自然科学研究機構 国立天文台

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ブラックホールの自転は電波放射を強めるか

研究成果

超大質量ブラックホールの周りの降着円盤の想像図
超大質量ブラックホールの周りの降着円盤の想像図。ブラックホールの自転が、強い電波放射の源となる高速ジェットの形成に関与していると考えられる。 オリジナルサイズ(5.2MB)

ブラックホールの自転が、宇宙の遠方から届く電波の源である高速ジェットの形成に役立っている可能性があることが、多数の超大質量ブラックホールを調べることで明らかになりました。

ブラックホールは、光をはじめすべての電磁波を吸収するため、その姿を直接見ることはできません。しかし、ブラックホール周辺では、その中心へ向かって落ち込みながら超高温になった物質で降着円盤が作られ、そこからの光が見えます。多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在し、降着円盤を持つブラックホールは電波を放つ天体として観測されます。このような天体は「クエーサー電波源」または単に「クエーサー」と呼ばれます。ただし、その中で強い電波を放つクエーサーは1割程度にすぎません。「電波が強い」クエーサーでは、降着円盤内の物質の一部がブラックホールに落ち込まず、ブラックホールの両極から高速のジェットとして吹き出していると考えられていますが、どのようにジェットが形成されるのかはわかっていません。

国立天文台研究員のアンドレアス・シュルツ(Andreas Schulze)さんが率いる研究チームは、超大質量ブラックホールの自転が高速ジェットの形成に役立っている可能性について研究しました。研究チームはブラックホールの周囲と降着円盤から放射された酸素イオンの光を調べ、その強さを測定しました。酸素イオンの光の強さから、中心のブラックホールの自転速度を計算できるのです。8000個近くのクエーサーを解析した結果、電波が強いクエーサー、つまり高速ジェットを伴うブラックホールは、そうでないクエーサーに比べて酸素イオンの光が平均で1.5倍ほど強いことを見いだしました。これはブラックホールの自転がジェットの形成に重要な要素であることを意味しています。

シュルツさんはこう語ります。「この研究結果はもちろん、電波が強いクエーサーと弱いクエーサーの違いがブラックホールの自転だけで決まっているという意味ではありません。しかし、自転を抜きに考えることができないことは確かです。宇宙の遠方から届くブラックホールという怪物の声の大きさをその自転速度が決めている可能性があるのです」。

この研究結果は、Andreas S. et al. “Evidence for Higher Black Hole Spin in Radio-loud Quasars” として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』の2017年11月1日号に掲載されました。

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