自然科学研究機構 国立天文台

新しい高精度シミュレーションが明らかにした星団形成の現場

研究成果

シミュレーションで再現した形成途中の星団
シミュレーションで再現した形成途中の星団(クレジット:藤井通子、武田隆顕、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト) オリジナルサイズ(136KB)

オリオン大星雲の中では多くの星が生まれつつあり、星団が形成されています。その一つ一つの星の運動をシミュレーションで再現し、星団や星雲の現在の構造を理解することに成功しました。高精度シミュレーションの手法の開発と、それを実行するスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」とが、タッグを組んで得た成果です。

オリオン大星雲は、太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星がたくさん生まれつつある現場です。巨大なガス星雲の中で大質量星が多数生まれると、星の材料であるガスが大質量星の光によって電離されて吹き飛ばされるため、星形成が終了します。この過程を詳しく理解しようと、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションが近年盛んに行われてきました。ただし現在のコンピュータの能力では近似的な計算手法を使わざるを得ないことから、従来の手法では、星団の中心部における星の分布や速度といった振る舞いを正確に再現することができませんでした。

東京大学の藤井通子(ふじい みちこ)准教授をはじめとする研究者から成る研究チームは、星と星間ガスを別に扱うことにより星の運動を正確に求める、新たな計算コードを開発しました。この計算コードを、国立天文台が運用する天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイⅡ」で実行し、オリオン大星雲の中心部に存在する星一つ一つの空間・速度分布を求めました。また、国立天文台の服部公平(はっとり こうへい)助教、九州共立大学の島尻芳人(しまじり よしと)教授(研究当時、国立天文台 特任准教授)らは、この星雲の中の星やガスの状態を調べるために、位置天文観測衛星の観測データや、複数の望遠鏡による多波長観測データを解析しました。数値計算で得られた星団の様子と、実際のオリオン大星雲の状態とを比較した結果、一つ一つの星の振る舞いや、星雲が大質量星によって電離される様子を統合した形で理解できるようになったのです。星が生まれる領域の進化には、大質量星が重要な役割を果たすことが確認できたと言えます。

オリオン大星雲の中で形成中の星団は中規模であり、より多くの星を含む大規模な星団の形成過程についてのシミュレーションはまだ実現できていません。本研究で開発された計算コードは、より大規模なシミュレーションにも対応していることから、研究チームは、より大規模な星団や銀河の形成過程と、それらの中で大質量星が果たす役割を、今後明らかにしていきたいと考えています。

この研究成果は、M. Fujii et al. “SIRIUS Project. Ⅴ. Formation of off-center ionized bubbles associated with Orion Nebula Cluster”として、英国の『王立天文学会誌』に2022年6月8日付で掲載されました。

シミュレーションで描き出した形成途中の星団。青白い点は星を表している。赤から緑色の領域はガスを表し、低温のガスを赤色、高温のガスを緑色に色付けしている。(クレジット:藤井通子、武田隆顕、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト)

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