国立天文台 メールニュース
No.21 (2010年11月26日発行) 巨大ブラックホール誕生の解明に手がかり、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.21 (2010年11月26日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■巨大ブラックホール誕生の解明に手がかり: 暗黒モンスター銀河に原始クエーサー最有力候補天体を発見 ■世界最高性能基準光源を開発 ~安定・高精度・高速の三拍子そろった光信号の発生に成功~ ----------------------------------------------------------- ■巨大ブラックホール誕生の解明に手がかり: 暗黒モンスター銀河に原始クエーサー最有力候補天体を発見 国立天文台などの日米英メキシコの研究者から成る国際研究チームは、115 億光年の遠方宇宙において、原始クエーサーと認められる特異天体を発見しま した。銀河の過密領域では、クエーサーの成長が促進されると考えられていま すが、こういった領域で実際に原始クエーサー候補天体が発見されたのは、世 界初です。 クエーサーは、爆発的星形成銀河 (モンスター銀河) の中心部でブラック ホールが大量のガスを吸い込み急成長してできるという仮説が有力です。しか し、原始クエーサーは濃い暗黒星雲に包まれているため、可視光線の観測で発 見することは極めて困難です。 研究チームは、日本のサブミリ波望遠鏡アステやすばる望遠鏡、米国サブミ リ波干渉計などを用いて研究を行い、その結果、サブミリ波とX線による観測 から、全体が暗黒星雲に覆われたモンスター銀河の内部に原始クエーサーの存 在を確認しました。そのX線の全放射エネルギーは、太陽の2兆倍にも達します。 これほど大きなエネルギーの発生機構を説明できるのは、巨大ブラックホール の急激な成長だけです。 研究チームは、これまで謎が多かった巨大ブラックホールの成長過程を観測 的・理論的に理解する上で、今回発見した天体が絶好の研究対象になると期待 しています。 ▽巨大ブラックホール誕生の解明に手がかり http://www.nro.nao.ac.jp/~tamura/pressrelease/protoquasar/index.html ■世界最高性能基準光源を開発 ~安定・高精度・高速の三拍子そろった光信号の発生に成功~ 情報通信研究機構と国立天文台は、世界最高の安定度と精度を持ち、しかも 高速な基準光源の開発に成功しました。 本基準光源は、20ギガヘルツから120ギガヘルツまでの極めて広い周波数範囲 の高速信号を、高い精度を保ちながら安定して発生させることが可能です。こ の性能は、建設が進むアルマ望遠鏡の厳しい条件を十分満たしており、その心 臓部分として機能する基準信号源として利用される予定です。また、大容量通 信を支える高速光デバイスの精密測定への応用も進めています。 アルマ望遠鏡は、66台のパラボラアンテナを配置し、アンテナからの信号を 合成することで高い空間分解能を実現します。今回開発した基準光源は信号の 位相を精密に合わせる役割を担います。 ▽世界最高性能基準光源を開発 ~安定・高精度・高速の三拍子そろった光信号の発生に成功~ (情報通信研究機構) http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h22/101115/101115.html ▽アルマ望遠鏡 (国立天文台) http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/ _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2010年11月26日 _____________________________________________________________________