国立天文台 メールニュース

No.11 (2010年9月10日発行) 電波望遠鏡で捉えた、高密度ガスの衝突と星団誕生の現場、ほか

_____________________________________________________________________

    国立天文台 メールニュース No.11  (2010年9月10日発行)
_____________________________________________________________________

 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報
 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。
 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。

-----------------------------------------------------------
もくじ
■電波望遠鏡で捉えた、高密度ガスの衝突と星団誕生の現場
■板垣さん、ヘルクレス座方向にある銀河に超新星を発見
■夕方の西の空で、月と金星が接近
-----------------------------------------------------------


■電波望遠鏡で捉えた、高密度ガスの衝突と星団誕生の現場

 多くの恒星は、単独ではなく星団として生まれることが知られています。そ
の材料は水素分子を主とするガスですが、そのガスが高密度になると恒星が生
まれます。しかし、星団のように一気にたくさんの恒星が作られるためには、
何らかの要因が必要だと考えられています。
 例えば、近くで起こった超新星爆発によってガスが掃き集められた場合、高
速で運動するガスが銀河の腕と衝突し圧縮された場合です。星団形成には、こ
のような規模の大きな外的な要因が必要だと、これまでは考えられてきました。
 しかし、こういった外的要因がない場所でも、高密度のガスのかたまりが生
じ星団が作られています。この場合、星団はどのようにして作られているので
しょうか。
 国立天文台の研究グループは、野辺山の45メートル電波望遠鏡を使った観測
を行い、外的な要因がない場所で星団が形成される現場を直接捉えることに成
功しました。そこでは、高密度ガスのかたまり同士が衝突することによって星
団が生み出されていたのです。このような、外的要因がない場合でも、高密度
ガス同士の衝突により星団が形成される現場を発見したのは、本研究が初めて
です。この発見は、銀河系の形成を明らかにする手がかりにもなります。

 今後は、現在建設中のアルマ望遠鏡を用いてより高解像度の観測を行い、さ
らに詳細な星団形成の描像を明らかにしていきます。

 ▽野辺山45m電波望遠鏡が捉えた、ガス同士の衝突による星団の形成
  http://www.nro.nao.ac.jp/press_release/higuchi/index.html

 ▽国立天文台野辺山
  http://www.nro.nao.ac.jp/

 ▽アルマ望遠鏡
  http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/


■板垣さん、ヘルクレス座方向にある銀河に超新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、9月2日 (世界時、以
下同じ) の観測から、ヘルクレス座方向にある銀河 (NGC 6524) の中に18.1等
の超新星を発見しました。この発見は、国際天文学連合電報中央局に報告され
ました。
 世界的には、これよりも早い9月1日の発見報告がありますが、板垣さんの発
見も、この最初の発見を報じる CBET (注) No.2435 にて独立発見であると報じ
られました。なお、この超新星は「2010hh」と命名されています。

 ・発見日時 2010年9月2.588日 = 9月2日14時07分 (世界時)
 ・発見位置 赤経 17時 59分 18.37秒
       赤緯 +45度 52分 32.0秒 (2000年分点)

 板垣さんによる超新星の発見は、今年に入って7個目、通算では63個目 (独
立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多
記録をさらに更新中です。

 注:国際天文学連合電報中央局が発行する電子速報

 ▽参照
  CBET No. 2435 : SUPERNOVA 2010hh IN NGC 6524 (2010 Sep 2)

 ▽日本人が発見した超新星一覧
  http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html


■夕方の西の空で、月と金星が接近

 日の入り後の西の空低く、土星、火星、金星の三つの惑星がそろって見えて
います。それにおとめ座の1等星スピカも加わりにぎやかな眺めになっています
が、それらの高度もだいぶ低くなり、だんだん観察がしにくくなってきました。
 そんな中でもひときわ明るく輝いているのが金星ですが、9月11日には細い月
が接近して、いっそう美しい眺めとなります。

 ▽ほしぞら情報 惑星と月を見よう
  http://www.nao.ac.jp/hoshizora/topics.html

 ▽国立天文台 メールニュース No.6  (2010年8月18日発行)
  夕方の西の空、惑星に注目


_____________________________________________________________________

発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2010年9月10日

_____________________________________________________________________

    

このページをシェアする