国立天文台 メールニュース
No.114(2013年8月27日発行)塵粒にふわりと包まれた惑星誕生の現場、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.114 (2013年8月27日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■塵粒にふわりと包まれた惑星誕生の現場 ■第15回 自然科学研究機構シンポジウム ■東京国際科学フェスティバル開催 ----------------------------------------------------------- ■塵粒にふわりと包まれた惑星誕生の現場 近年、私たちの太陽系外にも多くの惑星系が発見されています。惑星は、恒 星を取り巻く原始惑星系円盤の中で作られるとされていますが、この円盤の中 でどのようなプロセスで作られ成長するのか、詳しくは明らかになっていませ ん。この原始惑星系円盤は、分子雲中のガスや塵 (ちり) が、10万年から100万 年かけて円盤状に降り積もり形成されます。そして円盤の中では、赤道面に集 まった塵同士が衝突して成長し、惑星の元が作られます。 台湾中央研究院や国立天文台の研究者を中心とする研究チームは、すばる望 遠鏡に搭載された惑星・円盤探査用赤外線カメラ HiCIAO (ハイチャオ) を用い て、おうし座RY星の周りの原始惑星系円盤を観測しました。おうし座RY星は、 年齢約50万年、太陽の2倍程度の質量の若い恒星で、電波などの観測から、惑 星系が成長しつつあると考えられていました。 今回の観測で検出された円盤からの赤外線の分布は、円盤の赤道面からずれ ていて、これまでHiCIAOで観測された多くの原始惑星系円盤の観測でも見られ なかった結果でした。研究チームは、さまざまな厚みと形状の円盤構造につい てのシミュレーションを行い、観測結果と比較した結果、今回観測された赤外 線の分布は、円盤の上に広がる密度の小さな塵の層によって散乱されたものだ と考えました。おうし座RY星のような若い星では、原始惑星系円盤が作られる 際に降り積もった塵が、円盤の上層に残っているためだと考えられます。 今回の研究は、原始惑星系円盤の立体構造の詳細を世界で初めて明らかにし たものです。このような原始惑星系円盤の立体構造を探ることは、系外惑星の 多様性の原因を理解する手がかりになると期待できます。 この観測は、すばる望遠鏡の戦略枠プロジェクトSEEDS (シーズ:Strategic Explorations of Exoplanets and Disks with Subaru) の一環として行われた ものです。 ▽塵粒にふわりと包まれた惑星誕生の現場 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2013/08/22/j_index.html ■第15回 自然科学研究機構シンポジウム 第15回 自然科学研究機構シンポジウムを、来る10月14日に開催いたします。 テーマは、「アストロバイオロジー (宇宙における生命)」です。 近年、多くの太陽系外惑星が発見されています。そして、近い将来、その中 に生命が存在する可能性のある惑星が発見されると予想されます。このような 状況を受けて、宇宙物理学、生物学、地球物理学、化学などを融合した地球外 生命の探査、生命の発生の可能性、生命の起源などを研究する「アストロバイ オロジー」という分野ができつつあります。 自然科学研究機構では、「多彩な地球の生命-宇宙に仲間はいるのか-」 (2010年10月)、「宇宙と生命-宇宙に仲間はいるのかII-」 (2011年6月)、 「知的生命の可能性-宇宙に仲間はいるのかIII-」 (2012年3月)、と過去3回 にわたって「宇宙と生命」をテーマにシンポジウムを開催してきました。 今回も、多彩な講師陣による講演とパネルディスカッションから、宇宙にお ける生命に迫ります。 開催概要 テーマ:アストロバイオロジー (宇宙における生命) ―天文・地球・生物・物理・化学の最前線研究者が熱く語る― 日時 :2013年10月14日 (月・祝) 10:00-16:30 会場 :【東京会場】学術総合センター 一橋講堂 (東京都千代田区一ツ橋2-1-2) 【中継会場 (愛知会場)】岡崎コンファレンスセンター (愛知県岡崎市明大寺町字伝馬8-1) 主催 :大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 参加費:無料 プログラム:自然科学研究機構シンポジウムのウェブサイトをご覧ください 参加方法:東京会場は事前の参加申し込みが必要です 参加申し込み方法は、自然科学研究機構シンポジウムのウェブ サイトをご覧ください 中継会場 (愛知会場) は参加申し込み不要、当日自由にご参加い ただけます その他:Ustreamでのライブ配信を予定しています ▽第15回 自然科学研究機構シンポジウム (自然科学研究機構) http://www.nins.jp/public_information/sympo15.php ■東京国際科学フェスティバル開催 今年で第5回を迎える東京国際科学フェスティバル (略称TISF) が、「科学を 文化に」をテーマに、8月17日から10月14日までのおよそ2カ月間、東京都内お よび周辺地域で開催中です。 この開催期間中は、各所でさまざまな科学のイベントが行われますので、興 味を持ったイベントにぜひ足を運んでください。開催イベントについての詳細 は、東京国際科学フェスティバルのウェブサイトをご覧ください。 ▽第5回東京国際科学フェスティバル・TISF2013 http://tokyo.sci-fest.net/ _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2013年8月27日 _____________________________________________________________________