国立天文台 メールニュース
No.113(2013年8月16日発行)すばる望遠鏡、「第二の木星」の直接撮影に成功、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.113 (2013年8月16日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■すばる望遠鏡、「第二の木星」の直接撮影に成功 ■超新星爆発の衝撃波の膨張速度を精密に計測 ■板垣さん、いるか座方向に新星を発見 ----------------------------------------------------------- ■すばる望遠鏡、「第二の木星」の直接撮影に成功 東京工業大学、東京大学、国立天文台の研究者を中心とする研究チームは、 すばる望遠鏡を用いた観測で、おとめ座方向にある太陽に似た恒星「GJ 504」 を周回する惑星「GJ 504 b」を直接撮像法で発見しました。この天体は、これ まで直接撮像された惑星の中で最も暗く最も低温であることが分かっています。 この観測は、すばる望遠鏡の戦略枠プロジェクトSEEDS (シーズ:Strategic Explorations of Exoplanets and Disks with Subaru) の一環として行われた ものです。SEEDSは、惑星とその誕生現場を直接観測により系統的に探査する プロジェクトで、2009年よりおよそ5年をかけて観測が続けられてきました。 今回直接撮像法での検出に成功した GJ 504 b は、7回にわたって観測され、 主星の GJ 504 に無関係な背景の星ではないこと、そして、主星に対して軌道 運動をしていることが確認されました。主星から惑星までの距離は44天文単位 で、太陽系の冥王星軌道に相当する軌道です。さらに、GJ 504 b の明るさか ら、質量は木星の3ないし5.5倍程度と推定されました。このことから、この GJ 504 b は、明らかに恒星や褐色矮 (わい) 星ではない、巨大惑星であり 「第二の木星」とも言える天体です。 このような巨大惑星が、どのようにして形成され成長したのかを結論づける ことは、現時点では困難ですが、これまでの惑星形成論に大きな一石を投ずる ことになったのは確かなようです。 ▽すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功 http://www.subarutelescope.org/Pressrelease/2013/08/04/j_index.html ■超新星爆発の衝撃波の膨張速度を精密に計測 大質量星の寿命が尽きる際に起こる超新星爆発では、膨大なエネルギーが放 出され、生じた衝撃波は周囲の星間空間の組成や物理状態に甚大な影響を及ぼ しながら膨張していきます。 慶應義塾大学の研究者を中心とする研究チームは、わし座方向にある超新星 残骸W44を2種類の電波望遠鏡を用いて観測しました。そして、この超新星爆発 で生じた衝撃波が、星間分子雲中を伝搬する際の速度を精密に計測することに 成功しました。 研究チームは、国立天文台野辺山の45メートル電波望遠鏡と、チリのアタカ マ高地にある10メートルのASTE (Atacama Submillimeter Telescope Experiment、 アタカマサブミリ波望遠鏡実験) 望遠鏡を用いて、ミリ波およびサブミリ波帯 の高温・高密度分子ガスを観測しました。観測から求められたW44の衝撃波の 膨張速度から、この超新星爆発によって星間空間へ渡された運動エネルギーを 見積もったところ、超新星爆発の総エネルギーの1割ないし3割にも達するほど 膨大であることが分かりました。これは、太陽が10億年から30億年かけて放射 するエネルギーに相当します。 さらに、局所的に、極めて大きな速度 (毎秒100キロメートル) を持つ分子 ガスも検出されました。この速度は、分子が解離されない衝撃波の限界速度 (毎秒50キロメートル) を大きく上回っています。この超高速度成分の起源は、 現在のところ全く分かっていませんが、星間分子雲中を超新星爆発の衝撃波が 通過する際に、そこにあった分子ガスに何らかの影響を及ぼしたと考えられま す。 ▽星間分子雲中を通過する超新星衝撃波の“速度計測”に成功 http://www.nro.nao.ac.jp/news/2013/keio_W44.html ▽星間分子雲中を通過する超新星衝撃波の"速度計測"に成功 「速度超過違反」ガスも発見 (慶應義塾大学) http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000ceiy8.html ■板垣さん、いるか座方向に新星を発見 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、8月14日 (世界時) の観測から、いるか座方向に6.8等という明るい新星らしき天体を発見しまし た。この天体の板垣さんによる発見日時、位置は次のとおりです。 ・発見日時 2013年8月14.584日 = 8月14日14時1分 (世界時) ・発見位置 赤経 20時 23分 30.73秒 赤緯 +20度 46分 4.1秒 (2000年分点) 発見後は多くの確認観測が行われ、その特徴から新星であることが確定さ れ、「いるか座新星2013」と名付けられました。 ▽参照 CBET No. 3628 : NOVA DELPHINI 2013 = PNV J20233073+2046041 (2013 Aug 15) _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2013年8月16日 _____________________________________________________________________