自然科学研究機構 国立天文台

三鷹・星と宇宙の日2019:大雨一転快晴!1日だけの特別公開に4000人を超える来場者

イベント

毎年恒例の三鷹キャンパスの特別公開「三鷹・星と宇宙の日」。今年は2019年10月25日(金曜日)、26日(土曜日)の2日間で開催の予定でしたが、大雨警報発令のために、25日のプレ公開は中止を余儀なくされました。しかし、来場者の皆様に本公開一日で思う存分満足していただくべく、スタッフ一同は降りしきる雨の中で着々と準備を進めました。その結果、26日の本公開の来場者数はなんと4113名、1日だけで昨年・一昨年を上回る来場者数となり、多くの方に最先端の天文学の面白さに触れていただくことができました。

初のブラックホールシャドウ撮影成功、小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星リュウグウの探査と、近年になく天文・宇宙に関する報道が相次いでいる今年は、「すばる望遠鏡20周年」の年でもあります。今年の講演会には、この20年間のすばる望遠鏡の活躍の足跡をたどるテーマを選びました。期待を胸に講演会開場前から列を成す来場者に、開場時刻を早めて対応。満席の聴衆を相手に二人の講師が熱弁を振るいました。それぞれの企画会場でも、研究者と話し込んだりツーショットで写真を撮ったりという光景が今年は特に数多く見られ、天文台と地域、研究者と天文ファンとの距離がいっそう近くなる特別公開となりました。

メイン講演会

講演1「すばる望遠鏡の20年―すばるが明らかにした宇宙の姿」

すばる望遠鏡は1999年のファーストライト以来、日本を始め世界中の研究者の共同利用に毎年約240夜を提供し、最先端の天文学研究を推進してきました。講演では、このすばる望遠鏡の20年間の科学成果を振り返ると共に、現在のすばると将来戦略についても紹介しました。

講演2「すばるとアルマで探る惑星系形成研究の最前線」

現在、宇宙には太陽系の他にも多くの惑星系が存在することが分かっています。惑星系は、生まれたばかりの星とそれを取り巻くガスと塵(ちり)の円盤の中で誕生すると考えられています。高い解像度をいち早く実現したすばる望遠鏡はこの円盤の詳しい構造を明らかにし、その成果を元にしてアルマ望遠鏡での観測研究が進んでいます。この講演では、すばるからアルマへの研究のつながりと、惑星系の誕生について、現在観測から明らかになってきたことについて、紹介しました。

今年は目的や対象別に7つのモデルコースを用意。ここからはそのモデルコースに沿って、当日の様子を紹介していきます。

1)身近な宇宙散歩コース

身近な天体といえば何といっても太陽。太陽観測科学プロジェクトでは、今年も2つの企画を、太陽フレア望遠鏡と中央棟講義室に準備。地上で見る太陽の不思議や、ロケットや人工衛星が探る太陽の謎などを紹介しました。
RISE(ライズ)プロジェクトでは、はやぶさ2の小惑星リュウグウ探査を軸に小惑星や月などについて紹介。
東京大学天文学教育研究センターの「トモエゴゼン」は、広い視野で動画撮影可能な観測装置。近い将来、地球高層大気やスペースデブリの観測に使われる可能性も…。

2)輝く宇宙探索コース

輝く宇宙探索といえば、やはり大口径で宇宙を探るハワイのすばる望遠鏡やTMT(建設中)といった光学・近赤外線望遠鏡。特にすばる望遠鏡20周年の今年は、20年間の歩みをながーい年表で観測画像と共に紹介。
太陽観測科学プロジェクトでは、直径1メートルのバルーンに今年1月の部分日食の様子を再現。JASMINE(ジャスミン)プロジェクトでは、星の距離の測り方について熱弁を振るう研究者の姿が見られました。

3)見えない宇宙探索コース

見えない宇宙を探るといえば、なんといっても重力波、電波などが代表格。重力波アンテナ「TAMA(たま)300」では、例年以上に滞在時間の長い熱心な来場者が目立ったそうです。
アルマ棟は定員超えのミニ講演会や、ポスターを見るたくさんの来場者でにぎわっていました。
昨年まで屋内で開催していた「カフェりろん」は「青空サイエンスカフェ」として屋外テントに模様替え。通りから気軽に参加できるスタイルに、敷居が低くなったのか、多くの来場者が足を止めてトークに耳を傾けました。
「宇宙を作る計算機見学ツアー」と銘打ったツアーを企画したのは天文シミュレーションプロジェクト。あまりの人気ぶりに、整理券の配布時刻になる前にその数を超える待ち列ができて担当者は嬉しい悲鳴。
野辺山宇宙電波観測所の企画では、天の川を電波で探る「FUGIN(風神)プロジェクト」やこれまで見つかった複雑な分子などについて熱く語る研究者たちの姿が。
多くの来場者を呼び込んだのが水沢VLBI観測所の企画。毎年恒例のVERA(ベラ)の展示に加え、話題のブラックホール顔はめパネルをはるばる水沢から持参。ミスター・ブラックホールこと本間希樹(ほんま まれき)教授とのツーショット撮影待ちの列も。今年は廊下までスペースをフルに使っての勢力的な展示でした。

