衛星 SOHO (英語)
  http://sohowww.nascom.nasa.gov/home.html

 ▽参照
  CBET No. 3731 : COMET C/2012 S1 (ISON) (2013 Dec 1)


■板垣さん、へび座方向に新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、11月24日 (世界時) 
の観測から、へび座方向に12.3等の新星らしき天体を発見しました。この天体
の板垣さんによる発見日時、位置は次のとおりです。

 ・発見日時 2013年11月24.384日 = 11月24日9時13分 (世界時)
 ・発見位置 赤経 18時 9分 3.46秒
       赤緯 -11度 12分 34.5秒 (2000年分点)

 発見後に行われた多くの観測の結果、その特徴から新星であることが確定
され、「へび座新星2013」と名付けられました。

 ▽参照
  IAUC No. 9264 : V556 SERPENTIS = NOVA SER 2013 = PNV J18090346-1112345
    (2013 Nov 27)
  CBET No. 3724 : NOVA SERPENTIS 2013 = PNV J18090346-1112345
    (2013 Nov 28)


■板垣さん、うしかい座方向にある銀河に超新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、11月16日 (世界時) 
の観測から、うしかい座方向にある NGC 5557銀河に15.3等の超新星を発見し
ました。この発見は、国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は
「2013gn」と命名されました。この天体の発見日時と位置は次のとおり。

 ・発見日時 2013年11月16.830日 = 11月16日19時55分 (世界時)
 ・発見位置 赤経 14時 18分 28.50秒
       赤緯 +36度 30分 24.4秒 (2000年分点)

 板垣さんは、11月8日 (世界時) にも超新星を発見しており、今回の発見は
今年6個目、通算で86個目 (独立発見を含む) となりました。

 ▽参照
  CBET No. 3727 : SUPERNOVA 2013gn IN NGC 5557 = PSN J14182850+3630244
    (2013 Nov 29)

 ▽日本人が発見した超新星一覧
  http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2013年12月2日
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