国立天文台 メールニュース
No.97(2013年1月16日発行)M82の銀河風が4万光年先のガス雲と衝突、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.97 (2013年1月16日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 -------------------------------------------------- もくじ ■M82の銀河風が4万光年先のガス雲と衝突 ■藤田良雄東京大学名誉教授逝去 -------------------------------------------------- ■M82の銀河風が4万光年先のガス雲と衝突 京都大学の研究者をはじめとする研究チームは、すばる望遠鏡を用いた観測 により、おおぐま座方向にあるM82銀河から飛び出したガスが、M82から約4万 光年も遠く離れたガス雲に衝突して光っていることを発見しました。 銀河には、その中心領域で大質量星が次々と生まれる激しい星形成が起こっ ていると考えられているものがあり、「爆発的星形成銀河」または「スター バースト銀河」と呼ばれています。このような銀河は、銀河円盤に垂直な方向 に「銀河風」と呼ばれる、強い流れのガスを噴き出しています。今回観測され たM82は、地球から約1200万光年という近距離にある爆発的星形成銀河の一つ で、大規模な銀河風を噴き出していることが知られています。 このM82から約4万光年離れた場所には「帽子」と呼ばれる電離した光るガス 雲が存在しています。しかし、なぜ銀河からこれほど離れた場所にこのような ガス雲が存在するのかは明らかになっていませんでした。研究チームは、すば る望遠鏡による観測で、M82から噴き出す銀河風がこのガス雲と衝突して衝撃 波が起こり、その際に生じた紫外線がガス雲を電離して光っていることを突き 止めました。M82から噴き出した銀河風は、M82銀河の大きさに相当する4万光 年も離れた場所にまで直接影響を及ぼしていることになります。つまり、銀河 風は銀河空間にも大きな影響を与えていることが分かったのです。 今後も、すばる望遠鏡の集光力と高い分解能を生かし、銀河風が銀河空間に 及ぼす影響や、銀河進化についての研究がさらに進むことが期待されます。 ▽銀河の「帽子」に吹き付ける強力な風 ~M82の銀河風、4万光年先のガス雲と衝突中~ http://www.naoj.org/Pressrelease/2012/12/26/j_index.html ▽銀河から噴出す真紅の光 (M82、NGC 3034) http://subarutelescope.org/Pressrelease/2000/03/24/j_index.html ■藤田良雄東京大学名誉教授逝去 日本学士院会員で元院長である藤田良雄 (ふじたよしお) 東京大学名誉教授 が、2013年1月9日に心不全のため逝去されました。享年104歳でした。 藤田先生は、1908年に福井県福井市に生まれ、1931年に東京帝国大学 (現東 京大学) 理学部天文学科を卒業されました。同大学理学部助手、同大学講師等 を経た後、1939年に理学博士の学位を取得され、同大学助教授、教授を歴任さ れました。また、日本天文学会理事長、日本学士院院長など多くの要職も努め られ、1996年には文化功労者に選定されました。 専門は天体物理学で、とくに低温度星の分光学的観測研究の草分け的存在で した。恒星のスペクトル分類において低温度星が示す特徴の違いが、恒星の大 気中の炭素、窒素、酸素の存在比によるという理論を立て、観測によってそれ を立証するという大きな成果をあげられています。藤田先生は、この業績によ り、1955年に日本学士院恩賜 (おんし) 賞を授与されました。 1999年1月には、歌会始 (うたかいはじめ) の召人 (めしうど) として、 ファーストライトを迎えるすばる望遠鏡を歌に詠まれています。そのすばる望 遠鏡を使ったマウナケア山頂での観測に92歳で参加されたり、2009年の皆既日 食を船上で観測されるなど、近年まですこぶるお元気なご様子でした。 謹んでご冥福をお祈りいたします。 ▽訃報:藤田良雄 東京大学名誉教授 http://www.nao.ac.jp/news/notice/2013/20130115-fujita.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2013年1月16日 ウェブ:http://www.nao.ac.jp/mailnews/ _____________________________________________________________________