国立天文台 メールニュース

No.84 (2012年8月22日発行) 超新星爆発の形、実はでこぼこ?、ほか

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    国立天文台 メールニュース No.84  (2012年8月22日発行)
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もくじ
■超新星爆発の形、実はでこぼこ?
■つながろう七夕、よみがえれ天の川―伝統的七夕の夜にライトダウンを
■藤川さん、いっかくじゅう座方向に新星を発見
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■超新星爆発の形、実はでこぼこ?

 国立天文台、広島大学、東京大学などの研究チームは、すばる望遠鏡を用い
た観測から、大質量星が一生の最期に起こす「超新星爆発」の3次元構造を求
め、その形がでこぼこしていることを明らかにしました。この研究は、超新星
爆発の形状を探る手段を新たに開くとともに、超新星爆発のメカニズムの謎を
解明する手がかりとなることが期待されます。
 太陽質量の8倍以上という大質量星は、その一生の最期に超新星爆発と呼ば
れる大爆発を起こし、その星の中で生成された重元素を宇宙空間にばらまきま
す。現在の宇宙に存在するさまざまな元素は、多数の超新星爆発からもたらさ
れたと考えられています。近年の数値シミュレーションからは、超新星爆発の
形状は球形にはならないという結果にたどり着いていますが、その理由や爆発
の詳細なメカニズムは分かっていません。
 研究チームは、2009年に出現した2つの超新星について偏光観測を行い、その
観測結果から、爆発の形がでこぼこした構造を持つことを明らかにしました。
同研究チームは、過去にもすばる望遠鏡を用いた超新星の偏光観測に成功して
おり、それらについても同じ特徴が見て取れました。
 これまで、超新星残骸の観測から超新星爆発の3次元構造を類推した研究はあ
りましたが、今回のように、いつ起こるか予測できない超新星爆発を捉えた観
測は、非常に画期的なものです。

 ▽超新星爆発の形、実はでこぼこ?
  ―すばる望遠鏡で迫る超新星爆発のメカニズム―
   http://subarutelescope.org/Pressrelease/2012/08/02/j_index.html


■つながろう七夕、よみがえれ天の川―伝統的七夕の夜にライトダウンを

 伝統的七夕の夜に明かりを消して、暗くなった夜空に輝く天の川を見上げよ
う―このような呼びかけ「伝統的七夕ライトダウン」キャンペーンが、昨年か
ら始まっています。
 伝統的七夕ライトダウン2012推進委員会は、今年は8月24日にあたる伝統的
七夕 (注) の日を中心に、このキャンペーン期間 (8月18日から26日まで) の夜
間に、照明を消して暗くなった夜空を見上げようと呼びかけています。スロー
ガンは「つながろう七夕、よみがえれ天の川」です。昨年来、節電への意識の
高まりとともに、夜間照明のあり方や生活スタイルのあり方への関心も高まっ
ています。現代社会において夜間照明は欠かせないものですが、せめて一時、
夜を本来の暗い状態に近付けて頭上に見える七夕の天の川を取り戻そうと、
キャンペーンでは呼びかけています。
 今年の伝統的七夕にあたる8月24日の夜は、東京タワー、名古屋テレビ塔、
京都タワー、神戸ポートタワー、福岡タワー、といった各地のタワーもこの
キャンペーンに賛同し、通常よりも早く消灯を行う予定です。夜空には、七夕
の織姫星 (おりひめぼし) と彦星 (ひこぼし)、そして上弦の月が輝きます。月
が西の空に傾く頃、ライトダウンで暗くなった夜空に天の川がよみがえる光景
を、全国各地に広げたいものです。

 注:二十四節気の処暑を含む日か、それよりも前で処暑に最も近い朔 (さく) 
   の瞬間を含む日から数えて7日目としている。いわゆる旧暦などの太陰太
   陽暦の7月7日に近い日となる。2012年は8月24日が伝統的七夕の日。

 ▽伝統的七夕ライトダウン2012 (伝統的七夕ライトダウン2012推進委員会)
  http://7min.darksky.jp/

 ▽七夕について教えて?
  国立天文台 「よくある質問」の答え
  http://www.nao.ac.jp/faq/a0309.html


■藤川さん、いっかくじゅう座方向に新星を発見

 香川県観音寺市の藤川繁久 (ふじかわしげひさ) さんが、8月9日 (世界時) の
観測から、いっかくじゅう座方向に9.4等の新星を発見しました。藤川さんに
よる発見日時、位置は次のとおりです。

 ・発見日時 2012年8月9.8048日 = 8月9日19時19分 (世界時)
 ・発見位置 赤経 6時 39分 38.74秒
       赤緯 +5度 53分 52.0秒 (2000年分点)

 その後の分光観測などから、この天体は、明るさの極大を過ぎた古典的新星 
(注1) の特徴を示していることが分かりました。

 藤川さんは、1969年の藤川彗星 (C/1969 P1) をはじめ、これまで多くの彗星
を発見しているベテランの彗星観測者で、工藤・藤川彗星 (C/2002 X5) の独立
発見の功績から2003年にエドガー・ウィルソン賞 (注2) を受賞していますが、
新星の発見は、藤川さんにとって今回が初めてとなります。

 注1:スペクトル線で水素のバルマー線に強い輝線がみられる新星を古典的
   新星と呼ぶ
 注2:1998年に制定され、新彗星を発見したアマチュア天体観測家だけに贈
   られる賞

 ▽CBET No. 3202 : NOVA MONOCEROTIS 2012 = PNV J06393874+0553520
    (2012 Aug 17)

 ▽国立天文台・天文ニュース (652)
  工藤さん、藤川さんエドガー・ウィルソン賞を受賞 (2003年7月10日)


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2012年8月22日
ウェブ:http://www.nao.ac.jp/mailnews/
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