国立天文台 メールニュース

No.92 (2012年11月29日発行) アルマ望遠鏡が見つけた不思議な渦巻き模様の星、ほか

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    国立天文台 メールニュース No.92  (2012年11月29日発行)
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もくじ
■アルマ望遠鏡が見つけた不思議な渦巻き模様の星
■アルマ望遠鏡で、生まれたばかりの星に新しい水分子メーザーを発見
■「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーン
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■アルマ望遠鏡が見つけた不思議な渦巻き模様の星

 欧州南天天文台 (European Southern Observatory, ESO) の研究者をはじめ
とする国際研究チームは、アルマ望遠鏡を使った観測で、ちょうこくしつ座R
星の周りに、不思議な渦巻き模様とそれを取り囲む球殻構造を同時に発見しま
した。
 ちょうこくしつ座R星は、太陽の0.8倍から8倍程度の質量を持つ年老いた星 
(赤色巨星) です。赤色巨星は大量のガスや塵 (ちり) を周囲にまき散らしてお
り、それが星を取り囲む球殻構造になることはこれまでも知られていました。
しかし、今回のような不思議な渦巻き構造が一緒に発見されたのは初めてです。
 この渦巻き構造は、ちょうこくしつ座R星から噴き出すガスが、R星の周りを
回る見えない星の重力の影響を受けた結果、形作られたと考えることができま
す。研究チームは、この渦巻き構造を説明するために連星の周りでどのように
ガスが動くかシミュレーション研究を行いましたが、その結果は今回の観測成
果とよく一致していました。
 今後、アルマ望遠鏡を用いたさらなる観測によって、星の中で作られた生命
の元となる元素がどのようにして宇宙にばらまかれたのか、また、これから赤
色巨星となる太陽の未来の姿がどのようになるのかを、明らかにできるだろう
と、研究チームは期待しています。
 この成果は、2011年9月に開始されたアルマ望遠鏡の初期科学観測から得ら
れたものです。

 ▽アルマ望遠鏡が見つけた不思議な渦巻き星
  ―新たな観測でさぐる、死にゆく星の姿
  http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201210116856.html


■アルマ望遠鏡で、生まれたばかりの星に新しい水分子メーザーを発見

 国立天文台水沢VLBI観測所の研究者から成る研究チームは、アルマ望遠鏡を
用いて、オリオン座方向にあるオリオンKL (注) 中の「電波源 I (アイ)」を
観測し、高エネルギー状態にある水分子から放出されるメーザーをこの天体か
ら検出することに初めて成功しました。これまで、高エネルギー状態の水分子
メーザーは、年老いた星からの検出例はあるものの、生まれたばかりの星から
の検出は初めてです。これは、アルマ望遠鏡が持つ高感度・高解像度の観測が
もたらした成果です。
 研究チームが国立天文台のVERAを用いてこれまでに行ったオリオンKL 電波
源 I の観測からは、電波源 I 周囲の高温のガス円盤や高速ジェットから、低
エネルギー状態にある水分子メーザーや、一酸化ケイ素分子メーザーが放出さ
れていることが分かっています。これらのデータと今回アルマ望遠鏡で検出さ
れた高エネルギー状態にある水分子メーザーを比較すると、いずれも同じ速度
で運動するガスから放出されていることが明らかになりました。つまり、高エ
ネルギー状態の水分子メーザーも、低エネルギー状態の水分子メーザーや一酸
化ケイ素分子メーザーと同様、生まれたばかりの星の周りにある高温のガス円
盤や高速ジェットから放射されていると考えられます。このことから、高温ガ
スについて知るための新たな観測手段を手に入れたことになります。
 アルマ望遠鏡が完成すれば、解像度は今回の50倍に達します。その暁には、
オリオンKL 電波源 I に付随するガス円盤、高速ジェットの姿を詳細に描くこ
とが可能になり、オリオンKLでの重い星の誕生のメカニズムが説き明かされる
ことでしょう。

 注:オリオン大星雲 (M42) の中心に位置する赤外線を強く放射する星雲。
   「クライマン・ロー星雲」あるいは「KL星雲」とも呼ばれる。太陽系か
   ら約1400光年という近距離にある代表的な大質量星の形成領域である。

 ▽アルマ望遠鏡でオリオン星雲中に新しい水分子メーザーを発見
  ―生まれたばかりの星に迫る新しい観測手段の獲得
  http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201210236888.html


■「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーン

 毎年12月13日から14日頃を中心に、三大流星群の一つである「ふたご座流星
群」の出現が活発になります。
 今年のふたご座流星群の出現の極大は12月14日の午前中 (日本時間) と予想
されており、13日20時頃から翌14日明け方にかけて、流星を最も多く見ること
ができると期待されています。また、極大前後も数日間にわたって普段より多
くの流星が出現するでしょう。今年は12月13日が新月のため、月明かりに邪魔
されることがなく、良い条件で観察ができます。
 国立天文台は、できるだけ多くの方に夜空を眺める機会を持っていただくた
め、このふたご座流星群を観察対象とする「ふたご座流星群を眺めよう」キャ
ンペーンを次のとおり行います。

 観察期間:12月12日 (水) 夜より12月16日 (日) 朝まで
 報告方法:パソコンやスマートフォン、携帯電話を使いキャンペーンページ
      から観察結果を報告
 報告内容:観察日時、観察時間、何個の流れ星を見ることができたか等
 その他:報告されたデータは自動集計し、10分おきに速報として掲載します

 観察方法や、ふたご座流星群の流星かどうかの見分け方等を、キャンペーン
ページにて詳しく解説していますので、そちらを参考に観察してください。従
来の携帯電話 (フィーチャーフォン) からも参加可能です。これまで流れ星を
眺めたことがない方も、ぜひお気軽にご参加ください。参加者には、パソコン
や携帯電話の壁紙画像のプレゼントがあります。

 ▽「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーン
  http://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20121212-geminids/
  http://naojcamp.nao.ac.jp/i/phenomena/20121212-geminids/ (携帯電話用)


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2012年11月29日
ウェブ:http://www.nao.ac.jp/mailnews/
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