国立天文台 メールニュース

No.59 (2011年10月7日発行) すばる望遠鏡、最遠方の超新星を続々と発見、ほか

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    国立天文台 メールニュース No.59  (2011年10月7日発行)
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もくじ
■すばる望遠鏡、最遠方の超新星を続々と発見
■すばる望遠鏡、125億光年かなたの銀河に炭素を発見
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■すばる望遠鏡、最遠方の超新星を続々と発見

 日本の京都大学、東京大学、およびイスラエルと米国の研究機関の研究者か
ら成る研究チームは、すばる望遠鏡を用いた観測で100億光年以上遠方の銀河
にIa型超新星 (注) を新たに10個発見しました。そのうちの一つは、これまで
に知られている中で最も遠いIa型超新星でした。これは、すばる望遠鏡の遠方
天体の探索能力の高さを示すものです。
 Ia型超新星は、爆発後の絶対光度 (本来の明るさ) の最大値が明らかになっ
ているため、母銀河の距離測定の手段として用いられます。また、その光度は
非常に明るいために、遠方銀河の距離測定にも有効です。しかし、いくら本来
の明るさが明るくても遠方では見かけ上暗くなってしまうため、その探索は難
しくなります。口径8.2メートルの集光力と結像性能、そして広視野を誇る主
焦点カメラを持つすばる望遠鏡は、こういった遠方銀河の超新星探索に能力を
発揮します。
 今回、研究チームは、かみのけ座方向にある「すばるディープフィールド」
と呼ばれる領域で超新星を探索し、150個にもおよぶ超新星を発見しました。
そのうちの10個は100億光年以上遠方にあるIa型超新星でした。
 研究チームはこれらの新たなサンプルを用いて、Ia型超新星の発生頻度の進
化や、Ia型超新星の母天体についての新たな知見を引き出しました。

 注:超新星とは、星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさ
   で輝く現象。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星 (はく
   しょくわいせい) が何らかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、
   太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するも
   のがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、
   II型と、観測的に分類されている。

 ▽すばる望遠鏡、最遠方の超新星を続々発見
  http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/10/03/j_index.html


■すばる望遠鏡、125億光年かなたの銀河に炭素を発見

 愛媛大学、京都大学の研究者などから成る研究チームは、すばる望遠鏡の微
光天体分光撮像装置 (FOCAS) を用いた可視光分光観測によって、125億光年か
なたにある最遠方の電波銀河 TN J0924-2201 から放射された炭素輝線の検出
に、世界で初めて成功しました。
 この天体は過去にも何度か観測されていましたが、元素量の推定に必要とな
る水素・ヘリウム以外の元素の輝線はとても弱いために検出できていませんで
した。今回のすばる望遠鏡による分光観測で、初めてこの天体からの炭素輝線
の検出に成功したのです。この電波銀河は、宇宙誕生後10億年頃にできた天体
だと考えられていますが、今回の発見で、この頃の宇宙の元素量を推測するこ
とができるようになりました。
 今回検出された炭素輝線を調査したところ、驚くべきことに、宇宙誕生後10
億年頃の電波銀河にはすでに炭素元素が豊富に存在していたことがわかりまし
た。元素が宇宙の歴史の中でいつ、どのように生成されてきたのかという問題
は、いまだに解明されていません。今回の結果は宇宙の化学進化を理解する上
で非常に重要な成果であるとともに、生命の基本構成元素である炭素がいつ生
成されたのかを知る手掛かりになるかもしれません。

 ▽すばる望遠鏡、125 億光年彼方の銀河に炭素を発見
  ~ 宇宙における炭素誕生の謎に迫る ~
  http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/10/05/j_index.html


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2011年10月7日

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