国立天文台 メールニュース
No.229(2021年8月4日発行)研究成果、ペルセウス座流星群、国立天文台野辺山 特別公開2021 など
__________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.229 (2021年8月4日発行) __________________________________________________________ 国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ◇もくじ------------------- ・研究成果:宇宙のリチウムはどこで作られた? ・天文現象:2021年のペルセウス座流星群は8年に1度の好条件 ・話題 :マウナケアの星空をライブ配信! ・お知らせ:国立天文台野辺山 特別公開2021「科学を支えるものたち」 -------------------------◇ ▼研究成果 ____________________________ ■宇宙のリチウムはどこで作られた? 水素、ヘリウム、リチウムの3種類の元素は、ビッグバン後の初期宇宙で生成されたと考えられています。しかしこれだけでは、現在の宇宙に存在するリチウムの量の大部分を説明することができません。星間空間や恒星の中、新星・超新星爆発といった、ほかのさまざまな条件でも、リチウムが生成されるのではないかと理論的に推測されてきましたが、その観測的根拠は長い間得られていませんでした。 2013年、すばる望遠鏡による観測から、新星「いるか座V339」の爆発時に大量のリチウムが生成され、それが宇宙空間に放出されていることが、初めて明らかになりました。それ以降も新星爆発によってリチウムが生成されるようすが、すばる望遠鏡によって次々と捉えられてきました。ビッグバン以降の宇宙で生成されたリチウム量の大部分は、新星爆発によるものなのでしょうか。 ところが、2015年、新星爆発でのリチウム生成を捉えた8例目となる、新星「いて座V5669」については、これまでと様子が違いました。リチウムの量がこれまでの例のわずか数パーセントとたいへん少なかったのです。リチウムの生成量は、新星によって100倍程度もの幅があり、多様であることが分かったのです。これまでの観測結果と今回の観測結果を合わせると、新星爆発だけでなく、超新星爆発といった他の可能性も考慮しなければなりません。また今後、リチウム生成量の多様性が生じる要因も明らかにしていく必要があります。 (2021年7月7日発表) ▽すばる望遠鏡が明らかにした新星爆発によるリチウム生成量の多様性 https://subarutelescope.org/jp/results/2021/07/06/2968.html ▽新星爆発は宇宙のリチウム合成工場だった https://subarutelescope.org/jp/results/2015/02/18/936.html ▼天文現象 ____________________________ ■2021年のペルセウス座流星群は8年に1度の好条件 毎年8月中旬には、三大流星群の一つである「ペルセウス座流星群」の流星が多く見られます。 2021年のペルセウス座流星群の活動は、8月13日午前4時頃に極大となり、前後数時間にわたってとても活発な状況となると予想されています。日本は流星群の観察にたいへん適した条件になっていて、8月12日の夜半頃から13日の明け方にかけて、多くの流星を見ることができるでしょう。また、8月8日が新月で、ペルセウス座流星群がよく見られる夜半前には月が沈むため、月明かりの影響もほとんどなく、とても良い条件で流星を観察することができます。 普段よりも目立って多くの流星を見ることができるのは、11日の夜から13日の夜までの3夜と予想されます。3夜とも21時頃から流星が見られるようになり、夜半を過ぎ明け方になるにつれて、見られる流星の数が増えていくことでしょう。最も多くの流星が見られるのは、13日の夜明け近く(東京では3時台)と考えられ、空が開けた暗い場所で観察した場合は、1時間あたり50個程度の流星が観察できると予想されます。 詳しくは、「ほしぞら情報」の「ペルセウス座流星群が極大(2021年8月)」をご覧ください。 ▽ほしぞら情報:ペルセウス座流星群が極大(2021年8月) https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2021/08-topics02.html ▽流星群 https://www.nao.ac.jp/astro/basic/meteor-shower.html ▼話題 ____________________________ ■マウナケアの星空をライブ配信! ハワイ島マウナケア山頂は、世界でも類を見ない天体観測の好適地です。国立天文台のすばる望遠鏡もこの地で宇宙の果てを見つめ続けています。 このマウナケアの素晴らしい空が、すばる望遠鏡建屋に設置されたカメラから24時間ライブ配信されています。国立天文台ハワイ観測所と朝日新聞との協力によって、2021年4月から試験運用されている「星空カメラ」による配信です。このライブ配信は、YouTube朝日新聞宇宙部チャンネルで見ることができます。ハワイと日本との時差はマイナス19時間。日本で日の入りを迎える頃、ハワイではすっかり夜も更けて、晴れていれば美しい星空が広がっています。 暗い夜空を求めて遠くに出かけられないときは、このライブ配信でマウナケアの星空を楽しんではいかがでしょうか。 ▽星降るマウナケアの空をライブで配信中 https://www.nao.ac.jp/news/blog/2021/20210728-hawaii.html ▽すばる望遠鏡からの星空ライブカメラがはじまる https://subarutelescope.org/jp/news/topics/2021/04/21/2945.html ▼お知らせ ____________________________ ■国立天文台野辺山 特別公開2021「科学を支えるものたち」 2021年の国立天文台野辺山の特別公開を、来る8月28日に開催します。今年のテーマは「科学を支えるものたち」です。 今年は、観測所にご来場いただき参加していただくオンサイトイベントと、ご自宅で楽しんでいただくオンラインイベントと、ハイブリッド方式で開催予定です。 ◆オンサイトイベント ※事前に予約が必要なイベントがありますのでご注意ください。 ・45メートル電波望遠鏡観測室の見学【事前予約制】 ・4次元デジタル宇宙シアター(4D2Uシアター)【事前予約制】 ・所内屋外施設の見学 など ◆オンラインイベント ・特別講演会のライブ配信 「観測装置を作る、直す、ぶん回す―電波天文学の場合―」 講師:南谷哲宏(みなみだに てつひろ)国立天文台 チリ観測所長・准教授 ◆ご注意 新型コロナウイルス感染症拡大の状況や気象警報発令などにより、オンサイトイベントの一部または全てが中止になる場合があります。開催状況の変更がある場合は、国立天文台野辺山ウェブサイトにてお知らせしますので、各自にて情報のご確認をお願いします。 ▽特別公開2021「科学を支えるものたち」[野辺山] https://www.nro.nao.ac.jp/visit/open2021/open2021_top.html#nmnews ◇編集後記----------------- 今年のペルセウス座流星群は、日本では8年の1度の好条件。新型コロナウイルス感染症の拡大が叫ばれる中では、流星群観測のために遠くへ出かけることはなかなか難しい状況ですが、人が集まらない空が開けた場所で、しばし星空を見上げたいものです。マウナケアの星空を貫く流星を、ライブ配信で楽しむのもよいかもしれません。 -------------------------◇ 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 __________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2021年8月4日 __________________________________________________________