国立天文台 メールニュース
No.100(2013年3月18日発行)アルマ望遠鏡開所式、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.100 (2013年3月18日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■アルマ望遠鏡開所式 ■アルマ望遠鏡が書き換える宇宙の星のベビーブーム史 ■家教授が日本学士院賞を受賞 ■パンスターズ彗星を見つけよう ----------------------------------------------------------- ■アルマ望遠鏡開所式 チリ共和国のアタカマ高地に設置が進められてきたアルマ望遠鏡 (注1) の 本格運用開始を記念する開所式が、2013年3月13日 (現地時間) にアルマ望遠 鏡山麓施設にて執り行われました。 この開所式には、ピニェラ チリ共和国大統領をはじめ、各パートナー機関 から350名以上の来賓が出席し、プロジェクトの成功を祝いました。 国際協力プロジェクトとして2001年にスタートしたアルマ望遠鏡計画は、建 設開始から長い年月を経て、2011年に16台のアンテナを用いた初期科学観測を 開始し、いよいよ2013年の本格運用開始を待つばかりとなっています。 現在は、全66台のアンテナのうち最後の7台が建設の最終段階、あるいは性 能評価試験の段階にあります。日本が担当する16台のアンテナ「いざよい」 (注2) もまもなく全てがそろい、本格運用では観測画質の向上に貢献し、ぼん やりと広がった天体からの電波を捉える際に大きな威力を発揮します。 16台のアンテナを用いた初期科学観測でも、既存の電波干渉計をしのぐ優れ た性能を見せたアルマ望遠鏡が、さらに高精度の本格観測を通じてどのような 宇宙の姿を見せてくれるのか、期待が高まります。 注1:アルマ望遠鏡 (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計) は、66台のパ ラボラアンテナを用いた巨大電波干渉計。東アジア、北米、ヨーロッパ が、チリ共和国と協力して、標高5000メートルのアタカマ高地に建設を 進めてきた。東アジアでは、国立天文台がプロジェクトの中心的役割を 担っている。 注2:直径12メートルアンテナ4台と直径7メートルアンテナ12台から成る アタカマ・コンパクトアレイ (ACA) の愛称。 ▽アルマ望遠鏡 開所式を挙行 ―誰も見たことのない宇宙を切り拓く、人類の新しい「眼」 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201303147054.html ■アルマ望遠鏡が書き換える宇宙の星のベビーブーム史 米国のカリフォルニア工科大学の研究者を中心とする国際研究チームは、ア ルマ望遠鏡と南極点望遠鏡を用いた観測で、地球から約120億光年遠方の宇宙 で活発に星を作り出しているスターバースト銀河 (爆発的星形成銀河) を26個 発見しました。 これらのスターバースト銀河が星を作るペースは、我々が住む銀河系の星形 成のペースの数百倍にも達します。今回発見されたスターバースト銀河のうち の2つは、これまで知られていた同様の銀河の中でも最も遠く、地球からの距 離は約126億光年です。また、そのうちの1つの銀河からは水分子が発見されま した。これは、最も遠方での水分子の発見になります。 今回の研究結果から、宇宙で星形成が活発に起こったベビーブームの時期は、 これまで考えられていたよりも約10億年昔であることがわかりました。 この結果は、3月13日に開所式を迎えたアルマ望遠鏡の観測威力を示す最新 成果のひとつです。 ▽アルマ望遠鏡が書き換える、星のベビーブーム史 ―重力レンズ越しに見るスターバースト銀河と観測史上最も遠い銀河での 水の検出 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201303147056.html ■家教授が日本学士院賞を受賞 このたび、国立天文台の家 正則 (いえまさのり) 教授 (TMTプロジェクト室 長、ハワイ観測所) が、平成25年日本学士院賞を受章しました。 家教授は、すばる望遠鏡を用いた原始銀河の観測に力を注ぎ、128-129億年 前の原始銀河を精力的に発見していきました。とくに、2006年と2012年には、 当時知られる最遠方の銀河を発見するなど、世界的な研究成果を挙げてきまし た。さらに、これらの観測から、宇宙再電離がこの頃 (128-129億年前) に急速 に完了に向かったことを明らかにしました。 今回の受賞は、これまでの家教授の研究実績が評価されたものです。 家教授は、2011年に秋の褒賞において天文学研究功績による紫綬 (しじゅ) 褒 章を受賞、また、東レ科学技術賞 (2011年)、仁科記念賞 (2008年) といった受賞 歴を持ち、初期宇宙の観測的研究などで数々の功績を挙げています。 ▽2013年度日本学士院賞に家正則教授 http://subarutelescope.org/Topics/2013/03/13/j_index.html ▽日本学士院賞授賞の決定について (日本学士院) http://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2013/031201.html ■パンスターズ彗星を見つけよう パンスターズ彗 (すい) 星 (C/2011 L4 (PANSTARRS) ) が、現在日の入り後 の西の低空に姿を現し、話題を呼んでいます。3月10日前後を境に、それまで 南半球でしか見られなかった彗星が、北半球でも観察可能になりました。 このパンスターズ彗星は、2011年6月6日 (世界時) に発見され、太陽に最も 近づく近日点通過の頃には、肉眼で見られる明るさになるのではと期待されて いました。しかし、当初の予想ほど増光していないこと、日の入り直後の低空 という観察条件であることから、肉眼での確認は難しいようです。 こういった悪条件の中、国立天文台でも、南米チリのアルマ望遠鏡山麓施設 付近や、石垣島天文台などでパンスターズ彗星の姿を写真に捉えることができ ました。 国立天文台も参加する日本天文協議会 (注) では、現在、「パンスターズ彗 星を見つけよう」キャンペーンを行っています。観察の条件は決して良くあり ませんが、晴れた日は双眼鏡を使ってパンスターズ彗星の姿を探してみません か。すでに全国各地から、パンスターズ彗星の確認や写真撮影に成功したとい う報告が寄せられています。ただし、飛行機雲などを彗星と誤認するケースも 多いようですので、観察の際には注意が必要です。 注:世界天文年2009の成果を引き継ぎ、日本の天文学研究・教育・普及・ア マチュア活動が一体となって、天文と科学の理解を社会に広げるための 合同組織 (2010年9月9日発足)。日本天文学会、国立天文台、宇宙航空 研究開発機構、天文教育普及研究会、日本プラネタリウム協議会、日本 公開天文台協会、日本天文愛好者連絡会、星空を守る会の8団体・機関 から成る。 ▽パンスターズ彗星 http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2013/panstarrs.html ▽国立天文台が撮影したパンスターズ彗星 http://www.nao.ac.jp/news/topics/2013/20130313-panstarrs.html ▽パンスターズ彗星を見つけようキャンペーン http://pan.astro-campaign.jp/ _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2013年3月18日 _____________________________________________________________________