国立天文台 メールニュース
No.19 (2010年11月9日発行) 池谷さんと村上さんが新彗星を発見、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.19 (2010年11月9日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■池谷さんと村上さんが新彗星を発見 ■「スターアイランド2010」VERA小笠原観測局の施設公開 [小笠原] ■野辺山ミリ波干渉計がとらえた段階的星形成の現場 ----------------------------------------------------------- ■池谷さんと村上さんが新彗星を発見 静岡県森町の池谷薫 (いけやかおる) さんと、新潟県十日町市の村上茂樹 (むらかみしげき) さんは、それぞれ11月2日と11月3日 (世界時、以下同じ) の観測から、おとめ座方向にある新彗星を発見しました。 この発見は、国際天文学連合電報中央局に報告され、「C/2010 V1」という 認識符号が与えられました。また通称名は、「池谷・村上 (Ikeya-Murakami) 彗星」となりました。 この天体の発見日時、発見等級は次のとおり。 ・発見日時と等級 2010年11月2.831日 = 11月2日19時57分 8.5等 (池谷さん) 2010年11月3.801日 = 11月3日19時13分 9等 (村上さん) この彗星は、明け方に東の低い空で観察することができます。 池谷さんは、1965年に見られた大彗星、池谷・関彗星 (C/1965 S1 (Ikeya-Seki)) の発見でも有名です。今回の発見は2002年の池谷・張彗星 (C/2002 C1 (Ikeya-Zhang)) 以来、通算では7個目の彗星発見となりました。 また村上さんは、2002年のスナイダー・村上彗星 (C/2002 E2 (Snyder- Murakami)) 以来で、通算2個目の彗星発見となりました。今回の発見は、お二 人とも眼視観測 (注) による発見です。大規模なプロジェクトによる観測が行 われるようになり、またCCD観測技術が進んだ現在では、大変貴重な発見と言 えるでしょう。 注:池谷さんは口径25センチメートル、村上さんは口径46センチメートルの 望遠鏡を用いて、目で見ながら行う捜索観測から発見 ▽参照 IAUC No. 9175 : COMET 2010 V1 (2010 Nov 3) IAUC No. 9176 : COMET C/2010 V1 (IKEYA-MURAKAMI) (2010 Nov 4) ▽日本人が発見した新彗星一覧 http://www.nao.ac.jp/new-info/comet.html ■「スターアイランド2010」VERA小笠原観測局の施設公開 [小笠原] 恒例の小笠原村父島のイベント「スターアイランド」が、11月20日・21日の 2日間にわたって開催されます。国立天文台水沢VLBI観測所 VERA (ベラ) 小笠 原観測局の施設公開のほか、4次元デジタル宇宙シアターの上映、講演会、天体 観望会など、宇宙に触れるさまざまな企画を取りそろえて、皆様のお越しをお 待ちしています。 ・一般講演会 日時:2010年11月20日 (土) 19:00-20:00 会場:小笠原ビジターセンター多目的室 内容:「地球に一番近い星~月~」講師:田澤誠一 (国立天文台) 「電波望遠鏡でみる最新の銀河系像」講師:本間希樹 (国立天文台) ・VERA小笠原観測局「オレンジペペ」施設公開 日時:2010年11月21日 (日) 10:00-17:00 会場:国立天文台VERA小笠原観測局 ・天体観望会 日時:2010年11月21日 (日) 19:00-20:30 会場:大神山公園 (お祭り広場) ▽スターアイランド2010と小笠原の国立天文台施設公開 http://www.miz.nao.ac.jp/content/news/event/20101102-164 ■野辺山ミリ波干渉計がとらえた段階的星形成の現場 東京大学、国立天文台などの研究者から成る研究チームは、さんかく座方向 の渦巻銀河 M33 にある巨大な電離領域 NGC 604 で、星が数世代に渡って“段 階的に”生まれている (注) 現場をとらえました。 この電離領域は、650-1000光年もの広がりを持ち、その中心部では重い星か ら成る多数の星団が生まれています。このような巨大な電離領域で、どのよう にして星が生まれるかについての詳細な研究はあまりなく、理論的に簡単な予 想がされているだけでした。 研究チームは、国立天文台野辺山宇宙電波観測所のミリ波干渉計を用いてこ の NGC 604 の観測を行い、中心部の星団からの距離が遠くなるほど、星形成の 活発さが減少していることを発見しました。これは、中心部の星団から電離領 域が膨張するのに伴って、星が数世代に渡って段階的に生まれている証拠とな ります。銀河系外で、かつ一つの巨大な電離領域の中で、段階的に星が生まれ るプロセスをこれほど詳細に明らかにしたのは、今回が初めてです。 今後はアルマ望遠鏡を用いて、より高い解像度・高い感度の観測を行い、巨 大電離領域での星形成の描像をさらに明らかにしていきます。 注:生まれたばかりの重い星は強い紫外線を放出し、その星の周囲のガスを 電離します。この電離水素領域が広がるにしたがって周りの分子ガスが 掃き集められて密度が高くなり、そこでさらに新たな星が形成されると 考えられています。これを段階的星形成と呼んでいます。 ▽巨大な電離領域で星が“段階的に”生まれている現場をとらえた! http://alma.mtk.nao.ac.jp/~miura/index.html ▽国立天文台野辺山 http://www.nro.nao.ac.jp/ ▽アルマ望遠鏡 (国立天文台) http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/ _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2010年11月9日 _____________________________________________________________________