さそり座δ(デルタ)星の掩蔽(2022年7月)
さそり座の頭の星が月に隠される「星食」
7月10日の夜、南西の空で、さそり座の頭部にあるδ(デルタ)星(2等星)が月に隠される現象が起こります。このように、地球の周りを公転する月が手前を通り過ぎ、天体を隠す現象を、月による「掩蔽(えんぺい)」あるいは「星食」と言います。多くの暗い星まで考えると、夜空ではいつも何かしらの星の掩蔽が起こっていると言えますが、比較的目立つ明るい恒星で起きる現象は、観察のチャンスです。恒星が月縁に入り込む瞬間(潜入)や、月縁から出てくる瞬間(出現)に注目してみましょう。
上弦から満月に向かう月齢11の月は明るいですが、潜入は月の光っていない縁(暗縁)で起きるので、比較的見やすいでしょう。一方、光っている縁(明縁)からの出現は、恒星と月との輝度差(明るさの差)が大きく、観察は難しいかもしれません。望遠鏡や双眼鏡があれば、拡大して観察してみるとわかりやすいでしょう。
潜入(さそり座δ星の高度) | 出現(さそり座δ星の高度) | |
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札幌 | 22時07分34秒(19.9度) | 23時20分48秒(12.5度) |
仙台 | 22時11分41秒(24.1度) | 23時26分36秒(15.5度) |
東京 | 22時12分37秒(26.7度) | 23時28分13秒(17.8度) |
京都 | 22時05分54秒(29.2度) | 23時22分55秒(21.2度) |
福岡 | 21時57分18秒(32.4度) | 23時15分09秒(25.9度) |
那覇 | 22時02分33秒(39.9度) | 23時14分11秒(33.5度) |
星食は、天球上の月の通り道(白道)が近い、黄道付近の恒星でしばしば起こります。さそり座δ星の食は、今年5月17日の深夜にも起こりましたが、その時は満月直後で月のほぼ全面が光っているため、まぶしすぎて恒星を見つけるのは難しかったかもしれません。
明るさの変わるさそり座δ星
さそり座δ星は、2.3等から1.6等程度の範囲で不規則かつ急激に明るさが変わる変光星です。これは、高速で回転する恒星から放出されたガスが、しばしば恒星の赤道周囲に円盤を作ることで光度が変化するためとみられています。まれに1等台の半ばまで明るくなると、さそり座の星の印象が変わって感じられるほどです。
(参照)暦計算室ウェブサイト:「今日のほしぞら」では、代表的な都市の星空の様子(惑星や星座の見え方)を簡単に調べることができます。「暦象年表」の「恒星」の項では、恒星の出入り時刻や高度・方位などの位置を詳しく調べることもできます。