自然科学研究機構 国立天文台

最高視力で解き明かすクエーサーから噴き出すジェットの姿

研究成果

本研究で明らかになったクエーサー「3C 273」から噴き出すジェットの姿
本研究で明らかになったクエーサー「3C 273」から噴き出すジェットの姿。図中左は3C 273の電波画像。根元から数光年にわたって伸びるジェットの最深部の姿が、本研究で初めて明らかになりました。右はハッブル望遠鏡による可視光線画像。3C 273から噴出するジェットが、銀河を越えて数十万光年以上遠方へと到達しています。本研究の観測は2017年に行われ、アルマ望遠鏡が初めて参加した国際ミリ波VLBI観測網(GMVA)と欧米の高感度VLBI観測網(HSA)が用いられました。(Credits: Hiroki Okino and Kazunori Akiyama; GMVA+ALMA and HSA images: Okino et al.; HST Image: ESA/Hubble & NASA) オリジナルサイズ(1.1MB)

クエーサー「3C 273」から噴き出すジェットの最深部が、地球規模の電波望遠鏡の観測網によって捉えられ、ジェットの絞り込みの様子が初めて明らかになりました。これは宇宙ジェットの生成メカニズムを理解する上で重要な成果です。

ほとんどの銀河の中心には大質量ブラックホールが存在しています。中でも、強い重力によって中心にあるブラックホールへと多くのガスが落ち込む際に、膨大なエネルギーを放出している銀河は、「クエーサー」と呼ばれています。クエーサーの中心部からは高速のプラズマ流であるジェットが噴き出しています。クエーサーの最深部で細く絞り込まれたジェットは、しばしばはるか外側まで達し、銀河の進化や周辺環境にまで影響を与えます。しかしながら、ジェットがどのようにして細く絞り込まれるのか、その様子はまだ完全に明らかになっていません。

国立天文台で研究を進める東京大学大学院理学系研究科 博士課程の沖野大貴(おきの ひろき)さんを中心とする国際研究チームは、極めて明るい電波源として知られるクエーサー3C 273から噴き出すジェットをこれまでで最も高い分解能で撮影し、その最深部の構造を捉えることに成功しました。この研究チームには、国立天文台、米国のマサチューセッツ工科大学、工学院大学、八戸工業高等専門学校、新潟大学ほかの研究者が参加しています。

3C 273は世界で初めて発見されたクエーサーとして知られ、その中心部から噴き出すジェットは過去数十年にわたり精力的に研究されてきました。今回研究チームは、この3C 273を地球規模の電波望遠鏡の観測網VLBIによって、さまざまな周波数帯での観測を行いました。そして、これまで詳しく観測されていなかった最深部から銀河を越えた先端部に至るまで、さまざまな空間スケールに及ぶジェットの形状を詳しく調べました。その結果3C 273のジェットの絞り込みが、ブラックホールの重力が支配する領域を越えるほど遠方にまで及んでいることを発見しました。本研究は中心の活動性が高いクエーサーにおいて、ジェットの絞り込みの様子を明確に示した、初めての成果です。

今回の成果の実現には、VLBI観測に今回初めて参加した南米チリのアルマ望遠鏡が重要な役割を果たしました。アルマ望遠鏡が加わることにより、これまでで最も高い感度と分解能を備えた観測が実現しました。その結果、質の高いデータの取得が可能となり、遠方に位置するクエーサーのジェットの最深部を詳細に描き出すことができたのです。アルマ望遠鏡を用いたVLBI観測を可能にした国際プロジェクトでは、その実現に国立天文台も大きく貢献しました。

本研究成果は、Okino et al. “Collimation of the Relativistic Jet in the Quasar 3C 273” として、米国の天体物理学雑誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2022年11月22日付で掲載されました。

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