国立天文台 メールニュース
No.228(2021年6月29日発行)研究成果、「美ら星研究体験隊」参加者募集 など
__________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.228 (2021年6月29日発行) __________________________________________________________ 国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ◇もくじ------------------- ・研究成果:渦巻き構造を持つ最古の銀河 ・研究成果:129億年前の小さな銀河は回転していた ・お知らせ:「美ら星研究体験隊」参加者募集 ・お知らせ:自然科学研究機構 第10回若手研究者賞 受賞者による講演会 ・お知らせ:動画「重力波望遠鏡KAGRA―時空のゆがみで宇宙を暴く―」を公開 -------------------------◇ ▼研究成果 ____________________________ ■渦巻き構造を持つ最古の銀河 宇宙にはさまざまな形の銀河が存在しています。天の川銀河やアンドロメダ銀河のような渦巻き構造を持つ円盤状の銀河(渦巻銀河(うずまきぎんが))もその一つで、現在の宇宙にある銀河のおよそ7割を占めます。ただ、138億年の宇宙の歴史を遡ると、渦巻銀河の割合はとても少なくなり、100億年より昔の宇宙で発見されたものは数個に留まります。これまで知られていた最古の渦巻銀河は、およそ114億年前のものでした。 ところが、アルマ望遠鏡による観測データから、124億年前の宇宙に存在していた銀河に渦巻き構造が見いだされたのです。この銀河は、コンパクトで明るい中心部と、その両端から出た2本の腕が作る渦を巻くような構造を持っていました。また、銀河の中のガスの動きも渦巻き構造を持つ銀河で見られるものとよく一致していました。渦巻き構造を持つ銀河としては、これまで知られていたよりも10億年も昔の宇宙に存在した最古のものとなります。 宇宙の始まりから14億年後という短い時間の中で、いったいこの銀河の渦巻き構造はどのように作られていったのでしょうか。長い宇宙の歴史の中で、銀河の渦巻き構造がいつどのようにして作られたのか、銀河の形はどのように変化していくのか―。今回見つかった渦巻き構造を持つ最古の銀河は、このような天文学の古典的な疑問を解く糸口となりそうです。 (2021年5月21日発表) ▽観測史上最古、124億年前の宇宙に渦巻き構造を持つ銀河を発見 ・アルマ望遠鏡 ウェブサイト https://alma-telescope.jp/news/press/spiral-202105 ・国立天文台 ウェブサイト https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20210521-alma.html ____________________________ ■129億年前の小さな銀河は回転していた 宇宙誕生から9億年という129億年前の初期の宇宙に、天の川銀河のわずか100分の1というとても小さな銀河が発見されました。宇宙初期に存在した銀河は非常に小さく暗いため、その詳細な姿を調べることは困難でした。しかし、銀河団等の大質量天体によって生じる「重力レンズ効果」を利用すると、その背後にある天体からの光が増幅されたり像が拡大されたりするため、遠方にある暗い天体の姿が捉えやすくなります。 今回発見された遠方銀河を、重力レンズ効果を受ける前の姿に復元したところ、質量が天の川銀河のわずか100分の1というたいへん小さな銀河であることが分かりました。さらにその内部構造を非常に高い分解能で調べたところ、この銀河は回転運動によって支えられていることが明らかになりました。宇宙初期に存在するこれほど小さな銀河が、回転運動をしていることが分かったのは、初めてのことです。 これは、重力レンズ効果によって拡大された宇宙初期の銀河を、アルマ望遠鏡を使って多数探し出す大規模観測(ALMA Lensing Cluster Survey、ALCS)による成果です。この研究によって宇宙初期の暗い銀河の解明がより進むことが期待されます。 (2021年4月20日発表) ▽129億年前から銀河は回転していた―アルマ望遠鏡と天然のレンズが捉えた宇宙初期の小さな銀河とその内側― ・アルマ望遠鏡 ウェブサイト https://alma-telescope.jp/news/press/alcs-202104 ・国立天文台 ウェブサイト https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20210422-alma.html ▼お知らせ ____________________________ ■「美ら星研究体験隊」参加者募集 全国の高校生を対象とした天文学の観測・研究体験「美ら星(ちゅらぼし)研究体験隊・新しい星を見つけよう!」を、沖縄県石垣市にて8月11日から13日までの日程で開催します。