国立天文台 メールニュース

No.94 (2012年12月13日発行) 理科年表 平成25年版 刊行、ほか

_____________________________________________________________________

    国立天文台 メールニュース No.94  (2012年12月13日発行)
_____________________________________________________________________

 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報
 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。
 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。

--------------------------------------------------
もくじ
■理科年表 平成25年版 刊行
■重い恒星の巨大な惑星、すばる望遠鏡が直接観測で発見
■偏光観測で見えた惑星材料物質の成長
--------------------------------------------------


■理科年表 平成25年版 刊行

 「理科年表」(国立天文台 編) は、暦、天文、気象、物理/化学、地学、
生物、環境の7部門からなる科学全般を網羅したデータブックです。その平成
25年版が刊行されました。

 暦部では、東日本大震災による日本経緯度原点の数値改正に伴う暦データの
改訂に対応しました。また、2012年7月1日に、2009年1月1日以来3年半ぶりに
うるう秒が挿入されたこと、くしくも国際機関でうるう秒存続の是非について
議論されたことから、「閏秒 (うるう秒) とは何か」というトピックスを設定
しました。
 天文部では、2011年のノーベル物理学賞受賞テーマである「宇宙の加速膨張
の発見」についての解説、小惑星探査機「はやぶさ」によって持ち帰られた小
惑星イトカワサンプルの初期分析の成果についての解説を、トピックスとして
採り上げています。
 そのほか、物理/化学部では基礎物理定数を最新の値に更新、地学部では
「日本付近のおもな地震」の一覧の大幅増など、さまざまな改訂を行っていま
す。
 理科年表平成25年版をどうぞご利用ください。

 ▽理科年表オフィシャルサイト
  http://www.rikanenpyo.jp/


■重い恒星の巨大な惑星、すばる望遠鏡が直接観測で発見

 国立天文台を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡を用いた観測か
ら、「アンドロメダ座κ (カッパ)」星の周りを回る巨大なガス惑星を発見しま
した。
 今回発見された惑星「アンドロメダ座κ星 b」は、木星の13倍もの質量を持
つ巨大ガス惑星で、その軌道は太陽系の海王星より少し外側に相当します。主
星であるアンドロメダ座κ星は太陽質量の2.5倍と重く、また、年齢は3000万
年程度と若い星です。若い星の周りの惑星は、形成時の熱をまだ十分に持って
おり、赤外線で明るく光るために直接撮像観測のよいターゲットになります。
しかし、惑星は主星に比べて圧倒的に暗いために、通常の観測では主星の光に
埋もれてしまいます。今回の観測は、すばる望遠鏡に取り付けた高コントラス
ト撮像装置HiCIAO (ハイチャオ) を用いて行われ、主星の光をできるだけ取り
除いて周囲にあるかすかな惑星を見分けることに成功しています。
 今回の発見は、今後重い恒星の周囲での惑星形成や巨大ガス惑星の生い立ち
を解き明かす上で有用な手がかりをもたらすことでしょう。

 この観測は、すばる望遠鏡の戦略枠プロジェクトSEEDS (シーズ:Strategic 
Exploration of Exoplanets and Disks with Subaru) の一環として行われまし
た。SEEDSは惑星とその誕生現場を直接観測により系統的に探査するプロジェ
クトです。

 ▽重い恒星の巨大な惑星、すばる望遠鏡が直接観測で発見
  http://subarutelescope.org/Pressrelease/2012/11/19/j_index.html

 ▽SEEDS プロジェクト
  http://seeds.mtk.nao.ac.jp/seeds/SEEDS_Project/TOP.html


■偏光観測で見えた惑星材料物質の成長

 神戸大学、兵庫県立大学、国立天文台、埼玉大学などの研究者による国際研
究チームは、すばる望遠鏡を用いた観測から、「おうし座 UX A」星を取り囲
む原始惑星系円盤の姿を直接捉えることに成功しました。さらに、円盤中に単
純な球形ではない、比較的大きな塵 (ちり) の粒子が含まれていることを明ら
かにしました。
 若い恒星であるおうし座 UX A星の周りには、ガスと塵でできた原始惑星系
円盤が存在することが知られています。研究チームは、この円盤に含まれる塵
の分布を詳しく調べるために、近赤外線での偏光観測 (光の振動方向の偏りを
測る観測) を行いました。円盤中の塵はこれから惑星が作られる材料になるた
め、塵粒子の表面で生じる近赤外線の偏光を観測することは、惑星形成を知る
上で重要な手がかりとなります。
 観測の結果、この原始惑星系円盤が半径120天文単位まで広がっていること
や、捉えられた円盤の形や傾きなどを知ることができました。また、円盤中の
塵に比較的大きな粒子のものが含まれていることから、もともと小さな塵が円
盤中で頻繁に衝突・合体を繰り返すことで成長したと考えられます。今回の観
測結果は、惑星の材料である塵が惑星へと成長する過程を目の当たりにしてい
るものだと考えることができます。

 この観測は、すばる望遠鏡の戦略枠プロジェクトSEEDS (シーズ:Strategic 
Exploration of Exoplanets and Disks with Subaru) の一環として行われまし
た。SEEDSは惑星とその誕生現場を直接観測により系統的に探査するプロジェ
クトです。

 ▽偏光観測で見えた惑星材料物質の成長
  http://subarutelescope.org/Pressrelease/2012/11/27/j_index.html

 ▽SEEDS プロジェクト
  http://seeds.mtk.nao.ac.jp/seeds/SEEDS_Project/TOP.html


_____________________________________________________________________

発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2012年12月13日
ウェブ:http://www.nao.ac.jp/mailnews/
_____________________________________________________________________






    

このページをシェアする