自然科学研究機構 国立天文台

M87銀河の中心の電波観測データを独立に再解析

研究成果

今回の再解析で得られた楕円銀河M87の中心の電波画像。左上の図で示すブラックホール周辺の拡大図では、「コア構造」(中央下寄りの赤い円形部分)と「ノット構造」(中央右と右下のやや縦長な部分)が見られる。広域の図では、画像の右上に向かって伸びるジェット構造が見られる。なお、右端の赤い点はリアルな存在ではなく、画像を構築する手法によって引き起こされたものである
今回の再解析で得られた楕円銀河M87の中心の電波画像。左上の図で示すブラックホール周辺の拡大図では、「コア構造」(中央下寄りの赤い円形部分)と「ノット構造」(中央右と右下のやや縦長な部分)が見られる。広域の図では、画像の右上に向かって伸びるジェット構造が見られる。なお、右端の赤い点はリアルな存在ではなく、画像を構築する手法によって引き起こされたものである(詳しくは論文を参照)。(クレジット:Miyoshi et al.) オリジナルサイズ(226KB)

イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)が取得した楕円銀河M87の中心の観測データを独立に再解析した結果、異なる特徴を持った画像が得られたという研究が報告されました。観測データや解析手法を公開して、研究者の間で広く検討と議論を進めることで、より確からしい結果に近づけるという現代科学の研究プロセスの一環です。

2017年4月に国際共同観測プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」によって取得された、楕円銀河M87の中心の電波観測データおよびその解析手法は、世界に広く公開されています。これをEHT以外の研究者が独立に再解析し、EHTが発表した結果についての検証を進めています。実際に、さまざまなチームが、再解析の結果を研究論文として詳細に報告しています。

国立天文台の三好 真(みよし まこと)助教、理化学研究所の加藤成晃(かとう よしあき)研究員(研究当時)、神戸大学の牧野淳一郎(まきの じゅんいちろう)教授で構成される研究チームは、このM87のデータを標準的なツールを用いて再解析するとともに、データが持つ性質を調べました。その結果得られた画像には、EHTが示したリング状の構造ではなく、中心部分にある「コア構造」と、そこから伸びている宇宙ジェットおよびその一部とみられる「ノット構造」が現われています。宇宙ジェットは超巨大ブラックホールの多くに伴うものですが、M87の中心部から伸びる長大なジェットは100年以上前から知られており、これまでにも多くの研究がされています。今回の解析で得られた画像はその根元付近を捉えたものだと、研究チームは考えています。この時のEHTの観測は、参加した望遠鏡がまだまだ少なく、約40マイクロ秒角(1秒角の25000分の1)の構造を再現するために必要なデータが、それ以外の大きさの構造に対応するデータに比べて少なくなってしまったことから、EHTが得た画像には約40マイクロ秒角の大きさのリング状の構造ができてしまったのだろうと研究チームは指摘しています。

この研究は、複数の研究チームが観測データや解析手法をまったく独立に検討するという、現代科学が歩むべき健全で正常なプロセスの重要性を示しています。今後、データのさらなる再解析や手法の検討、計画されている追観測などを通じて、M87の中心とそこから噴き出しているジェットの構造について、より確からしい知見が得られていくと期待されます。

本研究成果は、Miyoshi M. et al. “The Jet and Resolved Features of the Central Supermassive Black Hole of M87 Observed with the Event Horizon Telescope (EHT)”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2022年6月30日付で掲載されました。

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