国立天文台 メールニュース
No.30 (2011年3月3日発行) 世界で最も鮮明な惑星誕生現場の画像、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.30 (2011年3月3日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■世界で最も鮮明な惑星誕生現場の画像~巨大惑星が描く円盤の模様を写す~ ■スター・ウィーク2011のキャッチコピーを募集 ■西村さん、いて座に新星を発見 ----------------------------------------------------------- ■世界で最も鮮明な惑星誕生現場の画像~巨大惑星が描く円盤の模様を写す~ 国立天文台などの研究者らから成る国際研究チーム (注) は、すばる望遠鏡 と最新の観測装置を用いて、原始惑星系円盤を持つ「ぎょしゃ座AB星」という 年齢約100万年の若い星の観測を行い、この原始惑星系円盤部分を世界で最も 詳細に捉えることができました。さらに、これまでで最も中心星に近い領域の 構造を解明することに成功しました。その結果、この星をとりまく円盤の内側の 「太陽系の大きさ」に対応する領域には、二重のリング構造やギャップ構造が あること、また、円盤中心が中心星の位置と一致せず、リングが円盤面から傾 いていることを、初めて明らかにしました。これは、この星の円盤の赤道面中 に既に惑星ができていることを示唆しています。 また、「リックカルシウム15星」という年齢が数100万年の若い星の観測か ら、中心星近くで円盤が途切れているギャップ構造を初めて直接に撮像しまし た。このギャップは、既に生まれた惑星の影響で物質が少なくなったためと考 えられます。 これら2つの観測結果は、惑星の誕生現場と考えられてきた原始惑星系円盤 の内側の「太陽系の大きさ」の領域では実際に既に惑星が誕生しており、その 存在の影響が円盤の形態に反映されていることを、若い星の周りで初めて直接 観測から明らかにしました。 この観測は、すばる望遠鏡の戦略枠プロジェクトSEEDS (シーズ:Strategic Exploration of Exoplanets and Disks with Subaru) の一環として行われま した。SEEDSは惑星とその誕生現場を直接観測により系統的に探査するプロジェ クトです。すばる望遠鏡の最初の戦略的集中観測であり、今後5年にわたって 継続する予定です。この研究はプロジェクトの初期成果の一部です。 注:自然科学研究機構 国立天文台(太陽系外惑星探査プロジェクト室、 ハワイ観測所)やドイツ・マックスプランク研究所など、国内外の25機関、 約100名からなる SEEDS プロジェクトチーム ▽世界で最も鮮明な惑星誕生現場の画像 ~巨大惑星が描く円盤の模様を写す~ (ハワイ観測所) http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/02/17/j_index.html ▽SEEDSプロジェクト http://seeds.mtk.nao.ac.jp/seeds/SEEDS_Project/TOP.html ■スター・ウィーク2011のキャッチコピーを募集 「バードウィーク (愛鳥週間) があるならスター・ウィークがあってもいい」。 1995年にそんなアイディアから始まった「スター・ウィーク~星空に親しむ週 間~」も、2011年で17回目を迎えます。毎年8月1日から7日の1週間を「スター・ ウィーク~星空に親しむ週間~」とし、子供から大人まで幅広く星空に親しん でもらおうという趣旨のキャンペーンです。この期間を中心に、観望会や工作 教室・講演会など、全国で様々なイベントが行われます。 スター・ウィーク実行委員会では、このスター・ウィークを広く知っていた だくため、キャッチコピーを募集します。締め切りは3月31日です。スター・ ウィーク期間中、たくさんの人が星空を身近に感じ、夏の夜に思わず星空を見 上げたくなるような言葉をぜひご応募ください。 キャッチコピー募集の詳しい内容については、以下をご覧ください。 ▽スター・ウィーク2011キャッチコピー募集 http://www.saji.city.tottori.lg.jp/saji103/starweek/2011/copy2011.htm ▽スター・ウィーク~星空に親しむ週間~ http://www.starweek.jp/ ■西村さん、いて座に新星を発見 静岡県掛川市の西村栄男 (にしむらひでお) さんが、1月25日 (世界時) の 観測から、いて座に11.2等の新星を発見しました。この発見は、国際天文学連 合電報中央局に報告され、この新星は「いて座V5587」(新星としての名前は 「いて座新星2011」) と命名されました。 ・発見日時 2011年1月25.86日 = 1月25日20時38分 (世界時) ・発見位置 赤経 17時 47分 46.33秒 赤緯 -23度 35分 13.1秒 (2000年分点) 西村さんによる新星の発見は、昨年4月にさそり座に出現した新星以来です。 通算では、14個目の新星発見 (独立発見を含む) となりました。 ▽参照 CBET No. 2644 : NOVA SAGITTARII 2011 = PNV J17474639-2335112 (2011 Jan 29) IAUC No. 9196 : V5587 SAGITTARII = NOVA SAGITTARII 2011 (2011 Feb 5) _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2011年3月3日 _____________________________________________________________________