• 研究成果

宇宙の過去と未来を書き換える

本研究の概念図。
本研究の概念図。超新星(右)、クエーサー(左)、ガンマ線バースト(中央)といった、地球で観測されるさまざまな標準光源を使って、宇宙論パラメータを推定することができる(背景下は天の川銀河を示す)。(クレジット:国立天文台) 画像(2.7MB)

新たな研究により、宇宙の膨張を支配する宇宙論パラメータの精度を向上させることに成功しました。より正確な宇宙論パラメータによって、宇宙がどのように現在の状態に成長し、将来どのように進化するか、という謎に迫ることができると期待されています。

宇宙が膨張していることは十分に立証されています。しかし、宇宙の膨張速度を正確に測定することは困難です。そのため、天文学者は正確な測定のための信頼できる目印となる天体を探しています。どのような天体が信頼できる目印となり得るのでしょうか。たとえば、明るさが一定のろうそくは、ろうそくまでの距離が遠くなるにしたがって暗く見えます。同様に、天体も遠く離れるほど暗く見えます。天体のそのものの明るさが一定でそれを知っていれば、観測された明るさをもとに天体までの距離を計算することができるのです。このような距離測定を可能にする、明るさが既知の天体を「標準光源」と呼んでいます。

国立天文台のマリア・G・ダイノッティ助教らを中心とする国際研究チームは、超新星やクエーサー、ガンマ線バーストといった、標準光源となる天体のデータを解析するために、さまざまな新しい統計的手法を活用することで新たな研究分野を開拓しました。このデータ解析は、国立天文台 天文シミュレーションプロジェクトが運用する中規模サーバを用い、国立天文台の岩崎一成(いわさき かずなり)助教の協力の下で行われました。距離が異なるいくつかの範囲では、それぞれ異なる標準光源を用いることが有効です。つまり、複数の標準光源を組み合わせることで、宇宙のより広い範囲に渡る天体のデータを使い、宇宙論パラメータを絞り込むことに成功しました。

この研究により、主要な宇宙論パラメータの不定性を最大で35パーセント減らすことに成功しました。宇宙論パラメータがより正確に決まると、宇宙が永久に膨張し続けるのか、それとも最終的に収縮に転じるのか、という宇宙の将来を明らかにできると期待されます。

このページをシェアする