4)天文学の歴史コース

天文学と国立天文台の歴史をたどることができるのがこのコース。よく晴れたおかげで、第一赤道儀室と太陽塔望遠鏡では、太陽観測実演もばっちり成功。特に今年は例年11月に開催している文化財ツアーの予定がないため、太陽塔望遠鏡の内部を見る貴重な機会となりました。
天文台歴史館1階の貴重書展示では、講演のテーマに合わせて「すばると1882年の大彗星(すいせい)」展を開催。展示された明治時代の錦絵が人気を集めました。
「来て!見て!図書室」では、「ブラックホール&すばる」コーナーを特設。話題の書籍の紹介に加え、普段から図書室の一般利用が可能なことをアピールしました。
気持ちのよい風の中、子午儀資料館やゴーチェ子午環、天文機器資料館まで足を延ばすと、さまざまな天文学史的なお宝に出会うことができます。普段の見学では時間の都合で割愛されてしまうことが多い展示館ですが、ほかの建物から離れていることもあり、ゆったりと見ていただくことができました。

5)天文学を支えるものづくりコース

天体観測に欠かせない観測装置。それを開発する「ものづくり」の現場を間近に見られるのがこのコース。先端技術センターの技術者による身振り手振りの解説は、毎年大人気です。
重力波望遠鏡もTMTも開発の真っ最中。どちらも明日の天文学を担う観測装置です。
JASMINEプロジェクトでは、銀河系中心領域の恒星を重点的に観測するための小型衛星を絶賛開発中。
天文シミュレーションプロジェクトではこの計算機でまさに「宇宙作ってます」と、重力多体問題専用計算機GRAPE(グレープ)を紹介しました。

6)宇宙を遊ぼうコース

毎年、子供から大人まで高い人気を誇っている企画が天文データセンターの「銀河探しゲーム」。銀河の達人を目指して、皆さん奮闘中。
アストロバイオロジーセンターの企画「謎解き」にもたくさんの来場者がチャレンジしました。すばる棟入口には「すばるマン」の大きな看板が登場。各ブースを回ってレアカードを集めたり、すばるマンに挑戦したり。ここでは一日中、子供たちの歓声が響いていました。
「三鷹市星と森と絵本の家」では例年どおり「秋まつり」を開催。木のおもちゃやジュニアサポーターの作ったふかし饅頭で心も体もほっこり。

7)宇宙を体験しようコース

最後に紹介するのがこのコース。やってみなくちゃ分からない。2年ぶりの登場となる「MitakaVR」の整理券は、毎回、配布開始前に満席となり、泣く泣くお断り。解説者が操作を行いVRゴーグルで眺めるタイプと、自分で操作するタイプの2種類を用意。
アルマプロジェクトのVR体験では、目の前に広がる標高5000メートルの景色に、思わず酸欠状態に(はなりません)。
「みんなの天文学」の企画では、楽しみながら銀河の謎に挑戦する企画「ギャラクシークルーズ」で銀河の分類に挑戦!
インクルーシブ天文学の試みの一つとして、画像を音に変換する特殊カメラやタクタイル(手で触れて感じる)宇宙絵本のデモなど、天文学が万人のためのものであることが実感できました。
体験といえば、なんといっても天体観望会体験。夕方から増えてきた雲に整理券配布を中止しましたが、急きょ見えてきた雲間の天体を狙って50センチ公開望遠鏡が稼働開始。諦めなかった来場者へのプレゼントとなりました。
今年も最後に来場者が結集したのは、直径4メートルのバルーンに宇宙を映し出す「ゆにたま」企画。複数のプロジェクトから解説の研究者が登壇。多くの来場者が幻想的な宇宙の様子に酔いしれました。

特別公開のだいご味は…研究者と話そう!

最後に、楽しみにしている来場者が毎年いる、研究者と会話を交わす企画。筆頭は「研究者に質問してみよう」です。時にディープな質問を寄せる来場者に、今年は担当研究者がそれぞれの得意分野を示すバッジを着けて回答しました。ハワイ観測所が企画した「スービーカフェ」というかわいい名前が付けられたサイエンスカフェでも、研究者と一対一で、あるいは研究者を家族で取り囲んで、熱の入った会話が交わされました。もちろんそれらは、各ブース、各展示の前、そこここで見られた光景。来場の皆さんに天文学の不思議さ面白さを少しでも分かってもらいたい、そんな思いが国立天文台スタッフ全員を熱くさせる日。それぞれの立場で、それぞれの方法で…。それが「三鷹・星と宇宙の日」なのです。

また来年もお待ちしています。

(三鷹・星と宇宙の日運営委員会事務局 高畠規子)

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