国立天文台 メールニュース
No.99(2013年2月15日発行)すばる望遠鏡が解き明かす逆行惑星の成り立ち、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.99 (2013年2月15日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■すばる望遠鏡が解き明かす逆行惑星の成り立ち ■太陽観測衛星「ひので」が太陽極域磁場反転の進行を確認 ■地球に近づく小惑星 2012 DA14 ----------------------------------------------------------- ■すばる望遠鏡が解き明かす逆行惑星の成り立ち 国立天文台などの研究者による研究チームは、はくちょう座にある恒星 「HAT-P-7」の観測を行い、この恒星の周りを回る惑星「HAT-P-7b」(以下、 惑星b) が恒星の自転とは逆向きに公転している逆行惑星であることを2009年に 発見しました。このような逆行惑星を実際に観測できたのは、世界で初めての ことでした。 逆行惑星は、複数の巨大惑星が重力によってお互いをはじき飛ばしたり、恒 星と連星を成す伴星の存在により惑星軌道の傾きが震動することによって生じ ると考えられていますが、観測的な証拠は得られていませんでした。 研究チームは、その後もすばる望遠鏡を用いた観測を続け、このたび HAT-P-7 と連星系を成す伴星を初めて発見しました。さらに、惑星bの外側に 木星よりも重い巨大惑星「HAT-P-7c」(以下、惑星c) が存在することも発見し ました。つまり、この恒星 HAT-P-7 は、連星系を成す伴星を持ち、少なくと も、惑星bと惑星cの2つの惑星が公転していることになります。 この観測結果により、伴星や惑星cが惑星bに対して重力的な影響を及ぼし、 惑星形成時には恒星の自転と同じ順行方向に公転していた惑星bの公転軌道の 傾きを少しずつ変化させたと考えることができます。 この結果は、逆行惑星の起源について観測的な証拠を与えた初めての研究成 果です。今後も、多くの観測を通じて、他の逆行惑星や公転軌道が大きく傾い た惑星などの成り立ちが明らかになっていくことでしょう。 ▽すばる望遠鏡が解き明かす逆行惑星の成り立ち http://subarutelescope.org/Pressrelease/2013/01/24/j_index.html ▽すばる望遠鏡、主星の自転に逆行する太陽系外惑星を発見 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2009/11/04/j_index.html ■太陽観測衛星「ひので」が太陽極域磁場反転の進行を確認 国立天文台と理化学研究所の研究者を中心とした国際研究チームは、太陽観 測衛星「ひので」に搭載された可視光・磁場望遠鏡を用いて、太陽極域の磁場 観測を定期的に行ってきました。 太陽活動は、現在極小期を過ぎ上昇に転じています。太陽の南北両極の磁場 極性は、2013年5月頃と予想されている太陽活動極大期に、ほぼ同時に反転す ると予想されていました。ところが、2012年1月の「ひので」による観測から は、予想される時期より約1年早く、北極域の磁場が消滅しつつありほぼゼロ に近くなっていることが分かりました。一方で、南極域の磁場は、極性反転の 兆候がほとんど見られませんでした。 「ひので」による極域磁場の集中観測は、引き続き2012年9月にも行われま した。その結果から、前回同様、北極域で磁場の反転が急速に進んでいるにも 関わらず、南極域は依然として変化が少ないことが明らかになりました。 太陽の極域磁場の観測は、次の太陽活動サイクルの黒点数などを推定する上 で重要な情報を提供します。とくに、極端な太陽活動の低下が今後発生する場 合、その兆候は1太陽活動サイクル (約11年) 近く前に極域磁場に現れると予想 されています。 「ひので」は今後も集中的な極域の観測を継続する予定です。 ▽太陽観測衛星「ひので」 太陽極域磁場反転の進行を確認 http://hinode.nao.ac.jp/news/130129WebRelease/ ▽太陽観測衛星「ひので」、太陽極域磁場の反転を捉えた http://hinode.nao.ac.jp/news/120419PressRelease/ ■地球に近づく小惑星 2012 DA14 近地球型小惑星 (注) 2012 DA14 が、2月15日 (世界時) に地球に大接近し ます。 この小惑星 2012 DA14 は、2012年2月23日 (世界時) に発見された、直径約 45メートルと推測される小惑星で、地球の軌道によく似た軌道で太陽の周りを 回っています。この小惑星が、2013年2月15日19時24分 (世界時) 頃に地球に 最も近づくと予測されています。この小惑星が地球に最接近した際の地球から の距離は、地表距離で約27,700キロメートルと推測され、静止軌道までの距離 よりも地球に近づくことになります。 この小惑星の最接近時の明るさは7等級前後と推測されています。日本では、 16日未明 (日本時間) の4時過ぎに南西の空に見え始め、1分間に1度程度の速 さでゆっくりと北へ向かって移動するように見えます。肉眼では観測できませ んが、空の暗いところであれば、双眼鏡や視野の広い望遠鏡を使うと観察でき るかもしれません。 注:地球に近接する公転軌道を持つ小惑星 ▽国立天文台 よくある質問 質問5-9)2013年2月16日に接近する小惑星 2012 DA14とは? http://www.nao.ac.jp/faq/a0509.html ▽日本スペースガード協会 小惑星ニュース No.159 アポロ型特異小惑星 2012 DA14 の接近 http://www.spaceguard.or.jp/ja/mpnews/0159.html ▽NASA - Asteroid 2012 DA14 - Earth Flyby Reality Check (英語) http://www.nasa.gov/topics/solarsystem/features/asteroidflyby.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2013年2月15日 _____________________________________________________________________