宇宙図とは
この「宇宙図」は、最新の研究にもとづく宇宙の姿を、私たち人間を中心にして描いたものです。縦方向には、人間からさかのぼって宇宙の誕生までの「時間の流れ」が、横方向には、宇宙の「空間の広がり」が表現されています。全体のラッパのようなかたちから、宇宙は生まれてからずっと、膨張(ぼうちょう)を続けていることがわかります。このような時空としての宇宙の物語に加え、宇宙の誕生や成長の物語、そして人間の材料となる元素の物語が、この宇宙図には盛り込まれています。
宇宙図の見方
4つのルールで、宇宙を感じてみよう
この宇宙図は、あなたがはるかな時間と空間を旅するためのガイドマップ。ですが、このガイドマップを読みこなすには、少し不思議な「4つのルール」が必要となります。「4つのルール」を味方につけて、あなたの眼で、宇宙の姿にせまってみてください。
ルール1宇宙を見ることは、昔を見ること

不思議なことに、地球から宇宙をながめると、そこに見えるのは昔の宇宙の姿です。例えば私たちに見える太陽は、8分ほど昔の姿。すばる(散開星団M45)は 400年ほど昔の姿なのです。なぜ、そんなことが起こるのでしょう?私たちにものが見えるのは、そこから発した光が、私たちに届くから。けれど宇宙の星々はとても遠いので、光でさえやってくるのに時間がかかります。そのため、こちらに届くころには、その光が伝える星の姿はもう「昔の姿」になってしまっているのです。
ルール2見える宇宙と見えない宇宙がある

宇宙図の中心に描かれた私たち人間の前後左右には、「現在の宇宙」が広がっています。しかし私たちに、その宇宙の姿は見えません。ルール1を忘れずに。見えてくるのは、昔の宇宙なのです。私たちが肉眼や望遠鏡で捉えることのできる天体をこの宇宙図に並べていくと、図の中心にあるような、きれいなしずく形の表面になります。宇宙のこの部分だけを、私たちの眼は見ています。またそれぞれの天体は、何千年前、何億年前と、違う時代の姿を私たちに見せているのです。
ルール3宇宙では、遠くの距離は要注意

天体までの距離を表す時によく使われるのが、「光が旅をしてきた道のり」です。例えば、私たちに見える宇宙の中で一番遠くからきた光は、137億年をかけて「137億光年」の距離を旅してきました。しかしその長い旅の間にも宇宙は広がり続けたため、光が進んでこなければいけない道のりは、スタート時点よりもどんどん伸び、光が放たれた場所自体も、はるかに遠ざかってしまいました。光が届いた現在、その場所は、もう私たちから470億光年のかなたに離れていると推測されています。
ルール4宇宙は「科学の眼」で見えてくる

私たちに見える宇宙は、広大な宇宙の、ほんのひとしずくです(しずく形の表面)。しかし「科学の眼」は、それを手がかりに、さまざまなことを明らかにしてきました。私たちに見える宇宙が、どうやって誕生したのか(ラッパ形の底の部分)。それがどのように広がってきたか(ラッパ形の表面のかたち)。そしてラッパ形の向こうにも、宇宙は遠く広がっているという可能性。この宇宙図には、そうした科学的発見の成果がたくさんに詰まっています。宇宙は、あなたに読み解かれるのを待っています。
真ん中のしずく形は何?

しずく真ん中のしずく形は「私たちに今見える宇宙」です。縦軸に時間、横軸に空間をとって、いま現在私たちに見える天体を置いていくと、すべてがこのしずく形の表面上に並びます。また、その星々の放った光は、しずく形の表面をたどって地球にやってきています。この宇宙図は下にいくほど過去となるので、「星の光は過去からやってきた」ことがわかります。
光速を超えて遠ざかる星々

しずく下部しずく形のもっとも太い部分(左図の白い輪)の表面上にある天体は、光を放った当時、いま現在地球がある位置に対して、ちょうど光の速さで遠ざかっていました。もっとも太い部分から下(昔)の表面上にある天体は、光を超える速さで遠ざかっていました。宇宙の膨張は空間自体の膨張であるため、光速を超えることも可能なのです。これらの光を観測することができるのは、宇宙の膨張がどのように変化してきたかの歴史と関わっています。
宇宙の誕生にせまる

宇宙の始まりについて、ある説では、宇宙は「無」から生まれたとしています。「無」とは、物質も空間も、時間さえもない状態。しかしそこでは、ごく小さな宇宙が生まれては消えており、そのひとつが何らかの原因で消えずに成長したのが、私たちの宇宙だというのです。また生まれたての宇宙では、時間や空間の次元の数も、いまとは違っていた可能性があります。ある説によれば、宇宙は最初は11次元で、やがて余分な次元が小さくなり、空間の3次元と時間の1次元だけが残ったのだといいます。宇宙の始まりは、まだ多くの謎につつまれています。それを解き明かしていくのは、いまこれを読んでいるあなたかもしれません。
膨張の軌跡

ラッパ型部分ラッパ形は「私たちにいま見える宇宙」の、宇宙誕生より現在までの膨張の軌跡を表しています。一番外側が一番速く私たちから遠ざかりますが、その現在の速度は光速の3倍以上です。

宇宙図の外はどうなっているのか?

インフレーション宇宙論などの理論によれば、宇宙はこの宇宙図に示されている範囲よりもはるかに広大に広がっています。この線よりも外側は、私たちには理論的に推測できても観測的に確かめることはできません。
宇宙の中心は私たち?

この宇宙図は、人間を中心として描いた、「私たちがいま見ている宇宙」の図です。しかし宇宙の時空間は、この図を超えてはるかに大きく広がっています。そしてその広大な宇宙には、中心も果ても存在しないのです。