明け方の空で輝く金星(2022年3月)

金星が西方最大離角
1月から明け方の空に見えている金星が、3月20日に西方最大離角となります。
最大離角とは、地球よりも内側の軌道を公転している内惑星が、地球からの見かけ上太陽から最も離れることを言います。内惑星のひとつである金星は太陽から大きく離れた方向には現れません。そのため、金星が真夜中の空に見えることはなく、日の入り後の西の空、あるいは日の出前の東の空に見えるのです。西方最大離角の頃の金星は、「明けの明星」として見えています。
今月の金星は、2月後半に約25度(東京での日の出時)の高度に昇ったのをピークに、わずかに高度を下げながら日の出前の南東の空で輝いています。一般的には、最大離角の前後は金星の高度が高くなり、最も目につきやすくなると言えます。しかし、太陽系天体の高度が高くなる条件(春の夕方、秋の明け方)で起こる最大離角では金星の高度は40度にも達しますが、春の明け方にはさほど高く上がりません。こうした変化は、地球の自転軸が黄道面(地球の公転面)に対して傾いていることで生じます。
地球の隣の2惑星が並ぶ

金星の輝く明け方の空に、今年の終盤に主役となる火星が見えています。南東の方角で日の出時の高度を徐々に上げていく火星は、金星とすれ違うように移動していき、16日には約4度の離角(注)で並んで見えます。見た目でこそ近くに見えていますが、地球の一つ内側を回る金星と、一つ外側を回る火星、地球の両隣の2惑星には、この時1億9千万キロメートル近い奥行きの違いがあるのです。
この日の火星の等級は1.2等。マイナス4.5等と大変明るく輝く金星とは190倍もの明るさの差があり、色合いも大きく異なります。薄明で空が明るくなるにつれて火星が肉眼で見えづらくなった場合には、双眼鏡や小さな望遠鏡を使うと見えやすくなります。
地平線近くには、土星も現れています。3月末から4月上旬には火星、金星と近づいていくので、毎日の位置の変化にも注目してみていきましょう。
- (注)離角:観測点から見て二つの天体がどのくらい離れているかを表す角度。角距離。約4度は、月の視直径(見かけの直径)の8倍程度。 本文へ戻る
(参照)暦計算室ウェブサイト:「今日のほしぞら」では、代表的な都市の星空の様子(惑星や星座の見え方)を簡単に調べることができます。「こよみの計算」では、太陽や月、惑星の出入りの時刻や方位などを調べることができます。「こよみ用語解説」の「天象」の項では、最大離角、衝、合、留などの惑星現象の用語について解説しています。