国立天文台 メールニュース
No.65 (2011年12月22日発行) 129.1億光年のかなた、宇宙の“夜明け”に銀河を発見、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.65 (2011年12月22日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■129.1億光年のかなた、宇宙の“夜明け”に銀河を発見 ■すばる望遠鏡、オリオン座KL星雲を照らすエネルギー源を突き止める ■板垣さん、おとめ座方向にある銀河に超新星を発見 ----------------------------------------------------------- ■129.1億光年のかなた、宇宙の“夜明け”に銀河を発見 東京大学、国立天文台などの研究者から成る研究チームは、ビッグバン後わ ずか7.5億年の誕生して間もない宇宙に、きわめて活発な星形成が起こっている 銀河 GN-108036 を発見しました。 研究チームは、すばる望遠鏡に搭載したすばる主焦点カメラ Suprime-Cam を 用いて銀河を観測し、その中からさらに天体の色を手掛かりに遠方の銀河を絞 り込みました。これらの遠方銀河について、米国のケック望遠鏡を用いた詳細 な分光観測を行い、その結果、GN-108036 が宇宙の“夜明け”と言える129億年 以上前にある銀河であることが明らかになったのです。この銀河の距離 (129.1 億光年) は、距離が正確に求められた銀河の中では、最も遠いものとなります。 さらに、すばる望遠鏡など複数の望遠鏡による赤外線の観測データから、こ の銀河では、同時代の宇宙で見つかっている他の銀河とは比べものにならない ほどたいへん活発な星形成が起こっていることも明らかになりました。ようや く銀河で星が作られるようになる生まれて間もない宇宙で、これほど活発な星 形成がある銀河が見つかったことは、たいへん驚くべきことです。 ▽129.1億光年の彼方、宇宙の「夜明け」にきらめく銀河を発見 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/12/15/j_index.html ▽すばる望遠鏡 http://subarutelescope.org/j_index.html ■すばる望遠鏡、オリオン座KL星雲を照らすエネルギー源を突き止める 日本スペースガード協会、国立天文台の研究者らを中心とする研究チームは、 オリオン座のオリオン大星雲 (M42) の中にあるKL (Kleinmann-Low) 星雲を輝 かせている真のエネルギー源の位置を、すばる望遠鏡を用いた中間赤外線によ る観測で突き止めました。 KL星雲は、オリオン大星雲の中にある有名な赤外線星雲で、その中心には 「IRc2」という赤外線源があります。これは太陽の約30倍の質量を持つ原始星 であり、これがKL星雲を輝かせるエネルギーの源だと考えられてきました。一 方、ほぼ同じ位置には重い星が誕生していることを示す「電波源I」も発見され ていて、当初はこの電波源IはIRc2と同じ原始星であると考えられていましたが、 近年の観測では位置がわずかに異なることから、別の天体であることがわかっ ています。 研究チームは、すばる望遠鏡に取り付けた中間赤外線撮像分光装置 COMICS を用いてKL星雲を詳細に観測し、星雲内部の温度分布を調べたところ、IRc2で はなく電波源Iの位置に温度が最も高い部分があることを発見しました。このこ とは、原始星がこの位置にあることを意味します。また、電波源Iの原始星から IRc2に向けてエネルギーの流れがあることも明らかになりました。 さらに、KL星雲内の減光量の分布を調べると、IRc2付近で減光量が大きくな ることがわかりました。つまり、IRc2の位置に見えている赤外線源は、IRc2そ のものが発しているものではなく、近くの他の赤外線源を反射して輝いている ものと考えられます。その源は、電波源Iの位置にある原始星であると考えるこ とができます。 KL星雲については、その放射状の不思議な構造や、電波源Iの位置にある埋も れた原始星についてなど、まだ多くの謎がありますが、今回の発見により新た な知見が得られたと言えるでしょう。 ▽すばる望遠鏡、オリオン座 KL 星雲を照らすエネルギー源を突き止める http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/12/06/j_index.html ▽すばる望遠鏡 http://subarutelescope.org/j_index.html ■板垣さん、おとめ座方向にある銀河に超新星を発見 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、12月9日 (世界時、 以下同じ) の観測から、おとめ座方向にある NGC 4984 銀河の中に12.7等の 超新星らしき天体を発見しました。この発見は、国際天文学連合電報中央局に 報告され、この超新星は「2011iy」と命名されました。 ・発見日時 2011年12月9.856日 = 12月9日20時33分 (世界時) ・発見位置 赤経 13時 8分 58.39秒 赤緯 -15度 31分 4.1秒 (2000年分点) 板垣さんによる超新星の発見は、11月26日の「2011im」の発見に続き、今年 に入ってから9個目、通算では75個目 (独立発見を含む) となりました。 ▽参照 CBET No. 2943 : SUPERNOVA 2011iy IN NGC 4984 = PSN J13085839-1531041 (2011 Dec 15) ▽日本人が発見した超新星一覧 http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2011年12月22日 _____________________________________________________________________