- トピックス
2026年を迎えて—国立天文台長 土居守
あけましておめでとうございます。2026年を迎え、一言、ご挨拶申し上げます。
国立天文台長に着任して2年近くとなりました。国立天文台が、天文学において日本の中心的な機関として大変重要な役割を果たしてきており、大きな期待を背負っていることをいっそう実感しております。特に大学共同利用機関として、個別の大学等では困難な大型望遠鏡や計算機の建設と運用という天文学の推進において不可欠な役割を担っています。
2025年には、2027年度からの次期中期計画にむけて国立天文台サイエンスロードマップの策定が、コミュニティの先生方と国立天文台スタッフによる尽力で大きく進み、12月には将来計画シンポジウムでの議論も活発に行われました。国立天文台の将来の方向性をしっかりと見据え、実施計画策定へと進んでいく予定です。
1999年に運用を開始したすばる望遠鏡は引き続き順調に観測成果を出し続けています。特に15年の歳月をかけて製作した超広視野多天体分光器ʻŌnohiʻula PFSが昨年3月より科学観測を開始しました。次期主力観測装置ULTIMATE-Subaruも広視野補償光学とともに開発が進んでいます。望遠鏡の夜間無人運用化の準備や老朽化対策等も進められています。
ALMA望遠鏡は、期ごとの観測時間数の最高記録を更新しました。共同利用による成果も順調に伸び続け、若手のリードする研究成果が次々と発表されています。またWideband Sensitivity Upgradeと呼ばれる広帯域化と高感度化による観測効率の大幅向上を目指した開発も始まっています。
TMT計画は、米国の科学技術予算の削減案が昨年5月に発表されたこともあり、厳しい1年となりましたが、コミュニティの強い後押しもあり、日本政府とも密にやりとりしながら引き続き建設へ向けて活発に活動しています。
また水沢VLBI観測所を中心にVERAプロジェクトは国内大学とのVLBI連携JVN、さらにアジアの国々とのVLBIへとより広く連携観測と共同研究を拡大しつつあります。
野辺山宇宙電波観測所は、「名探偵コナン」の聖地となり、多くの方に訪問していただきました。45m望遠鏡は、チリ・アタカマの厳しい環境で運用されているASTE望遠鏡と共に観測のみならず新しい観測装置の試験にも活躍しています。
太陽観測においては、HINODE衛星と地上からの観測を継続すると共に、次期太陽観測衛星SOLAR-Cの開発をJAXA宇宙科学研究所と共に本格化しています。JASMINEプロジェクトもさまざまな活動を実施して検討段階を進んでいます。
先端技術センターは、これらの望遠鏡群に必要な観測装置等の開発と運用に不可欠な貢献をしてきています。天文学の最先端技術を宇宙産業へ活用し、スタートアップ企業の支援を行うスペースイノベーションセンターも昨年9月にたちあがりました。
ビッグデータとAI活用の重要性が叫ばれる今日この頃ですが、天文データセンターは、国内の大学で取得されたデータを含む観測データのアーカイブと公開を行っており、利用した論文出版数は年間100編に迫りつつあります。
天文情報センターでは、引き続き活発に広報普及活動を行っており、石垣島では年一回の南の島星まつりも盛大に開催されました。また、世代を超えた人気コンテンツである「ポケモン」とのコラボレーション企画「ポケモン天文台」の展示が11月より相模原市立博物館で始まりました。また国立天文台が編纂を行っている理科年表も創刊100周年を迎え、12月には記念講演会も盛大に開催されました。
科学研究部は理論と観測をつなぐ役割、特にサイエンスロードマップの天文学分野の世界動向の分析にも大きく貢献、また年間の発表論文数も年々増え、250編をこえつつあります。
CfCAによる計算機の共同利用も順調に成果をあげており、シミュレーション天文学の若手の活躍の場となり、また年間150編をこえる論文が出版されています。
東京大学等とのKAGRAの開発も、能登半島地震による故障から復帰し、感度を大幅に向上させました。
他の大学との協力事業・連携事業も、OISTER、ハワイ観測所岡山分室せいめい望遠鏡の共同利用も順調に実施されており、また65年ぶりの大改修となった188cm望遠鏡のドームシャッター修理も東京科学大学・浅口市と共に無事完了、運用を再開することができました。
大学院教育においても、総合研究大学院大学・東京大学とのプログラムに加え、工学系との連携やダイバーシティも考慮しながら強化を図っています。このほか、国際連携においては、ハワイ大学とシンポジウムを共同開催し、またEACOAによるEAMA11も12月に新潟で、東南アジアやインドからの参加も含め盛大に開催することができました。
これらの活動は事務部や各室にしっかりと支えられて実施できていることも忘れてはなりません。予算については、物件費・人件費の上昇と円安に苦しみ、皆さんにぎりぎりに切り詰めた活動予算しか提供できない状況が続いています。国の補正予算により物件費・人件費への対応が一部行われつつあり、また寄付活動も拡大しつつありますが、円安は進み、引き続き厳しい状況が続く可能性が高く、皆さんには節約等に努めていただくとともに一緒に新たな財源確保へもご協力いただければ幸いです。
皆さん一人一人の日々の仕事は、あまり進んでいる実感はないかもしれませんが、このように1年間振り返ってみるとき、厳しい予算状況の中でも国立天文台は活躍し、発展を続けています。国立天文台のスタッフとして、ぜひ誇りをもって、日々の仕事に励んでいただけますようお願いをし、新年のご挨拶とさせていただきます。
2026年1月6日
国立天文台長 土居 守