昼間の金星食と、月と金星の接近(2021年11月)

11月8日、夕方の空で月が金星に接近
夕方、日の入りからしばらく時間が経つと、南西の低い空に金星が輝き始めます。10月30日に東方最大離角となった金星は、夕方の南西の空で見ごろとなっています。11月8日夕方は、その金星に月が接近して見られます。この日の昼間には、金星が月に隠される金星食が起こります(金星食については後述)。食が終わって月の後ろから出てきたばかりの金星が、夕方の空で月と並んで見られるのです。月は比較的明るいため、日の入りの頃にはすでに見えていることと思います。そのすぐ右下側に注目すると、空が暗くなるにつれて金星が見えてくるでしょう。
月と金星との距離は、時間とともに少しずつ離れていきます。地平線に沈むまでの短い時間ですが、じっくりと観察するとその様子もわかることでしょう。印象的な光景となりそうですので、観察してみてはいかがでしょうか。
昼間に起こる金星食

金星食は、月が手前を通ることで金星を隠す現象です。月と金星は約1カ月ごとに繰り返し近づいて見られますが、地上から見る月の通り道と金星の通り道がずれているため、金星食はなかなか起こりません。また起こる場合も観察できる地域が限られますので、珍しい現象と言えます。今回の金星食は、国内では九州の一部や沖縄、小笠原諸島などを除いた地域で起こります。
東京では、13時46分41秒に月が金星を隠し始めます(潜入開始)。この時の金星は、月の輝いていない部分に隠されます。13時48分48秒には、金星は全て隠されてしまいますが、金星も欠けているため、これより少し前には金星が見えなくなるでしょう。
隠された金星は、14時37分50秒に月の明るい側から出現し始めます。月から金星全体が完全に出現するのは14時40分00秒ですが、やはり金星が欠けているため、これよりも若干早く月から金星が離れて見えるでしょう。各現象の時刻は、見る場所によって異なります。おもな都市の時刻を下の表にまとめます。表に無い地点では、「惑星食各地予報」を使うと、現象の時刻を調べられます。
地名 | 潜入開始 | 潜入終了 | 出現開始 | 出現終了 |
---|---|---|---|---|
福岡 | 13時52分19秒 | (全体が潜入せず、一部のみ隠されて終わる) | 13時57分22秒 | |
京都 | 13時43分22秒 | 13時45分56秒 | 14時24分41秒 | 14時27分19秒 |
東京 | 13時46分41秒 | 13時48分48秒 | 14時37分50秒 | 14時40分00秒 |
仙台 | 13時44分59秒 | 13時46分45秒 | 14時44分21秒 | 14時46分10秒 |
札幌 | 13時42分22秒 | 13時43分51秒 | 14時49分08秒 | 14時50分39秒 |
※金星が欠けているため、金星の輝いている面での時刻は若干異なります。
今回の金星食は昼間の現象で、肉眼で見るのは難しいと考えられます。しかし、双眼鏡や望遠鏡を用いた適切な観察方法では、見ることが可能でしょう。ただ昼間の空には太陽が強烈な光を放って輝いています。今回の金星食が起こる空は、太陽からは比較的遠い位置ですが、操作を誤るなどしてうっかり太陽を見てしまうと、目を損傷し、失明に至るなどの重大な事故につながる可能性があります。観察する場合には十分に注意を払うようにしましょう。
(参照)暦計算室ウェブサイト:「こよみの計算」では、各地の日の出入り時刻、月の出入り時刻、惑星の出入り時刻などを調べることができます。また暦象年表の「太陽系天体の出入りと南中」でも、各地の惑星の出入り時刻などを調べることができます。「今日のほしぞら」では、代表的な都市の星空の様子(惑星や星座の見え方)を簡単に調べることができます。「惑星食各地予報」では、金星食などの惑星食の様子を調べることができます。