国立天文台のVERA石垣島観測局の20メートル電波望遠鏡を用いた新しい電波天体の探索や、石垣島天文台の105センチメートルむりかぶし望遠鏡を使った小惑星の探索といった観測実習を行う予定です。参加人数は10名、募集の締め切りは7月9日(必着)です。詳しいプログラムや応募方法などは、日本学術振興会「ひらめき☆ときめきサイエンス」のウェブサイトでご確認ください。 新型コロナウイルス感染症の状況によっては、開催日程の変更や中止の可能性があります。また、天候によってスケジュールを変更する場合があります。あらかじめご了承ください。 この事業は、国立天文台が主催し、日本学術振興会の「ひらめき☆ときめきサイエンス」のプログラムとして実施されます。 ▽美ら星研究体験隊の参加者募集! https://www.miz.nao.ac.jp/content/news/event/20210622-417.html ▽ひらめき☆ときめきサイエンス(日本学術振興会) 美ら星研究体験隊「新しい星を見つけよう!」 https://www.jsps.go.jp/hirameki/21ht0000/21ht0087.pdf ____________________________ ■自然科学研究機構 第10回若手研究者賞 受賞者による講演会 自然科学研究機構は、新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み成果をあげた優秀な若手研究者を表彰する「自然科学研究機構若手研究者賞」を設けています。このたび第10回の受賞者5名が決定し、その受賞記念講演会を7月20日に開催します。講演は、YouTubeライブで配信する予定です。視聴にあたっての事前のお申し込みは不要です。どなたでも視聴が可能ですので、例年は会場に足を運ぶことができない方も、この機会にぜひ若手研究者による最先端の研究に触れてください。 国立天文台からは、同賞を受賞した重力波プロジェクトのレオナルディ・マテオ助教が「重力波で宇宙のささやきを聴く」と題した講演を行います。英語での講演となりますが、日本語訳字幕と共にご覧になれる予定です。多くの皆様のご視聴をお待ちしています。 【開催概要】 タイトル:次世代の研究者たちへ、今私たちが伝えたいこと―自然科学研究機構若手研究者賞記念講演― 開催日時:2021年7月20日(火)13:00-17:00 開催形態:YouTubeライブでの配信 プログラム:ウェブサイトをご覧ください 講演者プロフィール、講演要旨等もウェブサイトにてご覧ください ▽第10回 若手研究者賞記念講演(自然科学研究機構) https://www.nins.jp/site/connection/10wakate.html ▽国立天文台 重力波プロジェクト推進室 http://gwpo.mtk.nao.ac.jp/ ____________________________ ■動画「重力波望遠鏡KAGRA―時空のゆがみで宇宙を暴く―」を公開 アインシュタインの「一般相対性理論」で存在が予言された重力波。それから100年の時を経た2015年9月、人類は重力波の直接検出に初めて成功しました。重力波とは何か。その検出に挑む重力波望遠鏡とはどのような装置か。連続運転を開始した日本の大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)の紹介も合わせて解説する動画「重力波望遠鏡KAGRA―時空のゆがみで宇宙を暴く―」が完成しました。 国立天文台天文情報センターの動画制作チームによる映像作品を、じっくりとご覧ください。また、この制作にまつわるエピソード、制作者からのメッセージを「広報ブログ」で紹介しています。こちらも一緒にお楽しみください。 ▽重力波望遠鏡KAGRA―時空のゆがみで宇宙を暴く―(YouTube国立天文台チャンネル) https://www.youtube.com/watch?v=X598MZRUb0c ▽PR動画『重力波望遠鏡KAGRA』制作噺(ばなし)(広報ブログ) https://www.nao.ac.jp/news/blog/2021/20210615-kagra.html ◇編集後記----------------- 研究成果では、アルマ望遠鏡による遠方銀河の研究をご紹介しました。 コロナ禍で、研究者自らが研究のようすを直接伝える機会が少なくなりがちですが、オンライン講演会やウェブサイトを通じて、宇宙の謎に迫る研究の成果をご覧ください。 「美ら星研究体験隊」も今年は2年ぶりに石垣島での開催を予定しています。アニメ「恋する小惑星(アステロイド)」にも登場した、むりかぶし望遠鏡での観測を、ぜひ体験してみてください(もちろん、新型コロナウイルス感染症予防の対策は万全に)。 -------------------------◇ 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 __________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2021年6月29日 __________________________________________________________