• お知らせ

訃報:海部宣男 元国立天文台長

海部宣男 元国立天文台長

国立天文台の第3代台長を務められた海部宣男(かいふ のりお)国立天文台名誉教授が、2019年(平成31年)4月13日(土曜日)午後0時8分、すい臓がんのため逝去されました。75歳でした。

海部先生は、日本の天文学の水準を飛躍的に向上させると同時に、世界的リーダーとして天文学の発展に貢献されました。1969年に東京大学理学部助手に着任、米国国立電波天文台客員研究員などを経て1979年に同大学東京天文台(当時)助教授、1988年に国立天文台教授、2000年に国立天文台長に就任されました。この間、天文学分野で初めての大型共同利用研究施設となる野辺山宇宙電波観測所の建設と運営に中心的役割を果たされました。1990年代にはすばる望遠鏡の建設をリードされ、1997年からはハワイ観測所の初代所長を務められました。2004年には台長として、米欧と対等な形でアルマ望遠鏡への参画を果たされました。また2004年の国立大学等の法人化に伴い、国立天文台が大学共同利用機関として大型計画を推進するにふさわしい諸制度を発足されました。2005年から2011年まで、日本学術会議会員として、日本における大型研究計画策定の指針を示すマスタープランのシステム確立を主導され、学術行政、学術振興に大きな功績を果たされました。2012年から2015年まで、日本人として2人目となる国際天文学連合(IAU)の会長を務められ、途上国における天文学の発展に力を入れるなど、世界の天文学の発展に大きな貢献をされました。

海部先生は、宇宙電波分光学の開拓者の一人として広く世界に知られています。ミリ波帯での分子線観測が、20世紀後半の電波天文学の主流になることをいち早く見抜かれ、1970年に完成した6メートルミリ波望遠鏡を使って、星間メチルアミンの検出に成功されました。これを受け、野辺山45メートル電波望遠鏡用の音響光学型分光計の開発を推進され、当時各国の電波望遠鏡で使用されていたものの10倍以上の周波数帯域とチャネル数を持つ分光計を完成させました。この分光計を用い、45メートル望遠鏡によって多数の新しい星間分子(その多くは有機分子)を発見されました。また、恒星の形成過程の研究をリードされ、すばる望遠鏡での太陽系外惑星の直接撮影観測や、今日のアルマ望遠鏡による原始惑星系円盤観測の興隆などの礎を築かれました。これらの業績により1987年度仁科記念賞、および1998年度日本学士院賞を受賞されています。天文学分野だけではなく、詩歌に関する多数の著書を執筆されるなど、広く社会的にも貢献されました。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

平成31年4月15日

海部宣男 名誉教授(1943-2019) 略歴
1969年 東京大学 助手
1972年 理学博士(東京大学)
1979年 東京大学東京天文台 助教授
1987年 仁科記念賞「ミリ波天文学の開拓」
1988年 国立天文台 教授
1997年 国立天文台ハワイ観測所 初代所長
1998年 日本学士院賞「星間物質の研究」
2000年 国立天文台長(2006年まで)
2005年 日本学術会議会員(2011年まで)
2007年 放送大学 教授(2012年まで)
2012年 国際天文学連合(IAU)会長(2015年まで)
2019年 逝去

このページをシェアする